日本公衆衛生雑誌
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資料
大分県内の一地方における2006/07年シーズンのインフルエンザ流行状況とワクチンの有効性に関する検討 大分県佐伯市蒲江地域
江藤 孝史青野 裕士牧野 芳大
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2009 年 56 巻 10 号 p. 744-749

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抄録

目的 大分県佐伯市蒲江の一中核病院における疫学調査をもとに,地域におけるインフルエンザの流行を解析し,今後の地域病院におけるインフルエンザ対策のあり方を検討した。
方法 2006年12月19日~2007年 5 月23日の期間,蒲江の M 病院を外来受診または入院し,インフルエンザウイルス感染症が疑われた患者(409人)を対象に,インフルエンザ迅速検査を施行した。迅速診断検査結果をワクチン接種歴と共に一覧表(インフルエンザ判定表)にまとめた。この表をもとに2006/07年シーズンのインフルエンザ流行の疫学調査を行った。また同地域におけるインフルエンザワクチンの有効性を調査した。
結果 インフルエンザ患者の発生期間は2007年 2 月 6 日~5 月12日の期間であった。A 型の流行が 2 峰性にみられ,B 型がその峰の間に流行するというパターンをとった。感染者を年齢階層別にみると,中学生以下の子供は A 型,高校生は B 型感染が多かった。成人では A 型が大多数で,陽性者全体に占める割合も大きかった。65歳以上の高齢者の感染は少なく,すべて A 型であった。ワクチン接種群は161人中59人が陽性(発症率36.6%),未接種群は248人中124人が陽性(発症率50.0%)であり,ワクチン有効率は26.7%であった。
結論 2006/07年シーズンの大分県佐伯市蒲江地域では,A 型の流行が 2 峰性にみられ,B 型がその峰の間に流行した。流行は例年と比べ約 1~2 か月遅れたため,ワクチン接種後の防御抗体価が低下した時期において流行した可能性が考えられた。各地域病院がインフルエンザ迅速測定結果やワクチン接種状況をインフルエンザ判定表としてまとめ,データを公表することで,地域における流行の特徴が把握でき,地域における感染症対策やハイリスク患者への感染予防を早期に行うことができると考えられる。また,本資料はインフルエンザワクチン接種の普及活動を行うための統計資料としても有用であると考えられる。

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© 2009 日本公衆衛生学会
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