抄録
高齢者においては,転倒は大腿骨頸部骨折,入院,寝たきりの原因として良く知られている。転倒予防を目的とした介入は,寝たきり予防,医療費削減の点からも大きな意味をもつと考えられる。
本研究では高齢者における転倒予防を目的として国内外で行われた介入プログラムについて文献検索を行い,介入の有効性について評価を行った。検索は Medline および医学中央雑誌等のデータベースを利用し,1990年から2000年に報告された文献から,転倒(falls, accident falls),介入研究(intervention, intervention study),費用効果(cost, cost-effectiveness)をキーワードとして検索を行った。諸外国の研究報告から地域居住者,施設入所者を対象に,運動を中心としたプログラム,患者の危険因子に応じた医療,行動等への介入プログラム,環境改善を中心としたプログラムなどさまざまな取り組みが行われていたことが明らかになった。個人の危険因子を検討した上で,内的因子および外的因子に対する介入を行うことは,転倒の発生予防に効果がみられると考えられた。転倒予防プログラムの介入は,転倒発生率の減少の他,費用効果の点からも有効性が示された。日本でも転倒予防を目的としたさまざまな事業・研究が各地で行われつつあるが,有効性を立証した研究報告はみつからなかった。今後,転倒予防に関する事業を広げるばかりでなく,転倒予防の科学的評価を行える研究を推進する体制整備が緊急の課題と考える。