日本公衆衛生雑誌
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地域高齢者における介護予防をめざした機能訓練事業の評価の試み
河野 あゆみ金川 克子伴 真由美北浜 陽子松原 悦子
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2002 年 49 巻 9 号 p. 983-991

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抄録

目的 I 県 W 市では,介護保険制度が始まったことを機会に機能訓練事業の内容と対象を見直して,介護予防をめざした機能訓練事業を2000年 4 月より開始した。本研究の目的は,この機能訓練事業について,身体・心理社会的側面から評価することである。
方法 本研究は前向きのコホート調査である。介護保険制度で「自立」と認定された自立度 J1 ランク以下の高齢者のうち,機能訓練事業への参加を希望した参加群71人と希望しなかった非参加群40人について,介入前,介入 6 か月後,介入 1 年後に面接聞き取り調査を行った。調査内容は,ADL(FIM),上肢機能,歩行速度,身体症状,認知機能(MMSE), QOL,抑うつ(GDS),動作に対する自己効力感(MFES),健康管理に対する自己効力感(SEHP),ソーシャルネットワークである。機能訓練事業のプログラムはレクリエーションや健康教育を含んだ内容であり,高齢者が人々との交流を深めることをねらうものである。
結果 1. 介入前の調査では,参加群に女性が有意に多く(P=.033),転倒経験が有意に少なく(P=.017), A デイサービスの利用割合が有意に低く(P=.014), B デイサービスの利用割合が有意に高かった(P=.001)。また,参加群の方が MMSE(P=.032), MFES(P=.001), SEHP(P=.017)やソーシャルネットワーク(P=.022)の得点が有意に高かった。
 2. 参加群と非参加群において,1 年間のうちに,MMSE 得点は有意な変化がみられた(P=.002)。参加群の MMSE 得点の方が非参加群に比べ,6 か月後(P=.002), 1 年後(P=.005)ともに有意に高かった。
 3. 参加群と非参加群において,1 年間のうちに,GDS 得点においても有意な変化がみられた(P=.033). 1 年後には,参加群が非参加群に比べ,GDS 得点が低い傾向がみられた(P=.070)。
結論 以上より,機能訓練事業は認知機能や抑うつの悪化予防に効果がある可能性が考えられた。したがって,地域高齢者が機能訓練事業に参加することによって,閉じこもり予防や介護予防を期待できると思われた。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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