日本公衆衛生雑誌
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56 巻 , 10 号
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原著
  • 岡本 秀明
    2009 年 56 巻 10 号 p. 713-723
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,地域高齢者のプロダクティブな活動と well-being の関連について横断調査結果から明らかにすることを目的とした。
    方法 大阪市に居住する高齢者1,500人を対象にした郵送調査を実施し,576人を分析対象にした。プロダクティブな活動は,有償労働,家庭内無償労働,家庭外無償労働の 3 領域と,プロダクティブな役割の数により測定した。Well-being は,生活満足度(LSIK)と主観的健康感の 2 指標を用いた。分析は,well-being の各指標を従属変数,プロダクティブな活動それぞれを独立変数,基本的な属性や社会関係をコントロール変数として多変量解析を用いて男女別に行った。
    結果 有償労働は,女性の生活満足度,男性と女性の主観的健康感と正の関連がみられた。家庭内無償労働は,男女ともに well-being の指標との関連がみられなかった。家庭外無償労働は,女性の生活満足度および主観的健康感と正の関連がみられた。プロダクティブな役割の数は,男性の主観的健康感,女性の生活満足度および主観的健康感と正の関連を示していた。
    結論 女性では,家庭内無償労働を除くプロダクティブな活動が概して well-being を高める可能性が示唆された。男性では,有償労働への従事や,プロダクティブな役割を多く持つことが主観的健康感を高める可能性が示唆された。特に女性の高齢者に対し,家庭外でのプロダクティブな活動に関与しやすいような環境整備を進めることにより,本人の well-being の向上とともに,地域社会に活動による利益がもたらされる可能性が考えられる。
  • 清野 諭, 藪下 典子, 金 美芝, 根本 みゆき, 松尾 知明, 深作 貴子, 奥野 純子, 大藏 倫博, 田中 喜代次
    2009 年 56 巻 10 号 p. 724-736
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 本邦では,新たに改正・施行された介護保険法のもと,特定高齢者に向けた地域支援事業が展開されている。運動機能の評価項目としては,おもに握力,開眼片足立ち,5 m 通常歩行の 3 項目が活用されている。これらの項目は広く普及している一方で,特定高齢者への適用の妥当性に関する検証は十分になされていない。そこで,本研究では特定高齢者と一般高齢者の体力的相違に基づいた上で,特定高齢者用の体力テストバッテリを提案することを目的とした。
    方法 特定高齢者127人(76.6±5.9歳)と一般高齢者315人(72.2±5.8歳)を対象に,日常生活動作および移動能力に関連した12項目の体力測定を行った。特定高齢者は,「特定高齢者の決定方法および選定方法」に準拠して抽出された。特定高齢者の該当・非該当を従属変数としたロジスティック回帰分析によってテストバッテリを選定し,主成分分析を用いて体力得点による評価指標を作成した。作成した評価指標を別の集団(特定高齢者28人,一般高齢者143人)に適用することで交差妥当性を検討した。さらに,3 か月間の運動介入ができた特定高齢者62人を対象に,運動介入による評価指標の妥当性についても検討した。
    結果 ロジスティック回帰分析の結果,タンデムバランス,5 回いす立ち上がり,ステップテスト,アップ&ゴーが採択され,この 4 項目でテストバッテリを作成した。主成分分析の結果,第一主成分が体力の総合力をあらわすと判断され,次のような体力得点による評価指標を作成した。体力得点=0.031X1−0.106X2−0.192X3−0.096X4+1.672,X1:タンデムバランス,X2:5 回いす立ち上がり,X3:ステップテスト,X4:アップ&ゴー。また,receiver operating characteristic(ROC)解析によって求められた特定高齢者と一般高齢者の体力得点のカットオフ値は,0.065(感度82.2%,特異度81.9%)であった。体力得点推定式およびカットオフ値の交差妥当性は良好であり,特定高齢者への運動介入による体力変化がとらえられるものであった。
    結論 本研究で提案した特定高齢者用の体力テストバッテリは,妥当な体力評価が可能であり,特定高齢者施策などの現場および研究フィールドでの活用が期待できるものである。
資料
  • 原田 和弘, 高泉 佳苗, 柴田 愛, 岡 浩一朗, 中村 好男
