目的 地域社会で生じる転倒や転倒による骨折に関連する各種要因について縦断的に分析し,さらに転倒の経験が,高齢者のその後の生存に影響を与えるかどうかを明らかにすることを研究目的とした。
方法 2001年 9 月に実施された施設入所者を除く A 市在住高齢者全員(16,462人)を対象とした郵送法による自記式質問紙調査に回答し,さらに2004年 9 月の再調査に回答し2007年 8 月まで転居しなかった8,285人を分析対象とした。2004年 9 月の再調査前 1 年間に生じた転倒,転倒による骨折に影響を与えた2001年の要因に関し統計学的分析を行った。さらに転倒の経験がその後の高齢者の生存に与えた影響について,Cox 比例ハザード分析による生存分析を行った。
結果 転倒状況についてもれなく回答が得られたのは6,420人(男性3,127人,女性3,293人)で,転倒率,転倒による骨折率は,男性16.4%,2.1%,女性27.8%,6.2%と女性に高率であった(
P<0.001)。また転倒率は男女とも,年齢階層の上昇とともに増加する傾向を示した。転倒,転倒による骨折に影響する因子に関する多重ロジスティック回帰分析の結果,転倒には外出頻度以外すべての因子が統計学的に有意に(
P<0.001)関連した。性別,年齢階層以外でもっとも強く関連したのは痛みで(OR, 1.75)体に痛み部位があると転倒しやすかった。また IADL の低下があると(OR, 1.45),主観的健康感が低下していると(OR, 1.42),治療中の病気があると(OR, 1.35)転倒しやすかった。骨折には性別,年齢層以外では,痛み部位があると(OR, 1.85),IADL 不能があると(OR, 1.61)骨折しやすかった。2007年までの生存には転倒が関連し,ハザード比は男性(1.94),女性(1.43)と男女共に転倒を経験すると生存が保たれなかった。
結論 地域在住高齢者においては,加齢,体の痛みや病気の出現,IADL や主観的健康感の低下が,その後の転倒の発生と関連していた。また転倒の経験は,その後の生存に関連することが示された。
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