日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
都市部公営団地に在住する健康相談未利用者における健康相談の必要性に関する認識とその関連要因の検討
福井 小紀子乙黒 千鶴石川 孝子藤田 淳子秋山 正子
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2013 年 60 巻 12 号 p. 745-753

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抄録

目的 高齢化率48.4%の東京都 A 区 B 地域の大規模公営団地に在住する健康相談未利用者を対象に,健康相談の必要性の認識とその関連要因を検討する。
方法 2011年12月,B 地域の全3,000世帯6,000人から無作為抽出した2,000世帯における最も高齢の者2,000人を対象に,無記名自記式質問紙のポスティング調査を行い,郵送により返答を得た。調査項目は,健康相談の必要性に関する認識(5 段階評価),および基本属性,生活状況,医療介護状況,健康相談に関する懸念と希望とし,健康相談の必要性の認識とこれらとの関連を順序ロジスティック回帰分析にて検討した。
結果 553例(回収率27.7%)の対象から回答が得られ,このうち地元の健康相談の未利用者534人を分析対象とした。健康相談の必要性は,とても必要である21.5%,まあ必要である38.2%,どちらともいえない19.1%,あまり必要でない14.0%,全く必要ない6.9%であった。この必要性の認識の高さと有意な関連を示した要因として,基本属性,生活状況,医療介護状況のうち,日常生活動作が自立していない(P=.03),家族関係にストレスがある(P=.003),気軽に相談できる医療者として看護師がいる(P=.04),健康について相談したい医療者は必ず医師でなくても良いと考えている(P<.001),医師に質問•疑問を遠慮してできない(P=.007),および地元の健康相談を知っている(P=.02)が挙げられた。さらに,上記項目を調整因子として加えた上で健康相談に関する懸念と希望との関連を分析した結果,知人や家族と一緒なら利用したい(P=.002),1 対 1 で相談できるなら利用したい(P=.003),無料なら利用したい(P=.008),病気の相談を希望する(P<.001),医療費•介護費の相談を希望する(P=.008),および他の利用者との交流の場の確保を希望する(P<.001)場合に,健康相談の必要性の認識が有意に高いことが示された。
結論 本研究により,回収率は低かったが,都市部公営団地住民の多くは健康相談の必要性を高く認識している可能性が示唆された。とくに,家族関係にストレスを抱え,医師に対して遠慮を感じる一方,健康相談者として看護師の役割を捉えている対象は,より高く健康相談の必要性を認識していた。このことから,看護師の関与する健康相談の普及とその周知が有用な一方策となることが示唆された。また,支援の提供形態として,知人と一緒に来訪可能なルートの確保と個別および無料の支援提供の継続が重要な要素となること,さらに,医療専門的な助言と一般の人々との交流という 2 側面が期待されていることが示された。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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