日本公衆衛生雑誌
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一次救命処置(BLS)・自動体外式除細動器(AED)の技術習得と実施に関連した学校教職員の認識
清水 裕子望月 宗一郎
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2012 年 59 巻 1 号 p. 39-45

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抄録

目的 一次救命処置(BLS)•自動体外式除細動器(AED)の技術習得と実施に関連した学校教職員の認識を明らかにすることを目的とした。
方法 A 県内の中学校 2 校•高等学校 2 校の全 4 校の教職員計192人を対象に無記名自記式質問紙留め置き調査を行った。調査項目は,対象の属性のほか,BLS の講習受講状況や技術習得に関する認識,AED の設置状況,AED 技術習得状況等であった。
結果 有効回答は160人(83.3%)であった。男性91人(56.9%),女性69人(43.1%)で,勤務先は中学校が52人(32.5%),高等学校が108人(67.5%)であった。BLS に関する講習を過去に受講したことのある者は144人(90.0%)で,AED の講習は105人(65.6%)が受講していた。BLS 技術を「習得できていない」と認識している者は39人(24.4%)で,BLS 実施に対し「不安や心配がある」者は140人(87.6%)であった。所属校に AED が設置されていると回答した156人(97.5%)のうち,AED の設置場所を把握していなかった者は 3 人(1.9%)であった。BLS と AED の講習については,「教員」が教員以外の者より有意に参加していた。学校主催の今年度の取り組みへの参加状況については,「教員」と「運動部顧問」が,それ以外の者より有意に参加していた。BLS の技術を習得できていると認識している者の割合は,「養護教諭•体育科教諭等の専門教員」,「教員」,「BLS 講習受講者」,「急変時遭遇者」が,各々それ以外の者よりも有意に多かった。「専門教員」はそれ以外の者よりも,BLS 実施に対し不安を抱える者が有意に少なかった。
結論 BLS の技術習得に対する認識や BLS 実施に対する不安については,対象の属性で差がみられ,教員以外の職員や BLS 講習の未受講者はその認識が低かった。また,BLS 講習を受けたことのない者や勤務先の AED の設置場所を把握していない者も実在した。今後は,全教職員が正確な知識を持ち,緊急時に迅速かつ的確に対応できるよう,学校全体で組織的に取り組む必要性が示唆された。また,BLS や AED に関する知識や技術を習得しているという意識が高まることで,それを必要とする場面に遭遇した際の不安が軽減されるのではないかと考えられた。

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© 2012 日本公衆衛生学会
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