日本公衆衛生雑誌
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原著
地域集団におけるメタボリックシンドロームの脳卒中罹患に及ぼす影響について
斉藤 功小西 正光渡部 和子近藤 弘一藤本 弘一郎岡田 克俊
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2007 年 54 巻 10 号 p. 677-683

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抄録

目的 前向きコホート研究により地域集団におけるメタボリックシンドロームと脳卒中罹患との関連について検討すること。
方法 1996~98年の愛媛県旧 O 市の基本健康診査受診者4,672人(40歳以上)の内,脳卒中の既往者を除く4,627人を対象とし,2002年12月31日までの脳卒中罹患の有無を調べた。わが国のメタボリックシンドロームの診断基準に基づき,ベースライン時のウエスト周囲径高値の有無と血圧高値,脂質代謝異常,耐糖能異常のリスクの保有個数(0 個,1 個,2 個以上)の組み合わせから 6 群にリスクの階層化を行い,Cox 比例ハザードモデルより脳卒中罹患の性年齢調整済み相対危険度と人口寄与割合を算出した。
結果 平均5.7年の追跡期間中,88人(男性50人,女性38人)の脳卒中罹患者を把握した。脳卒中を病型別にみると脳出血11.4%,くも膜下出血5.7%,脳梗塞83.0%であった。メタボリックシンドロームの割合は,脳卒中罹患ありの群6.8%,なしの群6.4%であり,両群の違いは認めなかった。ウエスト周囲径正常かつリスク 0 個の群の相対危険度を 1 とした場合,メタボリックシンドローム群単独での相対危険度の有意な上昇は認めなかった。人口寄与割合は,ウエスト周囲径正常かつリスク 1 個の群で最も高かった(36.3%)。ウエスト周囲径正常かつリスク 1 個以上の群と,メタボリックシンドロームとその予備軍を合わせた群に再分類して検討したところ,前者の性年齢調整済み相対危険度は2.53(95%信頼区間:1.14-5.58),後者は2.66(95%信頼区間:1.14-6.21)であった。
結論 メタボリックシンドロームの原因とされる内臓肥満の有無にかかわらず,リスクの集積は脳卒中罹患のリスクを上昇させた。人口寄与割合は,むしろ内臓肥満のない群の方が大きく,脳卒中予防に向けたメタボリックシンドローム対策の効果は,当地域においては必ずしも大きくはないことが示唆された。

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© 2007 日本公衆衛生学会
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