日本公衆衛生雑誌
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49 巻 , 4 号
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総説
  • 金成 由美子, 安村 誠司
    2002 年 49 巻 4 号 p. 287-304
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
     高齢者においては,転倒は大腿骨頸部骨折,入院,寝たきりの原因として良く知られている。転倒予防を目的とした介入は,寝たきり予防,医療費削減の点からも大きな意味をもつと考えられる。
     本研究では高齢者における転倒予防を目的として国内外で行われた介入プログラムについて文献検索を行い,介入の有効性について評価を行った。検索は Medline および医学中央雑誌等のデータベースを利用し,1990年から2000年に報告された文献から,転倒(falls, accident falls),介入研究(intervention, intervention study),費用効果(cost, cost-effectiveness)をキーワードとして検索を行った。諸外国の研究報告から地域居住者,施設入所者を対象に,運動を中心としたプログラム,患者の危険因子に応じた医療,行動等への介入プログラム,環境改善を中心としたプログラムなどさまざまな取り組みが行われていたことが明らかになった。個人の危険因子を検討した上で,内的因子および外的因子に対する介入を行うことは,転倒の発生予防に効果がみられると考えられた。転倒予防プログラムの介入は,転倒発生率の減少の他,費用効果の点からも有効性が示された。日本でも転倒予防を目的としたさまざまな事業・研究が各地で行われつつあるが,有効性を立証した研究報告はみつからなかった。今後,転倒予防に関する事業を広げるばかりでなく,転倒予防の科学的評価を行える研究を推進する体制整備が緊急の課題と考える。
原著
  • 藤田 大輔, 金岡 緑
    2002 年 49 巻 4 号 p. 305-313
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
    目的 乳幼児をもつ母親の育児ストレスの原因として,核家族化の進行に伴うソーシャルサポートの低下が懸念されている。そこで今回,乳幼児をもつ母親のストレス反応を中心に,ソーシャルサポートの認知と,育児負担感の構成要素となる育児に対する否定的感情との関連性について検討した。
    方法 調査対象者は,大阪府 I 市在住の乳幼児をもつ核家族の母親909人で,4 か月・1 歳 6 か月・3 歳 6 か月乳幼児健康診査を利用し,健康診査対象児の保護者宛てに「育児に関する調査」と題した質問紙を事前郵送にて配布,健康診査時に回収した。調査期間は2000年 8 月から 9 月であった。調査内容は,個人的背景変数と心理調査項目のうち,ストレス反応としての精神的健康度,育児負担感の構成要素として育児に対する否定的感情の認知,支援ネットワーク尺度をとりあげ分析した。
    結果 乳幼児をもつ母親については,各群すべてにおいて精神的健康度の平均がストレス状態と判定された。育児に対する否定的感情の認知では,経産婦において有意に高い傾向であった。一方,子どもの年齢別の推移では,子どもの成長に伴い,支援ネットワークの認知が有意に低くなり,同時に育児に対する否定的感情が有意に高くなる傾向が観察された。各変数間の相関では,育児に対する否定的感情はストレス反応に対して正の関連性,ソーシャルサポートの認知はストレス反応と育児に対する否定的感情に対して負の関連性を示した。
    結論 乳幼児をもつ母親はストレスフルな状態にさらされており,そのストレスの認知には,育児に対する否定的感情の認知と支援ネットワークとしてのサポートの認知が関連することが明らかとなった。したがって,母親のサポート感充足のための支援を行うことは,育児によって生じるストレッサーをネガティブなものと評価するレベルを減弱させ,問題の回避あるいは対処行動を促し,母親自身の心身の健康を増進させることによって,育児の継続・充実が期待されるものと考えられる。
  • 渡辺 励, 大日 康史
    2002 年 49 巻 4 号 p. 314-323
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
    目的 レトロスペクティブなデータであるレセプトデータを用いて人工呼吸器の使用期間とその医療費に関する影響を分析する。
    方法 レセプトには 1 か月間の診療記録が記載されているが,その前後関係,また月をまたぐ診療行為の情報は含まれていない。そこで,人工呼吸器使用日数と入院期間,その月での入院日数との関係から,標本を complete, right censoring, left censoring, both censoring に分類し,Gompertz モデルを当てはめ,期待人工呼吸器使用日数を求めた。同時に日本全体での人数の推定,人工呼吸器使用に伴う医療費を推定した。その上でそれらの積として,人工呼吸器使用の医療費への影響を導出した。
