日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
保健師等のコンピテンシーを高める学習成果創出型プログラムの開発 大学院の地域貢献を目指すアクションリサーチの一環として
岡本 玲子谷垣 靜子岩本 里織草野 恵美子小出 恵子鳩野 洋子岡田 麻里塩見 美抄小寺 さやか俵 志江星田 ゆかり福川 京子茅野 裕美尾ノ井 美由紀
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2011 年 58 巻 9 号 p. 778-792

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抄録

目的 近年,健康課題の多様化•深刻化に伴い,保健師に求められる役割が拡大•高度化している。本研究の目的は,大学院博士前期課程の科目で実施する,保健師等のコンピテンシーを高めるための学習成果創出型プログラムを開発し効果を検証することである。
方法 プログラムは,2 回の試行と修正を経て開発された。プログラムのコンセプトは「私の学び,明日への貢献」であり,4 か月間にグループ•セッションが 5 回,その間の個別面接 4 回で構成されている。期間中参加者は,現場の課題と,それを解決する自分の学習課題を明確にして,自分で決定した到達目標の達成に向けて取り組む。研究者は学習支援者として,参加者の学習成果が最大になるように支援する。
 対象は,2008年10月から2010年 3 月までの 3 期にプログラムを受講した保健師 8 人であり,うち 4 人が大学院生,4 人が科目履修生であった。プログラムのアウトカムは,プログラム実施前後のコンピテンシーの測定により評価し,プロセス評価は,参加者に 1)現状と課題への気づき,2)改善計画の実行,3)改善した成果の確認という 3 つの必須通過点があったかどうかによって評価した。
結果 プログラムを実施した結果,以下の結果に示す一定の効果が検証された。前後のアウトカム評価では,参加者の専門性発展力や公衆衛生の基本活動遂行能力,事業•社会資源の創出コンピテンシー,住民の力量を高める能力,活動の必要性と成果を見せる能力など多様な能力が有意に高まっていた。さらに,プログラム実施後の参加者の満足度と,費用に見合う効果を得られたと思う程度は高かった。また,参加者の学習プロセスにおいては,方法に示した必須通過点が確認された。
結論 本プログラムは今後,大学院教育や大学と連携した自治体や企業,看護協会保健師職能による現任教育への適用可能性がある。今後のプログラム充実に向けては,多様な状況に応じた学習支援方法の確立,教材の開発,質的評価指標の開発,学習支援者育成方法•体制の確立といった課題がある。

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© 2011 日本公衆衛生学会
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