日本公衆衛生雑誌
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53 巻 , 9 号
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論壇
原著
  • 田中 千晶, 吉田 裕人, 天野 秀紀, 熊谷 修, 藤原 佳典, 土屋 由美子, 新開 省二
    2006 年 53 巻 9 号 p. 671-680
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,地域高齢者における日常の身体活動レベル(Physical Activity Level: PAL)と身体,心理および社会的要因との関係を検討した。
    方法 対象者は,平成15年群馬県草津町の「にっこり健康相談事業」(高齢者向け健康診断)を受けた,同町70歳以上の住民428人であった。うち,面接調査と体力調査のすべてのデータがそろった330人を,本研究の分析対象とした。PAL は,内藤ら(2003)によって開発された質問紙を用いて評価した。対象者は,老研式活動能力指標と認知機能を含む身体,心理および社会的機能に関して,面接を行った。体力測定では,握力,通常歩行速度,最大速度歩行および開眼片足立ち時間を測定した。
    結果 性と年齢を調整した共分散分析(ANCOVA)において,PAL は,高次生活機能,体力などの身体的要因,抑うつ度などの心理的要因,家の中での役割・仕事の有無などの社会的要因,そして喫煙習慣と有意な関連を認めた。一般線形モデルでは,喫煙習慣,通常歩行速度,抑うつ度,家の中での役割・仕事の有無,外出頻度および視力障害によって,PAL の変動の13.5%が説明された。
    結論 70歳以上の地域高齢者における PAL は,身体,心理および社会的要因と関連することが示唆された。
  • 安梅 勅江, 篠原 亮次, 杉澤 悠圭, 伊藤 澄雄
    2006 年 53 巻 9 号 p. 681-687
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,大都市近郊の農村に居住する65歳以上の者全数801人に対する1998年から2005年までの追跡調査により,社会とのかかわり状況と死亡率との関連を社会関連性指標を用いて明らかにしたものである。社会関連性指標は,地域社会の中での人間関係の有無,環境とのかかわりの頻度などにより測定される,人間と環境とのかかわりの量的側面を測定する指標である。
    方法 1998年に配票留置の質問紙に回答した者の死亡に関するデータを2005年まで集計した。有効回答は,回答者のうち事故死および死亡理由不明者,転出者,基準年の介護状態不明者を除いた669人とした。7 年間の死亡者は139人(12.7%)であった。調査内容は,年齢,性別,罹患,介護,ADL,社会関連性指標であった。
    結果 1) 社会関連性指標の項目のうち,「家族以外との会話」,「訪問の機会」,「活動参加」,「テレビの視聴」,「新聞の購読」,「本・雑誌の購読」,「役割の遂行」,「近所づきあい」,「趣味」,「ビデオ等の利用」,「健康への配慮」,「生活の工夫」,「積極性」,「社会貢献への意識」が乏しい場合,7 年後の死亡率が有意に高くなっていた。
     2) 多重ロジスティック回帰分析を用い,基準年の年齢,性別,罹患,介護,移動機能,感覚機能,身辺処理機能を調整変数として社会関連性指標の各項目の死亡に対するオッズ比を算出した。「活動参加」,「趣味」,「役割の遂行」,「積極性」,「ビデオ等の利用」の項目が有意となり,調整変数に関わらず,社会関連性が乏しいと死亡率が高いという関連が示された。
    結論 社会関連性は生命予後との関連がみられた。具体的な行動と活動状況を評価基準とする社会関連性指標を用いることにより,地域で生活する高齢者の日常生活における社会とのかかわり状況を把握し,介護予防マネジメント等に活用可能なことが示唆された。
  • 菅 万理, 吉田 裕人, 藤原 佳典, 渡辺 直紀, 土屋 由美子, 新開 省二
    2006 年 53 巻 9 号 p. 688-701
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 縦断的データを用い,介護予防健診受診・非受診の要因を明らかにする。
    方法 平成13年と15年,群馬県草津町で70歳以上の高齢者全員(それぞれ1,039人,1,151人)を対象に悉皆訪問面接調査を実施した。これにより収集された基本属性や身体的・心理的・社会的特性を説明変数とし,翌年(平成14年と16年)の介護予防健診の受診の有無を被説明変数とした多重ロジスティック回帰分析を用い,介護予防健診受診・非受診の関連要因を分析した。
    結果 第 1 回訪問面接調査では70歳以上の住民1,039人のうち,全項目実施・一部未実施を含めて916人(88.2%)から,また,第 2 回訪問面接調査でも,1,151人中,1,005人(87.3%)から結果を回収し,地域在宅高齢者としての悉皆性の高いサンプルが得られた。一方,第 1 回(平成14年)介護予防健診の受診率は55.2%,第 3 回(平成16年)のそれは40.0%であった。多重ロジスティック分析の結果,第 1 回介護予防健診の受診の関連要因は,全体では,高血圧の有無,IADL,歩行能力,社会的役割であり,近距離の移動が可能な高齢者に限ると,高血圧の有無,IADL,社会的役割であった。第 3 回介護予防健診では,IADL スコアや移動能力スコアが低い場合に,受診する確率が低くなるという傾向は第 1 回と同様であったが,健康度自己評価が非常に高い高齢者が受診を敬遠する傾向があるという,二極化が起きている可能性が示唆された。また第 3 回健診では,社会的役割は受診行動に統計的に有意な影響を持たなかった。
    結論 介護予防健診をハイリスク高齢者のスクリーニングに利用する場合,非受診者の中に高リスク者がいる可能性が高く,そのような高齢者を健診名簿などを用いて効果的にフォローアップするなどの対応が必要である。スクリーニングよりも,むしろ,健康教育的な側面に焦点を当てた「介護予防健診」も検討されるべきである。
公衆衛生活動報告
  • 藤原 佳典, 西 真理子, 渡辺 直紀, 李 相侖, 井上 かず子, 吉田 裕人, 佐久間 尚子, 呉田 陽一, 石井 賢二, 内田 勇人, ...
