日本公衆衛生雑誌
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原著
行政分野で働く保健師のキャリア志向尺度の開発および基本属性との関連
大倉 美佳野呂 千鶴子荻田 美穂子荒井 秀典
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2011 年 58 巻 12 号 p. 1026-1039

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抄録

目的 本研究は,行政分野で働く保健師(以下,行政保健師とする)にとってのキャリア志向(以下,行政保健師キャリア志向とする)に関する尺度を開発し,その信頼性を検討すること,またその尺度と基本属性との関連について明らかにすることを目的とした。
方法 10府県における行政保健師7,170人を対象とし,自記式質問紙調査票により,行政保健師として仕事の何を重要と考えるのかについてリッカート法による回答を求めた。バリマックス回転による主因子分析を行い,尺度項目を決定した。また,累積寄与率およびクロンバッハの α 係数を算出し,信頼性を検討した。なお,同意書に署名を得た協力者により,再テスト調査を行った。
結果 1 次調査の回収数は2,065人(28.8%),有効回答数2,003人(97.0%),再テストの協力同意者は252人,有効回答数222人であった。バリマックス回転による主因子分析を行った結果,5 因子19項目が選定され,各因子に管理志向,協働志向,奉仕志向,専門志向,安定志向と命名された。累積寄与率46.9%,クロンバッハの信頼係数 α=0.863(各志向 α=0.612–0.821)であった。また,1 回目の調査と再テストの回答完全一致率は平均59.7%(各項目47.7–72.1%,各参加者12.0–92.0%)であった。行政保健師キャリア志向を従属変数とする重回帰分析の結果,組織づくりの立ち上げの経験の有無,ロールモデルの存在の有無,家族の協力•理解の程度,行政保健師としての経験年数の 4 つの独立変数から説明できる重回帰係数は R2=0.052であった。
結論 本研究の結果開発された行政保健師キャリア志向の尺度は,簡便で自己査定しやすい因子数および項目数と評価でき,因子負荷量,累積寄与率,信頼係数の高さから内的整合性は高いと考えられる。しかし,回答完全一致率は非常に個人差が大きく,再現性については検討の余地がある。

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© 2011 日本公衆衛生学会
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