日本公衆衛生雑誌
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原著
在宅障害児者の介護者の施設入所希望に関連する要因
谷掛 千里
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2005 年 52 巻 3 号 p. 215-225

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抄録

目的 生まれてから在宅生活を続けていた障害児者に対し,近年,施設生活を希望する介護者が多くなってきている。この背景を明らかにすることは,地域で生活している障害児者の今後の社会的支援施策を考える上で重要なことと考えられる。そこで,本研究は,在宅障害児者の介護者の施設入所希望に関連する要因を明らかにすることを目的として行った。
方法 在宅障害児者410人の保護者(肢体不自由児者の父母の会の会員)に対して,障害児者および介護者の年齢,障害程度,介護者の具合,日常介護が一人でできるか(以下,日常介護),障害児者が今後生活してほしいと介護者が考える生活場所(以下,介護者の生活希望場所)等について,調査票を用い,手渡し配布し,訪問回収を行った。介護者の施設入所希望と回答者の属性に対し多重ロジスティック回帰分析を行った。
成績 回答を得た297人に対し単変量分析で,介護者の施設入所希望と有意な関連があったものは,療育手帳の等級が重度である,英国人口統計情報局社会調査部による尺度(以下,OPCS)のうち会話(以下,会話)ができない,重症心身障害児分類が重症心身障害である,介護者の具合が悪い,日常介護ができないであった。多重ロジスティック回帰分析を行った結果,介護者の年齢階級が上がるにつれてオッズ比が有意に高く,20~30歳代を 1 としたオッズ比は,40歳代で18.3,50歳代で37.2であった。介護者の施設入所希望と介護者の年齢との間に強い関連が認められた。療育手帳は A 以外の者に対し A の者のオッズ比が5.0と有意に高かった。介護はできる者に対して,できない者のオッズ比が3.8と有意に高かった。日常生活で困っていることとして,介護者の年齢が50歳以上の者では「在宅介護が限界」,「介護者の高齢化」と回答した者の割合が高かった。不足している公共の福祉サービスとしては,緊急一時預かり,ショートステイ,デイサービス,入浴サービスをあげた者の割合が高かった。
結論 在宅障害児者の介護者の施設入所希望に関連する要因として,介護者の高齢化,日常の介護ができない,知的障害が重度であることが明らかとなった。特に,介護者の高齢化が大きな要因であった。

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