日本公衆衛生雑誌
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52 巻 , 10 号
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総説
  • 艾 斌, 星 旦二
    2005 年 52 巻 10 号 p. 841-852
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
     本稿は,日本と中国の高齢者における主観的健康感を健康指標として評価することを目的とし,1)指標の信頼性,2)指標の妥当性,3)指標の実用性から先行研究をレビューし,これまでの研究状況と今後の課題を提示する。
     レビューの結果,以下の 4 点が示された。1)主観的健康感の選択肢としては,「ふつう」や「あまり健康といえないが病気ではない」という中間点の選択肢を含まない「偶数均衡尺度」は,中間点を含む「奇数均衡尺度」に比べて信頼性が日中ともに高いことや,分布が偏る可能性がある。2)主観的健康感の基準妥当性は,疾病に対する併存妥当性や生命予後に対する予測妥当性が日中ともに高い。3)主観的健康感の構成妥当性は,主観的幸福感,生活満足度,抑うつなど心理的・精神的指標と収束妥当性が日中ともに認められている。さらに日本においては社会関係指標,中国においては家族関係指標との関連が高い。4)主観的健康感は簡便な健康評価指標としての実用性が高いことが日中ともに示唆された。今後の課題は,同様な方法,同様な時期,同様な内容の調査により,日本と中国における高齢者の主観的健康感の構造に関する比較研究を行うとともに,主観的健康感を向上させる介入比較研究が求められる。
原著
  • 寺岡 佐和, 小西 美智子, 鎌田 ケイ子
    2005 年 52 巻 10 号 p. 853-864
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 認知症の発症を誘発する要因としては,老化に伴う生理的変化による脳の機能低下の他に,社会的交流の減少,生き甲斐の喪失,閉じこもり的な生活による活性状態の低下等がもたらす脳の機能低下があげられる。認知症発症予防のアプローチとしては,とくに廃用性認知症の予防を目指した地域ケアプログラムが考えられる。そこで,その対象者に関する簡便なリスクスクリーニング方法について示唆を得るために,日常・社会生活の活性状態の低下と認知機能低下としての物忘れ自覚症状との関連性を明らかにする。
    方法 山梨県の 3 市町村に居住する65歳以上の地域高齢者6,486人を対象に,日常・社会生活の活性状態に関する20項目と,物忘れ自覚症状に関する21項目からなる調査表を作成し,郵送法による悉皆調査を行った。物忘れ自覚症状の項目についてクラスター分析を行い,得られたクラスターと日常・社会生活の活性状態との関連性について,Mann-Whitney 検定を行った。
    結果 回収された5,556人(回収率85.7%)のうち,記入もれがない3,067人(有効回答率55.2%)を分析の対象とした。21項目の物忘れ自覚症状について,該当なしは600人(19.6%)であった。物忘れ自覚症状が 1 つ以上ある2,467人の「物忘れ自覚症状」21項目についてクラスター分析を行った結果,2 項目からなる「よくある物忘れ症状」,4 項目からなる「健忘的症状」,2 項目からなる「感情的反応」,8 項目からなる「生活意欲の低下」,5 項目からなる「日常生活の困難性」の 5 つのクラスターが確認された。5 つのクラスターの組み合わせは31種類あり,最も多かったのは「よくある物忘れ症状」に該当する者658人(21.5%)であった。物忘れ自覚症状を有する群と,なし群との日常・社会生活の状況についてみると,クラスターの「生活意欲の低下」を有する群は,なし群に比べ,日常・社会生活の活性状態に関する多くの項目において有意に差がみられた。
    結論 物忘れ自覚症状の中でも「生活意欲の低下」に該当する項目と日常・社会生活の活性状態に関する項目との間に関連がみられた。このことから地域における認知症の二次予防を目指す地域ケアプログラム適用者の選定に際しては,地域高齢者の物忘れ自覚症状としての「生活意欲の低下」,知的活動や社会活動頻度等の日常・社会生活の活性状態に関する状況を把握することにより,認知症のリスクスクリーニングに活用できる可能性が考えられる。
  • 別所 遊子, 出口 洋二, 安井 裕子, 日下 幸則, 長澤 澄雄
    2005 年 52 巻 10 号 p. 865-873
