日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
若年脳損傷者の外出における主介護者の介護負担感
安心院 朗子水野 智美徳田 克己
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2012 年 59 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

目的 脳損傷者に関する研究は近年多く行われているが,外出に焦点をあてた研究は少ない。また,脳損傷者の外出には,家族つまり主介護者の介護負担感との関わりがあることから,脳損傷者の外出に関する介護負担感に着目する必要があると考えられる。そこで,本研究では介護者は外出に関してどのようなことに介護負担を感じているのか,また横断的に各属性と介護負担感との関連性について明らかにすることを目的とする。
方法 2008年11月から2009年 3 月にかけて若年脳損傷者(以下,脳損傷者)の主介護者を対象として無記名式による質問紙調査を実施した。有効回答は53部(回収率56%)であった。介護負担感については短縮版の Zarit 介護負担尺度日本語版 (以下,J–ZBI_8)を用いた。
結果 主介護者が外出に関して負担だと感じていることは,外出前は「排泄に関する不安」が挙げられ,外出前および外出時には「主介護者にとって問題となる行動」が挙げられた。
  J–ZBI_8 を用いて主介護者の介護負担感を示した。主介護者の年齢が50歳以上の者より50歳未満の者の方が介護負担を強く感じており,また保護者に比べて配偶者の方が,介護負担感が高い傾向があることが確認された。脳損傷者の外出の頻度や歩行能力と介護負担感の関係は認められなかったが,感情のコントロールが難しい障害がある脳損傷者の介護をする場合,主介護者は介護負担を強く感じている傾向が確認された。
結論 脳損傷者の外出における主介護者の介護負担感を軽減するためには,脳損傷者の外出に関するリハビリテーションを実施し,能力の向上に努めることが重要である。さらに,主介護者が介護士など安心して他者へ頼ることができるような社会資源の充実が求められる。

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