日本公衆衛生雑誌
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災害時の栄養・食生活支援に対する市町村の準備状況と保健所からの技術的支援に関する全国調査
須藤 紀子澤口 眞規子吉池 信男
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2011 年 58 巻 10 号 p. 895-902

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抄録

目的 災害発生時に第一線で住民支援をおこなうのは市町村である。そこで,地域防災計画のなかでの栄養•食生活支援の位置づけや,水や食料備蓄の現状,災害時要援護者の平常時からの把握と災害への備えに対する指導や助言,市町村としての対応マニュアルの作成状況,保健所からの情報提供の現状等を把握した。
方法 平成22年11月から平成23年 1 月にかけて,全国の1,727市町村の栄養業務担当者を対象に,質問紙を郵送し,同封の返信用封筒にて返送を求めた。
結果 1,303市町村から回答が得られた(回収率75.4%)。回答者の約 7 割が栄養士であったため,地域防災計画の内容について「わからない」と回答した者が 1 割前後みられた。地域防災計画に被災者に対する保健指導や栄養•食生活支援活動の進め方が示されていると回答した市町村は 4 割に過ぎなかった。水や食料の備蓄が地域防災計画に示す品目•量を「満たしている」のは全体の20.4%(264市町村)であり,十分な備蓄ができていない理由は,自治体の種類により異なっていた。保健所に求める技術的支援は,「マニュアル•ガイドラインの提供」77.6%が最も多く,次いで「情報の提供」75.2%,「研修会の開催」65.9%,「備蓄整備に関する相談•助言」53.4%の順であった。しかし,実際に保健所から支援を受けていた市町村は 3 割未満であった。
結論 災害時の対応のように,部局を横断する問題に対しては,部局間連携調整がカギであり,日頃からの連携が必要である。災害時の食生活支援のためには,地域防災計画に加えて,支援活動のための具体的な対応を示したマニュアルの整備等が望まれ,それに対する保健所からの支援が期待されているが,必要な支援がなされていないのが現状であった。

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