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 一地方都市での高齢者の全数調査により設定した痴呆症高齢者コホート集団について,基礎調査後10年間の生存時間,死因と死亡場所を,非痴呆症高齢者と比較することにより,痴呆症高齢者の死亡リスク,死因と死亡場所の特徴,痴呆症高齢者の死亡に影響する要因について,病型,重症度,ADL(日常生活動作)の面から明らかにすることを目的として行った。
    方法 福井県の K 市(人口31,000人)で,平成 4 年 4 月に市内在住の65歳以上の在宅高齢者全員を対象とした生活基礎調査を行い,二次調査の結果,精神科医により201人が痴呆症と診断された。痴呆症高齢者と,それ以外の高齢者(以下,非痴呆症高齢者)の,平成 4 年 7 月 1 日から10年間の死亡年月日,死因,死亡場所を,人口動態調査死亡票等により把握した。死因分類は,ICD-10 の死因簡易分類コードにしたがった。痴呆症の有無の死亡に及ぼす影響を Cox 回帰分析で,また,痴呆症高齢者のうち,死亡または転出日が把握できた200人について,Kaplan-Meier 法,Cox 回帰分析により,生存時間中央値,死亡の関連要因を解析した。性別に,痴呆症の病型と重症度,寝たきりの有無,歩行,食事,更衣,入浴,排泄の障害の有無,喫煙および毎日飲酒習慣の有無の10項目を説明変数とした。
    結果 10年間に追跡できた痴呆症高齢者198人のうち170人(85.9%)が,非痴呆症高齢者5004人のうち1,696人(33.9%)が死亡していた。年令を層別化して解析を行った結果,痴呆症があると死亡リスクは2.99倍高くなり,女性は男性の0.56倍であった。痴呆症高齢者は非痴呆症高齢者と比較して脳血管疾患による死亡が多く,全死亡の37%を占めていた。とくに脳血管性と鑑別不能型においては47%を占めていた。死亡場所としては,老人ホーム・施設が多く,病院・医院は少なかった。
     性別に Cox 回帰分析を行った結果,男性では中等症・重症の痴呆,女性では鑑別不能型が,また男女とも寝たきり,歩行障害,排泄障害ありが,死亡リスクを有意に高める要因であった。
    結論 痴呆症があると,高齢者の死亡リスクは 3 倍高くなる。その要因として,痴呆症高齢者では脳血管疾患による死亡が,非痴呆症高齢者よりも高いことが一因と考えられた。また,痴呆症高齢者において,病型,重症度,ADL が死亡を高める要因であった。
  • 新開 省二, 藤田 幸司, 藤原 佳典, 熊谷 修, 天野 秀紀, 吉田 裕人, 竇 貴旺
    2005 年 52 巻 10 号 p. 874-885
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 地域高齢者における閉じこもり発生の予測因子をタイプ別に明らかにする。
    方法 新潟県与板町の65歳以上の全住民1,673人を対象として 2 年間の前向き疫学研究を行った。ふだんの外出頻度が「週 1 回程度以下」にあるものを閉じこもりと定義し,そのうち総合的移動能力尺度でレベル 1(独力で遠出可能)あるいは 2(独力で近隣外出可能)にあるものをタイプ 2,同レベル 3 以下(独力では近隣外出不可能)にあるものをタイプ 1 と二つに分類した。初回調査時にレベル 1, 2 かつ非閉じこもりにあった1,322人(応答者1,544人の85.6%)について 2 年後の状況を調べ,レベル 1,2 非閉じこもりを維持,タイプ 1 に移行,タイプ 2 に移行,レベル 3 以下非閉じこもりに移行の 4 群に分類した。分析においては,まず,追跡調査時もレベル 1, 2 非閉じこもりを維持していた群を基準として,タイプ 1 あるいはタイプ 2 に移行した群との間で,初回調査時の身体,心理,社会的特性の分布を比較した。次に,多重ロジスティックモデル(ステップワイズ法)を用いて,性,年齢を調整しても有意な関連性を示した変数全てをモデルに投入し,レベル 1, 2 非閉じこもりからタイプ 1 あるいはタイプ 2 に移行することの予測因子を抽出した。
    成績 初回調査時にレベル 1, 2 非閉じこもりであったものの 2 年後の状況は,レベル 1, 2 非閉じこもりが1,026人(77.6%),タイプ 1 が22人(1.7%),タイプ 2 が63人(4.8%),レベル 3 以下非閉じこもりが29人(2.2%)であった[追跡不可(死亡等含む)は182人(13.8%)]。タイプ 1 への移行を予測するモデルに採択された変数(予測因子)は,年齢(高い,5 歳上がるごとのオッズ比[95%信頼区間]は2.10[1.36-3.24]),就労状況(なし,4.42[1.21-16.2]),歩行障害(あり,4.24[1.37-13.1]),認知機能(低い,5.22[1.98-13.8])であり,タイプ 2 のそれは,年齢(高い,5 歳上がるごと1.65[1.32-2.06]),抑うつ傾向(あり,2.18[1.23-3.88]),認知機能(低い,2.72[1.47-5.05]),親しい友人(なし,2.30[1.08-4.87]),散歩・体操の習慣(なし,2.21[1.26-3.86])であった。
