日本公衆衛生雑誌
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55 巻 , 6 号
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原著
  • 大畠 律子
    2008 年 55 巻 6 号 p. 367-374
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 感染から長期経過後に発病した結核患者の感染実態把握と感染源究明の一手段として,結核菌の遺伝子解析の有用性を検討する。
    方法 2004年度に岡山県内で発生した,慢性排菌患者が関与した 2 つの結核感染事例を対象とした。患者から分離された結核菌の DNA を抽出し,IS6110をプローブとした RFLP(restriction fragment length polymorphism 制限酵素断片長多型)解析(以下 IS6110-RFLP と略す)および,PGRS(polymorphic GC-rich repetitive sequence)をプローブとした RFLP 解析(以下 PGRS-RFLP と略す)を行って菌株間の相同性を調べた。疫学調査で感染源の推測が難しかった事例は,1999年12月から県内の結核新登録患者分離株の RFLP パターンを集積している RFLP データベースと照合し,パターン一致株の有無を調べた。また,結核菌の Rifampicin(RFP)耐性に関与する rpoB 遺伝子と,Isoniazid(INH)耐性に関与する katG 遺伝子の変異を,リアルタイム PCR による融解曲線分析で検出した。薬剤感受性は,微量液体希釈法および小川培地による比率法で調べた。
    結果 事例 1 では,疫学調査により同一患者から 2 人が約20年を経て感染したことが疑われた。分離株の薬剤感受性パターンと薬剤耐性に関与する遺伝子の変異状況が異なっていたが,IS6110-RFLP パターンがほぼ一致し,かつ,PGRS-RFLP パターンも一致したため,同一株の可能性が高いと考えられた。事例 2 では,医療従事者が初回多剤耐性結核を発病したが,感染源が不明であった。そこで,分離株の IS6110-RFLP パターンを RFLP データベースと照合した結果,4 年 8 か月前に多剤耐性結核で死亡した慢性排菌患者からの分離株と一致した。また,薬剤感受性パターンと薬剤耐性に関与する遺伝子の変異状況も一致した。両者は,同一病院の職員と患者であったため,院内感染と考えられた。
    結論 感染から長期経過後に発病した結核患者の感染実態の把握と感染源究明において,結核菌の遺伝子解析は,有用な情報を提供し,接触者健診を科学的に支援した。また,結核菌の遺伝子型データベースを構築し,疫学情報に基づいて的確に解析することで,接触者健診だけでは把握できない感染源の検出に繋がることが示唆された。
短報
  • 井上 聡, 野村 恭子, 矢野 栄二
    2008 年 55 巻 6 号 p. 375-380
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 市区町村を単位に柔道整復師施術所(以下柔整施術所)数と整形外科診療所数の地理的分布を調べ,両者による医療サービスの関係を明らかにすることを目的とした。
    対象および方法 各市町村の柔整施術所数と整形外科診療所数はインターネット,i タウンページ(2006年 5 月-9 月)より,推定人口(2006年 7 月)は各都道府県の公式ホームページより求めた。人口10万人あたりの柔整施術所数,整形外科診療所数を求め,それらからローレンツ曲線を描いて Gini 係数を算出し,相互の地理的関係を調べた。
    結果 2006年の全体の柔整施術所数は23,995で,市町村の人口10万人あたりの中央値(第 1-3 四分位値)は,14.9(8.6-21.8)であった。一方整形外科標榜診療所数は5,842,中央値は2.8(0-51.9)で,柔整施術所は整形外科診療所に比べ全国に広く分布していた。整形外科診療所の存在しない市町村数は231であり,柔整施術所の存在しない市町村数は18であった。
     全体でみると柔整施術所の Gini 係数は0.264で,整形外科診療所は0.276であった。市区部ではそれぞれ0.247,0.232であり,全体,市区部では両医療機関の地域偏在は比較的小さかった。これに対し町村部では,それぞれ0.403,0.632と地域偏在が大きくなり,特に整形外科診療所で地域偏在が目立った。
