日本公衆衛生雑誌
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原著
自覚ストレスと循環器疾患死亡との関連 大崎国保コホート研究
木幡 映美寳澤 篤柿崎 真沙子遠又 靖丈永井 雅人菅原 由美栗山 進一辻 一郎
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2012 年 59 巻 2 号 p. 82-91

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抄録

目的 これまでに,心理的ストレスは循環器系へ影響することが示唆されてきたが,自覚ストレスと循環器疾患死亡との関連についての前向きコホート研究では,結果が一致していなかった。本研究では,飲酒状況および喫煙状況について層別化し,結果について検証する。
方法 1994年,宮城県大崎保健所管内に居住する,40歳から79歳までの国民健康保険(国保)加入者全員(54,996人)へ自記式質問票を配布した。このうち,追跡開始までに国保から異動した者,がん•心筋梗塞•脳卒中の既往者,自覚ストレスに関する質問に無回答であった者を除外した,45,293人(男性21,552人,女性23,741人)を対象とした。1995年から12年間追跡したところ,循環器疾患死亡は1,751人,うち男性994人,女性757人で確認された。Cox 比例ハザードモデルを用いて,自覚ストレスが少ない群を基準とした,他の群の循環器疾患死亡のリスクのハザード比と95%信頼区間(95%CI)を算出した。
結果 自覚ストレスと循環器疾患死亡との関連について,男性では,自覚ストレスが多い群では少ない群に対し,多変量補正ハザード比(95%CI, P for trend)は,1.43 (1.19–1.87, P=0.006)であり,有意な正の関連が観察されたが,女性では関連は観察されなかった。次に,喫煙状況および飲酒状況について層別化解析を行ったところ,男性では,多変量補正ハザード比(95%CI, P for trend)は,現在喫煙者では1.76 (1.28–2.41, P=0.001),現在飲酒者では1.56 (1.16–2.09, P=0.006),女性でも,各々,1.61 (1.20–2.16, P=0.004), 1.42 (1.08–1.87, P=0.001)であり,男女とも有意な正の関連が認められた。さらに,男性では現在喫煙者であり,現在飲酒者である場合,多変量補正ハザード比は,自覚ストレスの多い群では,少ない群と比較してほぼ 2 倍上昇し,より顕著な正の関連が認められ,有意であった(P for trend<0.001)。しかし,有意な交互作用が認められたのは,男性の喫煙習慣についてのみであった(P for interaction=0.04)。
結論 現在喫煙者および現在飲酒者では,男女とも有意な正の関連が認められたことから,自覚ストレスと循環器疾患死亡との関連についての男女差は,現在喫煙者および現在飲酒者の割合の男女差により説明される可能性がある。本研究の結果は,ストレス解消の手段としての喫煙習慣や飲酒習慣の見直し,あるいはストレスマネジメントや喫煙,飲酒に対する支援の強化を意味するものと考えられる。

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© 2012 日本公衆衛生学会
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