    結論 地域高齢者におけるタイプ 1 閉じこもりの発生には身体・心理的要因が,タイプ 2 閉じこもりのそれには心理・社会的要因が,それぞれ主に関与していることが示唆された。閉じこもりの一次予防に向けた戦略はタイプ別に組み立てる必要がある。
公衆衛生活動報告
  • 波田 弥生, 山﨑 初美, 杉本 尚美, 木村 美登理, 毛利 好孝
    2005 年 52 巻 10 号 p. 886-897
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    研究目的 母子保健活動は,子育て環境の変化にともなって,子どもへの援助だけでなく養育者への支援が求められている。神戸市では平成14年 4 月から乳幼児健康診査の問診票を改訂し,育児環境に関する問診項目を追加した。このため,追加した育児環境に関する問診項目の回答結果を要フォローケースの判定に用いることの有用性について検討した。
    研究方法 平成14年 4 月から12月の間に神戸市北保健センターにおいて実施した乳幼児健康診査を受診した3,308ケースを解析の対象とした。そして,育児環境に関する問診項目の回答結果と保健師による継続的なフォローの要否との関連について,χ2 検定および pearson の相関係数を用いて分析した。
    結果 母の育児に対する主観的意識は,子どもの成長発達に左右され,健康診査の対象月齢が上がるとともに悪化する傾向がみられた。また,母の育児に対する主観的意識は,児の発達に起因するもの以外に,父の育児協力・参加といった家庭における具体的な育児サポートの有無が重要な要因として挙げられた。加えて,母の子育て仲間の有無や子育てにおけるネットワークの広狭が,母の育児に対する主観的意識を左右していることがわかった。
    結語 本研究により,要フォローケースの決定において,育児環境に関する問診項目の回答結果を使用することの有効性が明らかとなった。しかし,新たなスクリーニング基準を作成するためには,育児環境に関する問診項目の回答結果について更なる分析を行い,スコアリングシステムの構築を目指す必要がある。
資料
  • 片岡 大輔, 曽根 智史, 谷畑 健生, 谷口 栄作, 牧野 由美子, 中川 昭生
    2005 年 52 巻 10 号 p. 898-905
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 「健康ますだ21」は2001年度を初年度として,2004年・2007年に中間評価,計画の見直しを行い,2010年を目標年次とする10か年計画である。「健康ますだ21推進協議会」の下部組織として,「栄養・食生活と歯科保健部会」「たばこと酒部会」「運動とストレス部会」の 3 つの部会がある。市域15地区では,3 つのうち 1 つの部会の活動テーマを 3 年ずつ重点的に展開している。本研究の目的は,中間評価の一環として,過去 3 年間の活動が益田市民の健康行動の向上に有用であったか否かを検証することである。
    方法 対象は,益田市15地区から無作為に抽出された20歳以上の男女4,000人である。「栄養・食生活」,「歯の健康」,「たばこ」,「アルコール」,「身体活動・運動」,「休養・こころの健康づくり」の 6 分野,合計29の指標について,市民の健康づくりに対する意識・行動等を調査した。まず市全体の集計結果を,行動目標値と照合した。つぎに2000年に行われた健康行動調査時のベースライン値と,2004年の指標値を市全体で比較した。さらに2000年と2004年の指標値を,延べ 6 つの性・年齢階層別に比較した。最後に過去 3 年間に重点的に展開した活動テーマにより,15地区を 3 つの地区群にまとめ,地区群別に比較した。
    結果 回収数は2,946件(回収率73.7%)であった。益田市の行動目標を達成した指標は,「男性の喫煙率」であった。2000年と2004年の指標値を比較したところ,市全体において11指標が有意に改善し,5 指標で悪化を認めた。5 つの性・年齢階層では,改善した指標数が悪化した指標数を上回った。各地区群の重点分野で合計 7 指標が改善し,これら 7 指標の全ては,市全体においても有意に改善を示した。各地区群の重点分野で悪化した指標はなかった。
    結論 15地区が部会の活動テーマを推進することにより,各地区で弱点分野を補強しながら,市全体の健康行動の向上に寄与している可能性が高いことが示唆された。今後これらの活動がさらに多くの市民に認知され,各年齢階層および各地区で生活習慣の改善に結びつくことが期待される。
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