日本公衆衛生雑誌
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原著
高齢者の社会的活動と関連要因 シルバー人材センターおよび老人クラブの登録者を対象として
長田 久雄鈴木 貴子高田 和子西下 彰俊
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2010 年 57 巻 4 号 p. 279-290

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抄録

目的 シルバー人材センターおよび老人クラブに登録している高齢者を対象として,主な社会的活動項目の分類を行い,性別•年齢別による比較と 1 年間の活動量の変化,QOL 質問票との関連について検討を行った。
方法 東京都 A 区のシルバー人材センターおよび老人クラブ会員に対して,地域における社会的活動ならびに QOL に関する自己記述式調査を行った。翌年も同様の調査を行い,両年ともに回答の得られた1,334人を対象に分析を行った。調査方法は,初年は簡易面接にて回答をしてもらい,翌年は郵送法による調査票の郵送•返却を行った。
 まず社会的活動項目について探索的因子分析を行い,信頼性の検討を行った。次に,確認された社会的活動の各因子の得点ならびに QOL 質問票について,性別,年齢別に t 検定,一元配置分散分析を行った。また,1 年後の再調査における社会的活動項目の変化についても検討した。
結果 社会的活動に関する項目が 4 因子全14項目であることが確認され,同時にモデルの信頼性が確認された。4 つの因子は,「地域活動への参加」,「親戚•友人を訪問」,「集団活動への参加」,「趣味活動」であった。各因子の Cronbach の α 係数は r=0.73~0.87であり,信頼性が確認された。
 性別,年齢別の比較では,「親戚•友人を訪問」(t=4.70,P<.001),「趣味活動」(t=2.14,P<.05)で女性より男性の活動頻度が有意に高く,また年齢差では女性の「親戚•知人を訪問」の頻度が70-74歳で有意に高かった(F=4.61,P<.01)。また 1 年後の再調査では,男女いずれにおいても因子別•年齢別において中程度以上の相関が確認された(r=0.58~0.88)。
 社会的活動の各因子は,男女ともに QOL 質問票の「精神的活力」(r=0.10~0.59)と,また女性では社会的活動の各因子と QOL 質問票の「人的サポート満足感」(r=0.15~0.44)と主に関連がみられた。
結論 地域高齢者の主な社会的活動として 4 因子14項目が抽出され,信頼性が確認された。また,性別,年齢別による社会活動の頻度の違いが明らかとなった。今後は地域差や予防的観点を含めた心理的•身体的健康との関連についてさらに検討する必要がある。

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© 2010 日本公衆衛生学会
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