    成果 推定の結果,期待人工呼吸器使用日数は10~104日,その 1 日当たり期待費用は 3~4 万円,1 か月の発生件数は5,510人と推測されるので,その国民医療費への影響は180~2,500億円に相当する。
  • 井手 玲子, 溝上 哲也, 山本 良子, 吉村 健清
    2002 年 49 巻 4 号 p. 324-331
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
    目的 年齢と歯科保健行動の影響を考慮して,成人における甘味食品(甘味飲料,あめ・ガム)の摂取と口腔内状況の関連の有無を検討した。
    方法 対象は,職場での歯科健診受診者である。7,713人中5,232人(67.8%)が職域での歯科健診を受診した。このうち,5,034人について解析を行った。職域での歯科健診は,自記式質問紙と歯科医師による口腔内診査からなる。口腔内状況の指標は,CPITN・喪失歯・処置歯・う蝕歯・歯肉出血の自覚症状とした。甘味食品の摂取頻度に関する各口腔内状況のオッズ比を算出するためにロジスティック回帰分析を行った。
    結果 男性で,甘味飲料の摂取習慣のある者は,喪失歯,処置歯および歯肉出血の高いリスクを示した。「ほとんど飲まない」者と比較して,「毎日飲む」者のオッズ比は,喪失歯で1.4(95%CI:1.2-1.7),処置歯で1.7(95%CI:1.4-2.0),歯肉出血で1.5(95%CI:1.2-1.8)であった。甘味飲料の摂取とこれらの口腔内状況とでは,量—反応関係も認められた。あめ・ガムの摂取に関しては,男女とも,統計学的に有意な有所見のオッズ比を示したものはなかった。
    結論 今回の結果より,甘味飲料の摂取と口腔内状況との間に,特に男性で,その他の歯科保健行動とは独立した関連が示された。
  • 天野 信子, 尾方 希, 森田 徳子, 佐伯 圭吾, 野谷 昌子, 小向井 英記, 東 裕子, 松田 亮三, 車谷 典男
    2002 年 49 巻 4 号 p. 332-343
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
    目的 地域住民を対象に個別健康教育が多く行われつつあるが,その介入効果に関する研究は意外と少ない。本研究は,脂質関連栄養素の適正摂取を目標とした個別栄養教育が栄養素摂取量に与える介入効果を検討することを目的としたものである。
    方法 奈良県 A 町の40歳以上の住民を対象に実施された基本健康診査の受診者の中から40歳以上65歳未満の女性のうち,血清総コレステロールが220 mg/dl 以上300 mg/dl 未満で,本研究に対するインフォームド・コンセントを提出し,ベースライン健診を受けた79人を対象とした。対象者を前期介入群42人と後期介入群37人に分け,前期介入群には前半の24週間は介入を加え,後半の24週間は自己管理期間として介入せず,後期介入群は前半24週を待機期間として介入せず,後半24週間に介入を加えた。介入内容は,ほぼ 8 週間おき計 3 回の栄養士による個別食事指導と,一定期間ごとに求めた日記帳形式の「三日間の食事記録」,「ヘルシーライフ手帳」の自己記録等である。各種栄養素摂取量の推定は上島・岡山が開発した食物摂取頻度調査票を用い,摂取エネルギー量で調整した栄養素摂取量の介入期間前後の変化を効果判定の指標とした。
    成績 前期介入群42人のうち 3 人が介入期間中に,さらに 2 人が自己管理期間中に脱落し,後期介入群37人については 6 人が待機期間中に,さらに 3 人が介入期間中に脱落した。前期に介入を受けた39人と後期に介入を受けた28人を加えた介入期間群67人の摂取エネルギー量調整摂取量は,介入を受けなかった待機期間群31人の結果と異なり,脂質に加えコレステロール・飽和脂肪酸が有意に低下するとともに,PS 比が有意に上昇していた。また,前期に介入を受け後期は自己管理となった37人の主たる脂質関連栄養素摂取量は,自己管理期間中には変化なく,48週全体を通した時,ベースライン時よりも有意な低下が示された。また,脂質関連栄養素の望ましいと思われる摂取パターン,すなわち脂肪エネルギー比率25%以下かつコレステロール摂取量300 mg 以下かつ PS 比 1 以上の者の割合は,介入期間群が待機期間群に比べ24週間で有意に増加していることも示された。
    結論 以上の結果は,個別栄養教育が脂質関連栄養素摂取量を有意に低下させること,その効果は介入終了後24週間は持続することを示唆するものである。
  • 渡邊 次夫, 浅井 泰博, 小山 慎郎, 河邊 太加志
    2002 年 49 巻 4 号 p. 344-351
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
    目的 乳幼児期の鉄欠乏性貧血は精神運動発達の遅れの原因となるが,早期発見し治療することで精神運動発達が改善することが示されている。しかし日本における乳幼児期の鉄欠乏性貧血の有病率は明らかでなく,スクリーニングを検討する価値があるほど多いかどうか不明である。本研究の目的は,地域の乳幼児における鉄欠乏性貧血の有病率を調べることである。
