日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
専門的口腔ケアの導入と義歯の歯科医療介入による要介護高齢者の QOL の改善
藤中 高子
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2008 年 55 巻 6 号 p. 381-387

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抄録

目的 熊本県山鹿保健所では,平成17年度に,管内の特別養護老人ホーム矢筈荘と協力して,専門的口腔ケアの導入と義歯の歯科医療介入(調製と調整)による入所者の QOL 向上の評価を行ったので,報告する。
対象と方法 入所者41人を対象に,歯科衛生士による指導で,対象者毎に日常の口腔ケアの標準化を行った。標準化の目的は,介護者が変わっても一定レベルの口腔ケアを維持することである。そして,清潔度,歯石・歯肉炎・口臭・舌苔の有無,流涎・乾燥の程度の 7 項目からなる口腔ケアと口腔開口度,咀嚼能力,発音の明瞭度,嚥下状況,食べこぼしの量の 5 項目からなる口腔機能を,開始前,中間,終了時に評価した。また,口腔アセスメントの結果をもとに,義歯不使用か不適合のまま義歯を使用しているグループを対照群I(20人),自歯が十分残っているか使用中の義歯の適合が良いグループを対照群II(8 人),義歯の調製か調整により適合を良好にしたグループを介入群(13人)とし,3 群間で,食事形態と体重・BMI,血清アルブミン値による栄養状態を比較した。
結果 口腔ケアに関して,口腔内の清潔度や口臭の改善など良好な結果が得られたが,口腔機能の改善は認められなかった。義歯の歯科医療介入を評価した 3 群間では,食事形態は経管栄養から普通食になるなど介入群で食事形態の改善を認めたが,体重や血清アルブミン値は 3 群間で変化を認めなかった。
結論 専門的口腔ケアを導入し,各高齢者の口腔の特徴に応じた日常の口腔ケアの手技を開発することは重要である。また,義歯の調製や調整により義歯を適切に使用することは食事形態の改善につながるなど高齢者の QOL 向上のために必要である。

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© 2008 日本公衆衛生学会
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