日本公衆衛生雑誌
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59 巻 , 1 号
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原著
  • Miharu NAKANISHI, Taeko NAKASHIMA, Kanae SAWAMURA
    2012 年 59 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    Objectives Group living is an approach that can create small, homelike environments in traditional nursing homes in Japan. The aim of the present study was to examine quality of life (QOL) of residents with dementia in group-living situations.
    Methods The group-living group consisted of facilities that formed residential units. Each unit had a common area and stable staff assignments. The control group consisted of facilities that did not form residential units. The quality of life instrument for Japanese elderly with dementia (QLDJ) scale was used to rate QOL by direct care workers of 616 residents with dementia from 173 facilities in the group-living group and 750 residents from 174 facilities in the control group. QOL was based on the following subscales: interacting with surroundings; expressing oneself; and experiencing minimal negative behavior.
    Results Multilevel regression analyses demonstrated a significantly greater QOL with respect to interacting with surroundings, expressing oneself, and experiencing minimal negative behavior for residents with dementia in the group-living group compared to the control group, as measured by the QLDJ. The total QLDJ score was also significantly higher for the group-living group.
    Conclusion The results suggest improved QOL of residents with dementia under group-living situations. Future studies should examine the effect of group-living on QOL of residents with dementia using a cohort design, following residents longitudinally from admission.
研究ノート
  • 安心院 朗子, 水野 智美, 徳田 克己
    2012 年 59 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 脳損傷者に関する研究は近年多く行われているが,外出に焦点をあてた研究は少ない。また,脳損傷者の外出には,家族つまり主介護者の介護負担感との関わりがあることから,脳損傷者の外出に関する介護負担感に着目する必要があると考えられる。そこで,本研究では介護者は外出に関してどのようなことに介護負担を感じているのか,また横断的に各属性と介護負担感との関連性について明らかにすることを目的とする。
    方法 2008年11月から2009年 3 月にかけて若年脳損傷者(以下,脳損傷者)の主介護者を対象として無記名式による質問紙調査を実施した。有効回答は53部(回収率56%)であった。介護負担感については短縮版の Zarit 介護負担尺度日本語版 (以下,J–ZBI_8)を用いた。
    結果 主介護者が外出に関して負担だと感じていることは,外出前は「排泄に関する不安」が挙げられ,外出前および外出時には「主介護者にとって問題となる行動」が挙げられた。
      J–ZBI_8 を用いて主介護者の介護負担感を示した。主介護者の年齢が50歳以上の者より50歳未満の者の方が介護負担を強く感じており,また保護者に比べて配偶者の方が,介護負担感が高い傾向があることが確認された。脳損傷者の外出の頻度や歩行能力と介護負担感の関係は認められなかったが,感情のコントロールが難しい障害がある脳損傷者の介護をする場合,主介護者は介護負担を強く感じている傾向が確認された。
    結論 脳損傷者の外出における主介護者の介護負担感を軽減するためには,脳損傷者の外出に関するリハビリテーションを実施し,能力の向上に努めることが重要である。さらに,主介護者が介護士など安心して他者へ頼ることができるような社会資源の充実が求められる。
  • 酒井 優, 永田 智子, 渡邊 麻衣子, 臺 有桂, 星 美佐子, 村嶋 幸代
    2012 年 59 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 農村•山間地域の在宅前期高齢者の膝関節痛有症率を把握し,膝関節痛予防•改善のための保健行動を性別に明らかにすること,保健行動に関連する要因を把握することを目的とした。