    2006 年 53 巻 9 号 p. 702-714
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 高齢者の高次生活機能である社会的役割と知的能動性を継続的に必要とする知的ボランティア活動—子供への絵本の読み聞かせ—による介入研究“REPRINTS”を開始した。その 1 年間にわたる取り組みから得られた知見と課題を整理し,高齢者による社会活動の有効性と活動継続に向けた方策を明らかにする。
    方法 “REPRINTS”プログラムの基本コンセプトは高齢者による「社会貢献」,「生涯学習」,「グループ活動」である。対象地域は都心部(東京都中央区),住宅地(川崎市多摩区),地方小都市(滋賀県長浜市)を選び,2004年 6 月一般公募による60歳以上ボランティア群67人と対照群74人にベースライン健診を行った。3 か月間(週 1 回 2 時間)のボランティア養成セミナーを修了後,6~10人単位のグループに分かれ地域の公立小学校,幼稚園,児童館への定期的な訪問・交流活動(主な内容は絵本の読み聞かせ)を開始し,2005年 3 月に第二回健康診査を行った。
    結果 ベースライン健診において,孫のいない者の割合(41.8% vs. 20.3%,P=0.006),就学年数(13.4±2.5 vs. 12.3±2.5年,P=0.008),過去のボランティア経験あり(79.1% vs. 52.7%, P=0.001),通常歩行速度(86.7±12.3 vs. 81.3±12.9 m/分,P=0.012)で,ボランティア群は対照群に比べそれぞれ有意に高かったが,他の諸変数では両群に有意差はなかった。第二回健診時点での活動継続者56人は社会的ネットワーク得点で,孫,近隣以外の子供との交流頻度および近隣以外の友人・知人の数が対照群に比べて有意に増加した。社会的サポート得点でボランティア群は対照群に比べて友人・近隣の人からの受領サポート得点は有意に減少したが,提供サポート得点は有意に増加した。ボランティア群は対照群に比べて「地域への愛着と誇り」,健康度自己評価,および握力において有意な改善または低下の抑制がみられた。
    結論 9 か月間の世代間交流を通した知的ボランティア活動により健常高齢者の主観的健康感や社会的サポート・ネットワークが増進し,地域共生意識および体力の一部に効果がみられた。自治体との協働により,新たな地域高齢者のヘルスプロモーションプログラムを構築しうることが示唆された。
資料
  • 松岡 宏明, 中瀬 克己, 發坂 耕治, 金子 典代, 横山 美江
    2006 年 53 巻 9 号 p. 715-720
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 平成16年度から新医師臨床研修制度において「地域保健・医療」が必須項目に位置づけられ,「地域保健・医療」研修が臨床研修の 1 つとなった。本研究では,研修医が研修実施前に,「地域保健・医療」研修においてどのような知識や技術を身につけたいか,どのような形式の研修を望んでいるのかを質的調査により検討した。
    方法 臨床研修指定病院において 1 年目の研修中である 3 人の研修医に個別インタビューを実施し,その後 7 人および 6 人からなるグループ合計 2 グループに対し,グループインタビューを行った。
    結果 本研究の対象者においては,大学教育の後であっても保健所業務,ひいては保健サービスに関する具体的イメージを持ち得ていなかった。研修先選定の際には「地域保健・医療」のプログラム内容は考慮されておらず,「地域保健・医療」研修の目標についても意識されていなかった。研修医の地域保健研修への期待では,保健所の仕事や保健所で働く専門職について知りたい,とくに臨床実践に関わる公衆衛生分野を知りたいとの意見があった。臨床に関わりの深い領域として,具体的には,結核・感染症の届出や難病・介護保険にまつわる,公的保健サービスの実際的知識と技術が挙げられた。さらに研修方法としては,地域住民に対して健康教育プログラムを自主的に計画・実施するといった参加型の研修形態を希望する者もいた。研修期間については,1 週間以上 1 か月未満という意見が大勢を占めた。
    結論 保健所における「地域保健・医療」研修に対して研修医は具体的な業務イメージを持っていなかった。研修内容に関する研修医の具体的な希望は,臨床業務に関連した保健事業の研修であった。こうした研修医に地域保健および公衆衛生学的な知識・技能の習得を図るためには,臨床実践から保健事業へと展開していく研修方略の開発が必要である。
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