目的 閉じこもりの二次予防に資する効果的な交流支援を検討するため,非「閉じこもり」である虚弱高齢者の交流頻度と身体•心理•社会的要因との関連を明らかにする。
方法 A 県郊外に在住している虚弱高齢者を対象に,身体機能の測定と面接調査(他記式)を実施した。本研究では交流を「別居子,親戚,友達,近隣の人のいずれかと実際に会って会話をすること,または電話で会話を交わすこと」と定義し,一週間における交流日数を求めた。調査内容は,①基本属性,②身体的要因;視力,聴力,握力,体力,咀嚼力,日常生活動作,移動能力,転倒経験,認知機能,③心理的要因;主観的健康感,うつ傾向,転倒不安,④社会的要因;高次生活活動能力,ソーシャルネットワーク,社会活動である。分析は,交流頻度の規定要因を明らかにするため,重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。有意水準は 5%未満とし,分析には SPSS 15.0 J を使用した。
結果 2007年 4 月~8 月までの調査期間中,61人の研究協力を得た。そのうち,一週間における外出日数が 1 日以上である非「閉じこもり」58人(男性12人,女性46人,平均年齢81.2±6.0歳)を分析対象とした。一週間の交流頻度は平均4.5±2.0日であった。交流頻度と各変数との偏相関係数(年齢補正)をみた結果,男性では有意な相関は認められず,女性では「聴力(低音)」,「聴力(高音)」,「老研式活動能力指標」の 3 変数と有意な相関が認められた。その後,重回帰分析により,女性において「聴力(低音)(β=−.479,
P<0.01)」,「老研式活動能力指標(β=.257,
P<0.05)」が規定要因として認められ,女性では聴力が良好であり,老研式活動能力指標の得点が高い人ほど,一週間の交流日数が多いことがわかった。
結論 女性の虚弱高齢者において,交流頻度の多寡には聴力と高次生活活動能力が影響しており,とくにコミュニケーションの基盤となる聴覚機能に着目する重要性が示唆された。交流日数の維持には聴力が最も関連しており,高齢者の交流支援には聴力検査の実施や補聴器への対応など,今まで見落とされがちであった聴覚機能に対する評価やアプローチをしていくことが必要と考える。その上で,手段的自立や社会的役割といった,より高次の生活機能を維持していく必要性が示唆された。
抄録全体を表示