日本公衆衛生雑誌
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57 巻 , 4 号
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原著
  • 服部 昌和, 藤田 学, 中村 好一, 井岡 亜希子
    2010 年 57 巻 4 号 p. 263-270
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 がんの生存率向上のためには治療医療機関の集約(均てん)化が重要であるが,どの部位のがんをどれくらいの規模の医療機関で治療を行うのが望ましいのかという検討は不十分である。本研究では福井県地域がん登録データを用いて,がん医療集約化の方向性と,集約化が実現した場合の死亡率減少効果について試算し考察する。
    方法 対象は福井県地域がん登録において 5 年後の予後調査が完全に終了している1994年から1998年に診断されたがん新発生届出患者である。治療医療機関のカテゴリーは,部位ごと(食道:259例,胃:4,077例,大腸:2,225例,肝臓:925例,胆のう:611例,膵臓:396例,肺:1,283例,乳房:1,012例,子宮:315例,卵巣:198例,前立腺:570例,膀胱:483例,リンパ組織:378例)に初回主治療を受けた患者数を医療機関毎に集計し,その件数を累積したうえで 4 分割し,1 施設あたりの年間治療件数の多い施設から順に多/中/少/極少件数病院と定義区分した。治療医療機関規模ごとの進行度別 5 年相対生存率から,部位ごとに治療を受けるのが望ましい医療機関については,性,年齢および進行度を調整のうえ多件数治療病院を基準とした死亡ハザード比に基づいて判断した。望ましいがん医療の集約化がすすめられた場合の死亡率減少効果を集約化後に期待される生存率から算出した。
    結果 治療件数が多い医療機関ほど,5 年相対生存率が高かった。医療機関ごとに扱うがんの治療件数と調整ハザード比からは,胃•大腸および乳房のように,多/中/少件数治療機関の死亡リスクがほぼ同等である部位と,それら以外の治療規模が小さくなるにつれ死亡リスクが高くなる部位が示され,部位毎に治療するのが望ましい医療機関規模が判断された。この結果から,それぞれが望ましい医療機関でがんの治療が行われれば,福井県では2.06%の死亡率減少効果が得られると推定された。
    結論 がん対策における医療の集約化は重要であり,各部位ごとにデータに基づいたきめの細かい集約化をすすめる必要がある。
  • 三浦 哉, 高橋 良徳, 北畠 義典
    2010 年 57 巻 4 号 p. 271-278
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 中高齢者を対象に,自治体で主催されるグループトレーニングを考案し,動脈スティフネスの指標である脈波伝搬速度に及ぼす影響について明らかにしようとした。
    対象と方法 対象者は86人の女性中高齢者であり,1 回90分間のグループトレーニングを週 2 回,3 か月間実施する介入群(45人;69.8±7.2歳)と同期間に運動を実施しない対照群(41人;68.9±7.3歳)とに無作為に分けた。グループトレーニングの内容は主にラバーチューブ,ダンベルを用いた抵抗性運動と椅座位で音楽に合わせながら下肢中心の有酸素性運動で構成される内容であった。運動介入期間前後に血圧脈波検査装置を用いて,上腕収縮期,拡張期血圧,および上腕—足の脈波伝播速度を計測した。また,起居能力,歩行能力,手腕作業能力,身辺作業能力からなる生活体力テストも実施した。
    結果 介入群および対照群の運動介入期間前後の収縮期血圧の変化率は−3.3±8.4%と1.7±7.9% (P<0.01),拡張期血圧の変化率は−4.3±7.8%と0.9±7.7% (P<0.01),および脈波伝搬速度の変化率は−8.9±5.0%と0.2±5.4% (P<0.001)であり,両群間に有意な差が認められた。また,起居能力の変化率は−11.0±11.4%と−2.0±10.7% (P<0.001),歩行能力の変化率は−6.8±10.3%と−2.6±10.2% (n.s.),手腕作業能力の変化率は−3.5±13.2%と−1.6±7.5% (n.s.),および身辺作業能力の変化率は−7.6±15.2%と0.0±12.9% (P<0.05)であり,起居能力および身辺作業能力について,両群間に有意な差が認められた。
