日本公衆衛生雑誌
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介護支援専門員がケースへの対応に関して抱く困難感とその関連要因 12種類のケース類型を用いて
吉江 悟齋藤 民高橋 都甲斐 一郎
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2006 年 53 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

目的 介護支援専門員がケース対応に関して抱く困難感やそれに対する研修等の支援の実態と,個人・事業所特性や支援と困難感の有無との関連を示し,支援に対するニーズの所在を明確にすることを目的とした。
方法 層化比例抽出による10都道府県計500事業所の介護支援専門員を対象とした郵送調査を実施し,268事業所から556人の回答を得た。
結果 「痴呆」,「独居」,「家族関係不良」,「苦情・要求過多」,「意向にズレ」,「経済的問題」,「サービス拒否」,「キーパーソン不在」,「医療依存」,「精神障害」,「虐待」,「事業者との関係不良」の12種類のケース類型に関して,最近 1 年間で困難を感じた者の割合は,最も低い項目でも40%以上であり,最近 1 年間でこれらのケースを担当した経験のある者に限った場合には,ほとんどの項目で80%を上回る高い割合となった。特性との関連を検討した結果,①在宅介護支援センター職員兼任者は介護支援専門員専任者と同等の介護支援専門員業務を行っている可能性があり,業務内容について見直しの必要性が推察された。②基礎資格が看護師である者は,「医療依存」,「精神障害」に関して困難を感じた割合が有意に低く,他の者への重点的支援と,支援資源として看護師介護支援専門員の活用可能性が示唆された。③全般的に経験年数の長い者の方が困難を感じた割合が高かった。現任研修においては,彼らを対象に本研究で用いたようなケース類型に関連するテーマの研修を提供することで,よりニーズに合致したものとなる可能性が考えられた。
結論 本研究は,ケースへの対応に関して介護支援専門員が抱く困難感の実態と,介護支援専門員の特性,社会的支援,研修との関連を全国サンプルで明らかにした初めての研究である。研究結果をもとに,特にニーズが高いと考えられる対象には,重点的に支援を提供することが重要だと考えられる。

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© 2006 日本公衆衛生学会
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