日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
足湯からのレジオネラ属菌の分離状況
古畑 勝則枝川 亜希子福山 正文
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キーワード: レジオネラ属菌, 足湯, 分離
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2012 年 59 巻 5 号 p. 333-338

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抄録

目的 近年,全国各地に急増している温泉水を利用した足湯を対象にレジオネラ属菌の生息状況を把握することを目的とした。
方法 2009年 3 月から2011年11月にかけて全国37都道府県の温泉水を利用した足湯を採取した。レジオネラ属菌の分離同定は「第 3 版レジオネラ症防止指針」に準拠した。すなわち,試料を濃縮後,酸処理を行ってから GVPCα 寒天培地に塗抹し,36℃で 7 日間培養した。グラム陰性の長桿菌で,システイン要求性の菌株をレジオネラ属菌とした。イムノクロマトグラフィーを用いて一次同定後,免疫血清凝集反応あるいは遺伝子学的試験により菌種を同定した。
結果 足湯からのレジオネラ属菌の分離状況は,全体では196試料中56試料(28.6%)から分離され,北海道から九州まで全国各地の足湯に広く生息していることが明らかになった。足湯の設置場所別ではホームを含む駅周辺で40.9%と最も高率に分離された。足湯100 ml 当たりのレジオネラ属菌数は,1.0×101 CFU から最高1.0×104 CFU であったが,102 CFU 未満が34試料(60.7%)と最も多かった。分離菌種では Legionella pneumophila が優占種であり,なかでも 1 群が16株(23.9%)と高頻度に分離された。このほか,Legionella londiniensis が 7 株(10.4%),Legionella rubrilucens が 4 株(6.0%)あった。
結論 全国各地に設置された温泉利用の足湯において約30%にレジオネラ属菌が生息していることが明らかとなった。菌数は少ないものの,レジオネラ症の重要な原因菌である Legionella pneumophila が優占していることからレジオネラ症が発生する可能性は否定できない。各施設においては,レジオネラ属菌の現状把握とともに,衛生的維持管理の継続が必要である。

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