日本公衆衛生雑誌
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研修医へ効果的な地域保健・医療研修を提供するための質的研究
松岡 宏明中瀬 克己發坂 耕治金子 典代横山 美江
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2006 年 53 巻 9 号 p. 715-720

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抄録
目的 平成16年度から新医師臨床研修制度において「地域保健・医療」が必須項目に位置づけられ,「地域保健・医療」研修が臨床研修の 1 つとなった。本研究では,研修医が研修実施前に,「地域保健・医療」研修においてどのような知識や技術を身につけたいか,どのような形式の研修を望んでいるのかを質的調査により検討した。
方法 臨床研修指定病院において 1 年目の研修中である 3 人の研修医に個別インタビューを実施し,その後 7 人および 6 人からなるグループ合計 2 グループに対し,グループインタビューを行った。
結果 本研究の対象者においては,大学教育の後であっても保健所業務,ひいては保健サービスに関する具体的イメージを持ち得ていなかった。研修先選定の際には「地域保健・医療」のプログラム内容は考慮されておらず,「地域保健・医療」研修の目標についても意識されていなかった。研修医の地域保健研修への期待では,保健所の仕事や保健所で働く専門職について知りたい,とくに臨床実践に関わる公衆衛生分野を知りたいとの意見があった。臨床に関わりの深い領域として,具体的には,結核・感染症の届出や難病・介護保険にまつわる,公的保健サービスの実際的知識と技術が挙げられた。さらに研修方法としては,地域住民に対して健康教育プログラムを自主的に計画・実施するといった参加型の研修形態を希望する者もいた。研修期間については,1 週間以上 1 か月未満という意見が大勢を占めた。
結論 保健所における「地域保健・医療」研修に対して研修医は具体的な業務イメージを持っていなかった。研修内容に関する研修医の具体的な希望は,臨床業務に関連した保健事業の研修であった。こうした研修医に地域保健および公衆衛生学的な知識・技能の習得を図るためには,臨床実践から保健事業へと展開していく研修方略の開発が必要である。
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© 2006 日本公衆衛生学会
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