    方法 [デザイン]横断研究。[設定]愛知県新城市,南・北設楽郡の一部(稲武町,東栄町,設楽町,津具村,豊根村,作手村),岩手県東磐井郡藤沢町で実施した初回の乳幼児期の鉄欠乏性貧血のスクリーニング。[対象者]各市町村のスクリーニングで,参加を呼びかけた 6~18か月児。[測定項目]皮膚穿刺により毛細血管血を採取し,ヘマトクリット値を測定した。ヘマトクリット値が低値(スクリーニングの初期[岩手県東磐井郡藤沢町,および南・北設楽郡の一部の東栄町と稲武町]においてはヘマトクリット値36%以下,その後はヘマトクリット値34%以下)の場合は要精査として静脈採血を施行し,ヘモグロビン値を測定した。ヘモグロビン値が11.0 g/dl 未満の場合を貧血とし,保護者の希望する医療機関に紹介し,鉄剤処方を依頼した。1 か月の鉄剤投与でヘモグロビン値が1.0 g/dl 以上上昇した場合を鉄欠乏性貧血とした(治療試験)。
    結果 161人がスクリーニングに参加した(参加率57%,161/283)。毛細血管血のヘマトクリット値の平均値±標準偏差は35.9±2.2%であった。貧血の有病率は 8%(13/161,95%信頼区間,4~13%),治療試験による鉄欠乏性貧血の有病率は 4%(7/161,95%信頼区間,2~9%)であった。各市町村間で,ヘマトクリット値の平均値,貧血と鉄欠乏性貧血の有病率に有意差はなかった。また,ヘマトクリット値の要精査基準値の変更の前後でヘマトクリット値の平均値と貧血の有病率,鉄欠乏性貧血の有病率に有意差はなかった。
    結論 本研究の対象市町村では乳幼児の貧血,鉄欠乏性貧血は多く,スクリーニングの導入を検討する価値がある。乳幼児において鉄欠乏性貧血が多いことが,日本で一般的にもみられるかを調べるためには,より大規模な代表性のある乳幼児を対象とした研究が必要である。
資料
  • 小嶋 美穂子, 辻 元宏, 丹後 俊郎
    2002 年 49 巻 4 号 p. 352-360
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
    目的 死亡指標として標準化死亡比(SMR)等がよく利用されているが,人口が大きく異なる地域の比較を行う場合に,適切な指標とはならないことがある。そこで,本研究では,人口の調整を行った SMR の経験的ベイズ推定量(EBSMR)を算出し,滋賀県50市町村の死亡状況を知るとともに,死亡と栄養の関連について検討する。
    方法 1987年~1996年の10年間における滋賀県内50の市町村別死亡数を用いて,全国死亡率を標準とした EBSMR を算出し,疾病の地域集積性の検討に Tango の集積性の検定を適用した。また,EBSMR を目的変数,栄養素摂取量等を説明変数として重回帰分析を行った。
    結果 全死因で男女共,近江八幡市に集積性がみられた。重回帰分析で,正の因子として,貝類,いか・たこ,肉類,油脂類,漬物,塩魚など,負の因子として,海草類,牛乳乳製品,茸類,豆類,ビタミン B1 などが抽出された。大津市と湖東地域は,食生活が異なり,集積する死因も対称的であった。
    結論 ベイズ推定による SMR を用いることで,人口が調整され,地域の比較が可能になった。さらに,どの地域にどの死亡が集積しているか検討することにより,滋賀県の死亡状況が明らかとなった。また,栄養素摂取量等との解析より,関連が明らかとなり,今後の保健医療対策を考える上での基礎的資料となった。
  • 加藤 則子, 浅香 昭雄
    2002 年 49 巻 4 号 p. 361-370
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー
    目的 生殖医療の影響等もあってその出生割合が増加し注目されている多胎児については,適切な出生体重評価の必要性が高まっている。今回人口動態出生票による多胎児の妊娠期間別出生体重基準の作成を試みた。
    方法 人口動態調査出生票・死産票の昭和63年から平成 3 年までの磁気テープ(統収第201号により承認)を用い,生まれたところ,生まれた場所,父母の年齢,妊娠週数により,第 1 子,第 2 子とも生産の同一妊娠による双胎の組,生産—生産ペア32,232組,生産—死産ペア679組,死産—生産ペア278組を同定した。3 胎は744組のうち生産1,894例を,4 胎は206例を解析に用いた。磁気テープの出生体重の値は100 g 未満切り捨てであった。
    結果 双胎では,出生体重は男子が女子より,経産が初産より,第 1 子が第 2 子より,異性ペアが同性ペアよりそれぞれ大きかった。男女別初産経産別妊娠週数別出生体重と厚生省研究班の単胎のそれを比較すると,34週までは男女とも0.1 kg 程度小さく,その後差は大きくなり,41週では0.42 kg~0.64 kg に差が開いていた。
    考察 出生票による妊娠期間は信憑性に限界があり,100 g 刻みであるため有効数字にも問題があるが,例数としては極めて大きいものである。双胎の出生体重基準は,単胎のそれと異なることが明らかになった。
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