    2009 年 56 巻 10 号 p. 737-743
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 健康日本21の中間報告書では,身体活動・運動分野の重点課題の 1 つとして,「エクササイズガイド2006の普及啓発」を挙げているが,エクササイズガイド2006を認知している者は非常に少ない(肥後・中村,2008)。本研究の目的は,今後の普及活動に向けての手がかりを得るために,エクササイズガイド2006の認知状況と,人口統計学的変数および他の健康づくり施策の認知状況との関連性を検討し,エクササイズガイド2006を認知している者の特徴を把握することであった。
    方法 社会調査モニタ1,613人(40.2±12.2歳)を対象に,インターネット調査を実施した。調査項目のうち,従属変数はエクササイズガイド2006の認知状況(聞いたことがある/聞いたことがない)であり,説明変数は,他の健康づくり施策の認知状況(健康日本21,食事バランスガイド,特定健診・特定保健指導)および人口統計学的変数(性別,年齢階層,婚姻状況,BMI, TV 利用時間,インターネット利用時間など)であった。統計解析は,ロジスティック回帰分析を用いた。
    結果 全対象者の12.3%の者が,エクササイズガイド2006を聞いたことがあると回答した。50歳以上(OR=2.17; 95%CI=1.11-4.22),世帯収入1000万円以上(OR=1.94; 95%CI=1.05-3.61),運動習慣(OR=1.75; 95%CI=1.07-2.86),健康日本21の認知(OR=23.60; 95%CI=15.26-36.52),食事バランスガイドの認知(OR=5.52; 95%CI=3.01-10.13),および特定健診・特定保健指導の認知(OR=3.41; 95%CI=2.12-5.48)が,エクササイズガイド2006の認知に有意に回帰した。
    結論 本研究と先行研究により得られた主要な知見は,中高齢者の方がエクササイズガイド2006を認知しているものの認知率は低い点,エクササイズガイド2006の普及において低学歴者に対象を絞った戦略を立てる必要性は高くない可能性がある点,健康日本21とエクササイズガイド2006について情報の認知の段階では現状が類似している可能性が高い点である。エクササイズガイド2006の効果的かつ具体的なプロモーション手法を開発していくことが求められる。
  • 江藤 孝史, 青野 裕士, 牧野 芳大
    2009 年 56 巻 10 号 p. 744-749
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 大分県佐伯市蒲江の一中核病院における疫学調査をもとに,地域におけるインフルエンザの流行を解析し,今後の地域病院におけるインフルエンザ対策のあり方を検討した。
    方法 2006年12月19日~2007年 5 月23日の期間,蒲江の M 病院を外来受診または入院し,インフルエンザウイルス感染症が疑われた患者(409人)を対象に,インフルエンザ迅速検査を施行した。迅速診断検査結果をワクチン接種歴と共に一覧表(インフルエンザ判定表)にまとめた。この表をもとに2006/07年シーズンのインフルエンザ流行の疫学調査を行った。また同地域におけるインフルエンザワクチンの有効性を調査した。
    結果 インフルエンザ患者の発生期間は2007年 2 月 6 日~5 月12日の期間であった。A 型の流行が 2 峰性にみられ,B 型がその峰の間に流行するというパターンをとった。感染者を年齢階層別にみると,中学生以下の子供は A 型,高校生は B 型感染が多かった。成人では A 型が大多数で,陽性者全体に占める割合も大きかった。65歳以上の高齢者の感染は少なく,すべて A 型であった。ワクチン接種群は161人中59人が陽性(発症率36.6%),未接種群は248人中124人が陽性(発症率50.0%)であり,ワクチン有効率は26.7%であった。
    結論 2006/07年シーズンの大分県佐伯市蒲江地域では,A 型の流行が 2 峰性にみられ,B 型がその峰の間に流行した。流行は例年と比べ約 1~2 か月遅れたため,ワクチン接種後の防御抗体価が低下した時期において流行した可能性が考えられた。各地域病院がインフルエンザ迅速測定結果やワクチン接種状況をインフルエンザ判定表としてまとめ,データを公表することで,地域における流行の特徴が把握でき,地域における感染症対策やハイリスク患者への感染予防を早期に行うことができると考えられる。また,本資料はインフルエンザワクチン接種の普及活動を行うための統計資料としても有用であると考えられる。
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