    結論 我々が考案したグループトレーニングは中高齢者女性の血圧,脈波伝搬速度の改善および起居能力,身辺作業能力といった基本的動作能力の改善に有用であることが示された。
  • 長田 久雄, 鈴木 貴子, 高田 和子, 西下 彰俊
    2010 年 57 巻 4 号 p. 279-290
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 シルバー人材センターおよび老人クラブに登録している高齢者を対象として,主な社会的活動項目の分類を行い,性別•年齢別による比較と 1 年間の活動量の変化,QOL 質問票との関連について検討を行った。
    方法 東京都 A 区のシルバー人材センターおよび老人クラブ会員に対して,地域における社会的活動ならびに QOL に関する自己記述式調査を行った。翌年も同様の調査を行い,両年ともに回答の得られた1,334人を対象に分析を行った。調査方法は,初年は簡易面接にて回答をしてもらい,翌年は郵送法による調査票の郵送•返却を行った。
     まず社会的活動項目について探索的因子分析を行い,信頼性の検討を行った。次に,確認された社会的活動の各因子の得点ならびに QOL 質問票について,性別,年齢別に t 検定,一元配置分散分析を行った。また,1 年後の再調査における社会的活動項目の変化についても検討した。
    結果 社会的活動に関する項目が 4 因子全14項目であることが確認され,同時にモデルの信頼性が確認された。4 つの因子は,「地域活動への参加」,「親戚•友人を訪問」,「集団活動への参加」,「趣味活動」であった。各因子の Cronbach の α 係数は r=0.73~0.87であり,信頼性が確認された。
     性別,年齢別の比較では,「親戚•友人を訪問」(t=4.70,P<.001),「趣味活動」(t=2.14,P<.05)で女性より男性の活動頻度が有意に高く,また年齢差では女性の「親戚•知人を訪問」の頻度が70-74歳で有意に高かった(F=4.61,P<.01)。また 1 年後の再調査では,男女いずれにおいても因子別•年齢別において中程度以上の相関が確認された(r=0.58~0.88)。
     社会的活動の各因子は,男女ともに QOL 質問票の「精神的活力」(r=0.10~0.59)と,また女性では社会的活動の各因子と QOL 質問票の「人的サポート満足感」(r=0.15~0.44)と主に関連がみられた。
    結論 地域高齢者の主な社会的活動として 4 因子14項目が抽出され,信頼性が確認された。また,性別,年齢別による社会活動の頻度の違いが明らかとなった。今後は地域差や予防的観点を含めた心理的•身体的健康との関連についてさらに検討する必要がある。
資料
  • 赤松 利恵, 梅垣 敬三
    2010 年 57 巻 4 号 p. 291-297
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 新聞に掲載されている健康食品の広告の実態について,質的研究法である内容分析を用いて明らかにすることを目的とした。
    方法 2007年10月 1 日~31日の全国紙 5 紙(朝日新聞,産経新聞,日経新聞,毎日新聞,読売新聞)の東京版を対象に,新聞の名称,広告の面積,健康食品のカテゴリー(特定保健用食品,栄養機能食品,JHFA,その他の 4 種類),効果を示す文句,含有成分等,14項目について調べた。
    結果 健康食品の広告数は,述べ541個であり,これらの広告の健康食品のカテゴリーごとの割合は,特定保健用食品12.4%,栄養機能食品6.3%,JHFA 4.3%,その他77.1%であった。広告で強調されていた成分は,全部で95種類あり,「お得感•キャンペーン•割引」や「効果を示す文句」の表示がある広告の割合が多かった(各々70.6%と60.8%)。調査項目の表示の有無は,健康食品のカテゴリーごとに分布に違いがあった。また,栄養機能食品において,許可対象成分とうたい文句において強調されている成分が異なっていた。
    結論 本研究の結果より,新聞における健康食品の広告は,その他の健康食品が多いこと,広告の内容は健康食品のカテゴリーによって異なっていたこと,栄養機能食品の広告において,表示許可対象成分とうたい文句において強調されている成分に相違がみられたことが示された。消費者を対象とした健康食品の広告の読み方のスキル,すなわち,メディアリテラシー教育の必要性が考えられた。
  • 平野 優子
    2010 年 57 巻 4 号 p. 298-304
