日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
要介護高齢者のための口腔ケアネットワークの構築 歯科に関する保健・医療・福祉の連携
藤中 高子戸床 しおり福本 久美子
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2006 年 53 巻 4 号 p. 277-284

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抄録
目的 山鹿保健所が管轄する山鹿・鹿本地域は,超高齢の地域(高齢化率25.7%)であり,今後口腔ケアを必要とする要介護高齢者が急増することが予想される。そこで,平成15年度から 5 年間の予定で,管内の要介護高齢者のための口腔ケアネットワーク構築を目指している。我々が考える口腔ケアネットワークとは,①関係者すべてが口腔ケアの重要性を認識し,②口腔ケアに関する相談窓口が存在し,③専門的な口腔ケアを必要とする人に適切なサービスを実施できる,という状況が地域で常時行われることである。今回は平成15・16年度の活動状況を報告する。
事業内容 平成15年度に「歯科に関する検討会」を設置した。要介護高齢者の総合的な歯科保健医療の推進を図るための基礎資料を得るために調査を実施した。平成16年度は,この調査をもとに口腔ケアネットワーク構築のために必要な施策に関して検討した。
結果 調査対象は,男性183人,女性315人,性別不明 2 人の計500人。65歳未満が23人,65歳以上が474人だった(無回答 3 人)。要介護度は,要支援から要介護 1 までが345人(69%),要介護 2 から 5 までが154人(31%)だった。義歯の使用率は82%で,口腔の手入れは自分で磨くが75%を占めた。過去 3 か月の口腔状態でなんらかの問題があったのが45%で,そのうち「入れ歯があわない」が一番多かった。過去 1 年間で歯科受診をした割合は178人(36%)だった。訪問歯科診療制度を利用したのは35人(7%)にすぎず,介護支援専門員から口腔ケアサービスの提供があったのは83人(17%)だったが,そのうち58人(70%)はサービスを断っていた。最も必要な情報として,相談窓口や治療に関する情報などがあがった。
結論 1. 要介護者の口腔状態をアセスメントし,口腔内のケアプランが確実に実施されるように関係者の連携を含めた体制整備が必要である。
 2. 口腔ケアに関する情報提供不足は明白で,早急に口腔ケアに関する情報提供のあり方について検討を行う必要がある。
 3. 歯科診療へのアクセス手段の利便性を高める必要がある。
 4. 要介護高齢者を介護する人たちへ効果的な口腔ケアの手技を啓発,普及させる必要がある。
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© 2006 日本公衆衛生学会
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