日本公衆衛生雑誌
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原著
都市住民の健康診査結果からみた高血圧と家族歴の関連
菊川 縫子
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2004 年 51 巻 10 号 p. 833-844

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抄録

目的 高血圧が家族歴に関連していることは知られている。本研究は,都市住民の基本健康診査結果について,高血圧,その家族歴を有すること,および家族歴,肥満,飲酒との関連を明らかにすることを目的として分析を行った。
対象と方法 大阪市の隣接市の昭和59年度から平成10年度の基本健康診査受診者31,273人(男9,513人,女21,760人)を対象とし,複数回の受診者は,初回の受診時点の年齢および血圧値,BMI,飲酒状況を分析に用いた。昭和59~63年度を前期,平成元~5 年度を中期,平成 6~10年度を後期の 3 期間に区分して分析した。血圧判定区分は,高血圧診療指針(JNC7)に従って正常血圧,軽度高血圧,中等度高血圧,高度高血圧に分け,正常血圧はさらに 3 区分(至適血圧,正常血圧,正常高値血圧)に分類した。高血圧は,最大血圧140 mmHg 以上,または最小血圧90 mmHg 以上,それ以外は正常血圧とした。家族歴は,両親または兄弟(姉妹)のなかで高血圧の者を高血圧「あり」とし,肥満は BMI が25.0以上の者,飲酒「あり」は,「飲む」または「時々飲む」者とした。
結果 最大血圧,最小血圧の平均値は,家族歴「あり」の者が「なし」の者より,男女の各期間,年齢階級のすべての区分で,ほぼ高値であった。
 5 年間連続して受診した者について,一部の年齢区分の者を除き,「正常血圧」の判定回数が多い者ほど家族歴「あり」の者の割合低く,有意であり,傾向がみられた。高血圧「あり」のオッズ比は,家族歴「あり」は2.31~3.08,肥満「あり」は2.01~3.77,飲酒「あり」は1.18~2.13であり,いずれも統計学的に有意であった。人口寄与危険割合は,家族歴は,男6.6%~16.0%,女6.6%~18.4%,肥満は,男6.0%~18.1%,女9.0%~25.2%,飲酒は,男3.5%~29.4%,女0.3%~4.0%であった。正常血圧区分別にみた家族歴有無別の高血圧発症オッズ比は,5 年目の受診者より10年目,15年目と長期の受診者では,家族歴を有する者の高血圧発症オッズ比が高く,有意であった。
結論 家族歴「あり」の者は,高血圧,正常血圧の者でも血圧区分が高くなるほど発症オッズ比が高値であった。家族歴が高血圧発症の重要なリスクであることが示唆され,家族歴を有する者に対しては,肥満,飲酒の高血圧リスクの低減に特に働きかけていく必要がある。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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