    方法 福島県南会津町に居住する65~74歳の地域在住高齢者2,758人を対象に,2008年11月に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,基本属性,ライフスタイル関連項目(喫煙,飲酒,農作業,除雪,友達との“お茶のみ”),通院状況,膝関節痛の有無や罹患期間,日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM),保健行動に関する項目であった。
    結果 有効回答は1,415票であった(有効回答率51.3%)。膝関節痛有症者は496人(35.1%)で,女性は男性の約 2 倍の有症率であった。膝関節痛のある者の特徴として,Body Mass Index が高いこと,運動機能低下のリスクがあること,外出頻度が少ないこと,通院していることが挙げられた。膝関節痛予防•改善のために何らかの保健行動をとっている人は657人(46.3%)であり,膝関節痛あり群で有意に多かった。保健行動をともにとる人や保健行動の情報源としては,「お茶のみ友達」が女性で多く,「家族」は男性で多かった。行動の内容をみると,「歩く」は男性で,「体操」や「食事に気をつける」は女性で多かった。膝関節痛ありの女性では,非喫煙者•農作業実施者•“お茶のみ”ありで保健行動の実施率が高かった。膝関節痛なしの男性では,非喫煙者•JKOM 下位尺度の「痛みとこわばり」,「健康状態」が悪い者で保健行動の実施率が高かった。膝関節痛なしの女性では,独居や夫婦二人暮らし,外出頻度が週 1 回以上の者で保健行動の実施率が高かった。
    結論 本研究における膝関節痛の有症率は山間部高齢者における先行研究に近い値であった。性別•膝関節痛の有無別に,保健行動の内容,共同実施者,情報源,行動実施に関連する要因が異なっていたことから,対象に応じてアプローチ方法を工夫する必要があること,非専門職からの情報入手が多いことから,保健行動の留意点等を丁寧に伝える必要があることが示された。
  • 上村 義季, 小嶋 雅代, 永谷 照男, 今枝 奈保美, 鈴木 貞夫
    2012 年 59 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 若年期は飲酒習慣の形成において重要な時期であり,結婚•妊娠•出産を将来に控えた若年女性が飲酒に関する正しい知識と節度ある飲酒習慣を獲得することは,公衆衛生上重要な課題である。若年女性の飲酒の問題とその対策を考える基礎資料を得ることを目的とし,本研究を実施した。
    方法 愛知県内の大学に通う女子大学生を対象に,飲酒に対する意識と知識について,問題飲酒者のスクリーニングツールである AUDIT を含む自記式質問紙を用いた調査を実施した。976人から協力が得られ,不適切回答を除く902人分を解析対象とした。
    結果 対象者は年齢20.2±1.3(平均±SD)歳で,うち274人(全体の30.4%)が未成年者であった。非飲酒者(全く飲まない人)の割合は未成年者の方が多かったが(成人10.4%,未成年者31.4%),非飲酒者を除外すると,飲酒頻度,一回平均飲酒量のいずれも成人と未成年者間で差はなかった。一気飲みの経験,飲酒による体の不調が「よくある」または「たまにある」と回答した飲酒者は,一気飲みについては18.3%,体の不調は31.3%であった。全体の過半数(54.8%)が飲酒に伴う不愉快な経験をしていた。適度な飲酒量を問う質問については全体の62.7%が正しく答えていたが,飲酒量が多いものほど多く回答する傾向がみられた。AUDIT の得点は,ひとり暮らし,初飲年齢が若い,運動系部サークルに所属する人で高く,11点以上(問題飲酒の疑いあり)の人は62人(全体の6.9%,飲酒者の8.2%)いた。
    結論 若年女性が一気飲みをする機会は20年前と比較して減っているが,飲酒による体調不良経験者の割合は増えており,飲酒に伴う迷惑行為の経験者も過半数を占めることが確認された。若者がマナーを守り,自分の限度を超えた飲酒を行わない意思を自発的に養っていけるような保健教育および社会環境の整備が望まれる。
資料
  • 清水 裕子, 望月 宗一郎
    2012 年 59 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 一次救命処置(BLS)•自動体外式除細動器(AED)の技術習得と実施に関連した学校教職員の認識を明らかにすることを目的とした。
    方法 A 県内の中学校 2 校•高等学校 2 校の全 4 校の教職員計192人を対象に無記名自記式質問紙留め置き調査を行った。調査項目は,対象の属性のほか,BLS の講習受講状況や技術習得に関する認識,AED の設置状況,AED 技術習得状況等であった。
    結果 有効回答は160人(83.3%)であった。男性91人(56.9%),女性69人(43.1%)で,勤務先は中学校が52人(32.5%),高等学校が108人(67.5%)であった。BLS に関する講習を過去に受講したことのある者は144人(90.0%)で,AED の講習は105人(65.6%)が受講していた。BLS 技術を「習得できていない」と認識している者は39人(24.4%)で,BLS 実施に対し「不安や心配がある」者は140人(87.6%)であった。所属校に AED が設置されていると回答した156人(97.5%)のうち,AED の設置場所を把握していなかった者は 3 人(1.9%)であった。BLS と AED の講習については,「教員」が教員以外の者より有意に参加していた。学校主催の今年度の取り組みへの参加状況については,「教員」と「運動部顧問」が,それ以外の者より有意に参加していた。BLS の技術を習得できていると認識している者の割合は,「養護教諭•体育科教諭等の専門教員」,「教員」,「BLS 講習受講者」,「急変時遭遇者」が,各々それ以外の者よりも有意に多かった。「専門教員」はそれ以外の者よりも,BLS 実施に対し不安を抱える者が有意に少なかった。
    結論 BLS の技術習得に対する認識や BLS 実施に対する不安については,対象の属性で差がみられ,教員以外の職員や BLS 講習の未受講者はその認識が低かった。また,BLS 講習を受けたことのない者や勤務先の AED の設置場所を把握していない者も実在した。今後は,全教職員が正確な知識を持ち,緊急時に迅速かつ的確に対応できるよう,学校全体で組織的に取り組む必要性が示唆された。また,BLS や AED に関する知識や技術を習得しているという意識が高まることで,それを必要とする場面に遭遇した際の不安が軽減されるのではないかと考えられた。
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