目的 愛知県脳卒中登録事業の資料を用い,脳卒中の病型別の合併症(脳卒中既往歴を含む)および予後に関する実態把握を実施し,寝たきりや痴呆の主な原因となる脳卒中の予防対策の充実のための基礎的検討を行った。
方法 1993年 1 月から2000年12月までに県内の医療機関から登録された27,304例のうち23,979例(脳血栓症,脳塞栓症,脳内出血,くも膜下出血の 4 病型)を解析対象とし,性別,年齢層別,および,病型別に,短期的予後{転帰時(脳卒中登録時)における生死,介助・痴呆の有無}に影響を及ぼす合併症等について比較検討した。
成績 1. 男性13,365例(55.7%),女性10,614例(44.3%)の平均年齢はそれぞれ65.5±12.2歳(mean±SD), 69.7±13.3歳で,女性の方が有意に高かった(
P<0.001)。
2. 病型別の発生頻度は,男女ともに脳血栓症が最も高く(男性:49.5%,女性:41.1%),ついで脳内出血(男性:30.4%,女性:29.8%)であった。また,くも膜下出血の割合は,女性での割合(17.3%)が男性(8.3%)のほぼ 2 倍と高かった。
3. 合併症等の割合は,高血圧が男女とも約50%と最も高く,ついで脳卒中既往歴(男性:20.1%,女性:16.2%)であった。
4. 転帰時における生存者の割合は男性(84.7%)が女性(81.0%)より有意に高かった(
P<0.001)。病型別では,くも膜下出血が他病型に比べて男女とも約60%と有意に低かった(
P<0.001)。生存者における要介助,痴呆の割合は,ともに女性(要介助:54.5%,痴呆:21.1%)が男性(要介助:44.2%,痴呆:15.1%)より有意に高かった(
P<0.001)。
5. ロジスティック回帰分析の結果,死亡に寄与する因子は高齢,脳卒中既往歴,心疾患,腎不全であり,要介助および痴呆に寄与する因子は女性,高齢,脳卒中既往歴,心疾患,腎不全であった。一方,脂質代謝異常は予後(死亡,要介助,痴呆)の保護因子となっていた。
結論 脳卒中の合併症等については高血圧の割合が脳塞栓症を除く 3 病型で最も高く,また,生命および機能予後(介助・痴呆)については,性・年齢の影響を取り除いても脳卒中既往歴が最大の不良因子であることが示された。脳卒中の発生予防の為には,最大の合併症である高血圧をはじめ,糖尿病,心疾患などの合併症の除去,低減化に努めるとともに,生命・機能予後の向上には,脳卒中の再発防止が最も重要であることが示された。
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