    結論 整形外科診療所が市区部に比較し町村部において地理的分布格差が大きい一方で,柔整施術所は全国的に数が多く,町村部においても整形外科診療所よりも格差か小さかった。柔整施術所は,特に整形外科医の少ない過疎地で整形外科領域の診療の補完を行っている可能性が考えられた。
公衆衛生活動報告
  • 藤中 高子
    2008 年 55 巻 6 号 p. 381-387
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 熊本県山鹿保健所では,平成17年度に,管内の特別養護老人ホーム矢筈荘と協力して,専門的口腔ケアの導入と義歯の歯科医療介入(調製と調整)による入所者の QOL 向上の評価を行ったので,報告する。
    対象と方法 入所者41人を対象に,歯科衛生士による指導で,対象者毎に日常の口腔ケアの標準化を行った。標準化の目的は,介護者が変わっても一定レベルの口腔ケアを維持することである。そして,清潔度,歯石・歯肉炎・口臭・舌苔の有無,流涎・乾燥の程度の 7 項目からなる口腔ケアと口腔開口度,咀嚼能力,発音の明瞭度,嚥下状況,食べこぼしの量の 5 項目からなる口腔機能を,開始前,中間,終了時に評価した。また,口腔アセスメントの結果をもとに,義歯不使用か不適合のまま義歯を使用しているグループを対照群I(20人),自歯が十分残っているか使用中の義歯の適合が良いグループを対照群II(8 人),義歯の調製か調整により適合を良好にしたグループを介入群(13人)とし,3 群間で,食事形態と体重・BMI,血清アルブミン値による栄養状態を比較した。
    結果 口腔ケアに関して,口腔内の清潔度や口臭の改善など良好な結果が得られたが,口腔機能の改善は認められなかった。義歯の歯科医療介入を評価した 3 群間では,食事形態は経管栄養から普通食になるなど介入群で食事形態の改善を認めたが,体重や血清アルブミン値は 3 群間で変化を認めなかった。
    結論 専門的口腔ケアを導入し,各高齢者の口腔の特徴に応じた日常の口腔ケアの手技を開発することは重要である。また,義歯の調製や調整により義歯を適切に使用することは食事形態の改善につながるなど高齢者の QOL 向上のために必要である。
資料
  • 岡本 秀明
    2008 年 55 巻 6 号 p. 388-395
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 高齢者の社会活動の 4 側面と生活満足度との関連を男女別に検討した。
    方法 都市部の高齢者(65~84歳)1,500人を対象に自記式調査票を用いた郵送調査を実施した。有効回答数771人のうち,生活満足度の項目などに無回答の者を除外したため,分析対象者は612人となった。測定は,生活満足度は LSIK,社会活動は個人活動,社会参加・奉仕活動,学習活動,仕事の 4 側面で捉えた社会活動指標を用いた。分析は,生活満足度を従属変数とする重回帰分析を男女別に行った。社会活動の 4 側面のうち,仕事の側面は仕事あり群となし群,それ以外の 3 側面は低位群,中位群,高位群の 3 群に分類した。分析の際,まず,独立変数を社会活動の各側面の活動低位群を参照カテゴリーとしたダミー変数とする分析を側面ごとに行った(Model 1)。次に,社会活動 4 側面のダミー変数を独立変数に同時投入して分析した(Model 2)。すべての重回帰分析で投入した調整変数は,年齢,配偶者の有無,暮らし向き,IADL であった。
    結果 Model 1 による分析の結果,個人活動の高位群は,男女とも低位群より生活満足度得点が高く,中位群と低位群の間に差はなかった。社会参加・奉仕活動は,男性には関連はみられなかった。女性の高位群は低位群より生活満足度得点が高く,中位群と低位群の間には差はなかった。学習活動および仕事は,男女とも生活満足度との関連はなかった。Model 2 の分析の結果,男性においては生活満足度と関連が認められた社会活動の側面はなかった。女性は個人活動のみに関連がみられ,高位群および中位群は低位群より生活満足度得点が高かった。
    結論 高齢者の社会活動と生活満足度との関連について,社会活動 4 側面を同時投入し,社会人口学的変数および IADL を調整して分析した。その結果,女性では個人活動が活発な者ほど生活満足度得点が高かった。一方,男性では社会活動と生活満足度との関連はなかった。
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