日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
原著
看護師に対する禁煙指導強化のための取り組みとその効果
蓮尾 聖子田中 英夫脇坂 幸子湯浅 美保子友成 久美子大島 明
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 51 巻 7 号 p. 496-506

詳細
抄録

目的 病棟単位で行った看護師に対する禁煙指導強化のための取り組みを紹介し,その効果を,禁煙指導を行うことに対する自信の変化,および日常診療における禁煙指導行動の変化を指標として評価する。
方法 当施設の全13病棟のうち,2 つの病棟(強化病棟)に勤務する看護師約40人を対象に,禁煙指導に関するオンザジョブトレーニングを柱とした,動機,知識,体験,技術を強化するための直接的・間接的な支援を約 4 年間実施した。その前後(1997年および2002年)で当施設の看護師を対象に行った無記名自記式の調査票から禁煙指導を行うことに対する自信と禁煙指導行動に関する項目を集計し,その変化を求めた。この変化を強化病棟以外の11の病棟(対照病棟)に勤務する看護師約200人の成績と比較した。
成績 ①取り組み前では強化病棟に勤務する看護師と対照病棟に勤務する看護師の間に,年齢分布,喫煙率ともに差を認めず,取り組み後での禁煙のメリットに関する疫学的知識のレベルにも両病棟間で差を認めなかった。
 ②強化病棟に勤務する看護師の禁煙指導を行うことに対する自信は,取り組みの前後で有意に上昇した(P=0.02)。一方,対照病棟に勤務する看護師ではこの間に有意な上昇を認めなかった(P=0.14)。
 ③日常診療の中で患者の禁煙準備性に応じた具体的な禁煙の方法を示す行為を「必ず・たいてい行う」と答えた者の割合は,取り組み前には両病棟間で有意差を認めなかったが(調整オッズ比1.42, 95%信頼区間(CI):0.68-2.94),取り組み後には強化病棟では対照病棟に比べて有意に高くなった(同2.93, 95%Ci:1.27-6.74)。指導をした後にその効果を確認するために喫煙状況を尋ねる行為を「必ず・たいてい行う」と答えた者の割合も,同様の結果であった(取り組み前の調整オッズ比1.43, 95%CI:0.74-2.78→取り組み後3.71, 95%CI:1.70-8.10)。
結論 看護師の日常診療における禁煙指導の強化を目指したオンザジョブトレーニングを柱とする病棟単位での取り組みを概説した。この取り組みは,看護師の禁煙指導を行うことに対する自信を高め,日常診療における適切な禁煙指導行動の習慣化に寄与した可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2004 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top