日本公衆衛生雑誌
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高松市郊外における大気中浮遊粒子状物質の粒径別濃度に関する検討
須那 滋戴 紅藤田 陽子浅川 冨美雪北窓 隆子平尾 智広福永 一郎實成 文彦
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2002 年 49 巻 7 号 p. 706-712

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抄録

目的 近年,浮遊粒子状物質(SPM)のうち,粒径2.5 μm 以下に分布する微粒子画分(PM2.5)の濃度と循環器疾患死亡率あるいは喘息・気管支炎罹患率との間の関連性を指摘する疫学研究が報告され,わが国においても PM2.5の健康影響に注目が集まってきた。しかし微粒子汚染の実態はあまり明らかにされていない。著者らは高松市郊外の丘陵部に位置する香川医科大学周辺の屋外大気の微粒子汚染状況を知ることを目的として,SPM の粒径別測定を試みた。
方法 1999年 2 月から2000年 1 月の間に,アンダーセンサンプラーによる質量濃度法とパーティクルカウンターによる相対濃度法を用い,SPM の粒径別濃度測定を行った。
結果 測定期間を通じてトータルの SPM 濃度(PM11)は20~30 μg/m3 であり,PM11に占める2.1 μm 以下の微粒子画分(PM2.1)の比率は25~60%であった。PM11, PM2.1いずれも,田園地帯からの風向きが主である 8 月が最も低値で,一方,市街地からの風向きが主である 1 月,2 月の冬季と黄砂飛来時の 4 月に高かった。パーティクルカウンターによる測定結果では,4 月の SPM 濃度は黄砂を含むもや状のエアロゾル飛来時に高く,前線通過時の降雨の後には各粒径の粒子数は急激に減少し,その程度は微粒子ほど大きい傾向にあった。8 月の測定期間中は田園地帯の大気が測定地点に流れ込む機会が多かったが,1 μm 以下の微粒子濃度は 4 月に比べ明らかに低かった。
結論 高松市郊外に位置する香川医科大学周辺大気の微粒子濃度は天候や後背地からの気流に強く影響されることが示唆された。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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