日本公衆衛生雑誌
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原著
地域在住高齢者における認知症を伴う要介護認定の心理社会的危険因子 AGES プロジェクト3年間のコホート研究
竹田 徳則近藤 克則平井 寛
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2010 年 57 巻 12 号 p. 1054-1065

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抄録

目的 本研究の目的は,認知症を伴う要介護認定の心理社会的な危険因子や認知症予防につながる趣味の種類を明らかにすることである。
方法 愛知老年学的評価研究(Aichi Gerontological Evaluation Study)プロジェクトの一環として,65歳以上で,要介護認定を受けていない高齢者を対象に自記式郵送調査を2003年に行った(回収率49.4%)。そのうち性別,年齢が明らかで ADL 全自立の9,720人,平均年齢72.8±6.0歳(男性4,614人,女性5,106人)を 3 年間追跡した。要介護と認定され二次判定で「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」ランクII以上による要介護認定をエンドポイントとした。説明変数には,健康行動,心理・認知的因子,趣味・社会的活動,老研式活動能力指標,社会階層を用いた。趣味活動は 8 種類(スポーツ・文化・音楽・創作・園芸・テレビやラジオ視聴・観光・投資やギャンブル)とした。Cox 比例ハザード回帰分析を用いて年齢調整した,ハザード比を男女別に求めた。次に有意差のみられた因子を説明変数としステップワイズ法を用い分析を行った。
結果 3 年間に認知症を伴う要介護認定は330人(男性139人,女性191人),それ以外の者は9,390人で,その認定率は,11.3/1,000人・年だった。
 ステップワイズ法で認知症を伴う要介護認定を予測する因子(ハザード比:HR)として,男女共通に有意であったのは,物忘れの自覚「あり」(男性 HR:1.69,女性 HR:2.59),手段的自立 4 点以下(HR:1.80, HR:2.23),男性では,独居(HR:2.39),主観的健康感「よくない」(HR:2.04),仕事「なし」(HR:1.80),知的能動性 3 点以下(HR:2.13),園芸的活動「なし」(HR:1.99),女性では,スポーツ的活動「なし」(HR:1.92)であった。
結論 心理社会的状態や生活機能が良好な者,趣味の種類では男性で園芸的活動,女性でスポーツ的活動を行っている者で認知症を伴う要介護認定が少なかった。認知症の介護予防政策では,健康行動以上にこれらの因子に着目する重要性が示唆された。

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© 2010 日本公衆衛生学会
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