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 ALS 患者支援のあり方を検討する資料を得るために,身体的重症度の高いA LS 患者を重症度別に分類し,各群の医療•福祉サービスの利用状況を明らかにすることを目的とした。
    対象と方法 全国31都道府県支部の患者会の協力により,人工呼吸器を装着した ALS 患者と家族250ケースを対象に,無記名質問紙を郵送で配布して,197ケースを回収した。そのうち,分析対象には,患者が在宅生活,侵襲的人工呼吸器装着,概ね全身不随および経管栄養管理中である139ケースを用いた。身体的重症度の分類は,重症度が高くなる順に,「指先がわずかに動く程度/意思疎通可」,「首から下は全く動かない/意思疎通可」,「眼球を含み体は全く動かない/意思疎通不可(最重度群と記す)」の 3 群に区分し,3 群間の医療•福祉サービスの利用状況の相違を検討した。
    結果 患者の性別と主介護家族の続柄において 3 群間で有意な差が見られたが,患者と主介護家族の年齢,人工呼吸器装着年数,経済的暮らし向きでは差はなかった。医療•福祉サービスの利用について 3 群間で有意な違いが認められたのは,利用可能なレスパイト入院施設の有無で,身体的重症度が顕著になる群ほど入院施設のあるケースが少なく,最重度群では29%にとどまった。訪問看護,訪問介護,支援費の各利用,利用可能な24時間緊急時対応サービスの有無,ヘルパー等介護職者による吸引行為の実施と入浴頻度については差がみられなかった。患者の外出頻度は 3 群間で有意な差が認められ,「全く外出していない」ケースは最重度群で最も多く62%にのぼった。また,3 群間で有意な差はないが,家族のみで行う介護時間がほとんど24時間365日であるケースおよび介護代替者がいるケースは最重度群で最も多かった。ALS 関連の療養費の自己負担月額および ALS 患者以外の介護や育児の必要性については 3 群間で差がみられなかった。
    結論 身体的重症度が高くなる群ほど,とくに最重度群では,利用可能なレスパイト入院施設および社会生活に欠かせない外出の頻度が少なかったことから,身体的重症度がより高い患者が利用できる療養型施設の充実および外出環境の整備の必要性が示された。
  • 吉本 好延, 三木 章江, 浜岡 克伺, 河野 淑子, 大山 幸綱, 荒牧 礼子, 佐藤 厚
    2010 年 57 巻 4 号 p. 305-309
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,消防本部の救急活動記録票における転倒•転落記録状況を明らかにすることを目的としたアンケート調査を行い,救急搬送を伴った転倒•転落の全国調査に向けた予備的検証を行った。
    方法 対象は,全国の市町村に設置されている全消防本部807機関とした。調査期間は,平成19年12月から平成20年10月とし,解析対象は,本研究への承諾と同意が得られ,アンケートの回収が可能であった584機関とした。調査内容は,救急活動記録票において一般負傷に分類された事故の中から転倒•転落を抽出できるかどうかをまず調査し,転倒•転落の抽出が可能な機関については,転倒•転落の定義の使用状況,受傷者の性別,年齢,転倒場所,診断名の調査状況,受傷者の診断名の聴取時期,救急活動記録票の保存方法について調査を行った。
    結果 解析対象とした584機関のうち,転倒•転落の抽出が可能な消防本部は258機関(44.2%)であった。転倒•転落の定義を用いていない消防本部が178機関(70.1%)と最も多く,次いで東京消防庁の定義に準じている消防本部が59機関(23.2%)であった。受傷者の診断名の聴取時期は,医療機関に搬送後すぐ確認する消防本部が98機関(48.5%),医療機関に搬送して数日後に確認する消防本部が104機関(51.5%)であった。
    結論 転倒•転落の抽出が可能な消防本部は,解析対象とした消防本部の約半数を示し,そのうち約70%が転倒•転落の定義を用いておらず,消防機関において転倒•転落の定義が明確化されていない実態が明らかとなった。今後,救急活動記録票を用いた転倒•転落状況の全国調査および地域間での比較を行う場合は,既存のデータを単純に使用することは注意を要し,事故概要や診断名の聴取時期を確認するなど,現状を踏まえた対応が必要であると考えられた。
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