日本公衆衛生雑誌
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原著
妊娠中の喫煙が子どもの肥満に及ぼす影響の生存時間解析による検討
鈴木 孝太佐藤 美理安藤 大輔近藤 尚己山縣 然太朗
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キーワード: 妊娠, 喫煙, 小児肥満, 生存解析
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2012 年 59 巻 8 号 p. 525-531

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抄録

目的 国内外の多くの研究によって,母親の妊娠中の喫煙が小児の肥満につながっていることが示されている。しかし,多くの研究は,肥満の評価を小児の 1 時点で行っており,継時的にその変化をみた研究は少ない。本研究では,妊娠中の喫煙が 3 歳から小学校 4 年生までの間に肥満となることと関連しているかどうかを,生存曲線を用いた解析によって検討することを目的とした。
方法 山梨県甲州市で行われている甲州市母子保健長期縦断調査(甲州プロジェクト)のデータを用いて,1991年 4 月 1 日から1999年 3 月31日の間に,山梨県甲州市(旧塩山市)において出生し,母親の妊娠初期から追跡可能だった児およびその母親を研究対象者とした。妊娠届出時に母親が回答した自記式の質問票から妊娠中の喫煙状況を調査し,また,幼児健診と小学校における健診データから,3 歳から小学校 4 年生まで,1 年ごとの身体データを抽出した。小児の国際的な基準を用いた,「過体重および肥満」(成人の Body Mass Index (BMI) 25に相当)と,「肥満」(成人の BMI30に相当)のそれぞれのカテゴリに,3 歳から小学校 4 年生までの間に分類されるかどうかを,母親の妊娠中の喫煙状況ごとに Kaplan-Meier 曲線を描き,また Cox 比例ハザードモデルによるハザード比を算出することで検討した。
結果 妊娠届出時から追跡可能だった1,628人のうち,妊娠届出時の喫煙状況,3 歳児健診以降,1 年ごとに測定されている体重データのうち最低 1 つが存在している1,428人(追跡率87.7%)のデータを用いて Kaplan-Meier 曲線を描いたところ,母親の妊娠中の喫煙が 3 歳から小学校 4 年生(9–10歳)の間に「肥満」のカテゴリに分類されることと有意に関連していた(P<0.001)。また,Cox 比例ハザードモデルを用いて,すべての変数に欠損値がない1,204人(追跡率74.0%)を対象に解析を行ったところ,「妊娠中の喫煙」について,3 歳から小学校 4 年生(9–10歳)の間に「肥満」となることと有意な関連を認めた(ハザード比2.0,95%信頼区間1.04–4.0)。
結論 今回の研究結果は,妊婦に対する禁煙指導において,禁煙の重要性を説くための根拠として示すことが可能であり,妊婦の喫煙率の低下,さらには小児の肥満予防へとつなげていくことが,公衆衛生活動,とくに母子保健事業の中で期待される。

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© 2012 日本公衆衛生学会
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