研究目的 母子保健活動は,子育て環境の変化にともなって,子どもへの援助だけでなく養育者への支援が求められている。神戸市では平成14年 4 月から乳幼児健康診査の問診票を改訂し,育児環境に関する問診項目を追加した。このため,追加した育児環境に関する問診項目の回答結果を要フォローケースの判定に用いることの有用性について検討した。
研究方法 平成14年 4 月から12月の間に神戸市北保健センターにおいて実施した乳幼児健康診査を受診した3,308ケースを解析の対象とした。そして,育児環境に関する問診項目の回答結果と保健師による継続的なフォローの要否との関連について,χ2 検定および pearson の相関係数を用いて分析した。
結果 母の育児に対する主観的意識は,子どもの成長発達に左右され,健康診査の対象月齢が上がるとともに悪化する傾向がみられた。また,母の育児に対する主観的意識は,児の発達に起因するもの以外に,父の育児協力・参加といった家庭における具体的な育児サポートの有無が重要な要因として挙げられた。加えて,母の子育て仲間の有無や子育てにおけるネットワークの広狭が,母の育児に対する主観的意識を左右していることがわかった。
結語 本研究により,要フォローケースの決定において,育児環境に関する問診項目の回答結果を使用することの有効性が明らかとなった。しかし,新たなスクリーニング基準を作成するためには,育児環境に関する問診項目の回答結果について更なる分析を行い,スコアリングシステムの構築を目指す必要がある。