日本公衆衛生雑誌
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原著
「子育ての社会化」についての研究 ソーシャル・キャピタルの視点を用いて
山口 のり子尾形 由起子樋口 善之松浦 賢長
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2013 年 60 巻 2 号 p. 69-78

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抄録

目的 地域社会全体で子育てに取り組む意識としての「子育ての社会化」の構成概念を明らかにし,その「子育ての社会化」意識・行動と「地域に対する評価」,「ソーシャル・キャピタルの認識」との関係について明らかにする。
方法 調査Iでは,「子育ての社会化」に関連する文献検討により 7 つの構成概念を仮説として考え,その構成概念を表す58項目を作成し,A 町の20~60歳未満の女性227人を対象に自記式質問紙調査を行った。分析方法は,最尤法,バリマックス回転を用いた因子分析を実施し,クロンバックの α 係数を算出した。調査IIでは,調査Iで得られた「子育ての社会化」意識・行動を示す32項目と「地域に対する評価」15項目,「ソーシャル・キャピタルの認識」10項目について,B 市内の C 中学校区に居住する,就学前の子どもを持つ母親353人,小学生を持つ母親325人,45~60歳未満の壮年期女性383人,計1,061人を対象に自記式質問紙調査を行った。3 つの指標の関係を重回帰分析と共分散構造分析を用い検討した。
結果 調査Iでは,有効回答148件を分析対象とし,「子育ての社会化」意識・行動の構成概念として,「地域共同子育て意識」,「子育て支援行動」,「子育て交流意識」,「ボランティア意識」,「公的扶助意識」,「子ども育成態度」,「地域へのまなざし」,「支え合い意識」の 8 因子32項目が抽出された。調査IIでは,有効回答375件を分析対象とし,「子育ての社会化」意識・行動を従属変数とし,「ソーシャル・キャピタルの認識」,「地域に対する評価」を独立変数とした重回帰分析の結果,「ソーシャル・キャピタルの認識」が「子育ての社会化」意識・行動に与えている影響は,有意であった。共分散構造分析の結果,「ソーシャル・キャピタルの認識」と「地域に対する評価」は,独立した関係であると仮定したモデルの適合度が高かった。「子育ての社会化」意識・行動を従属変数とし,「ソーシャル・キャピタルの認識」の下位尺度である「信頼」,「社会参加」,「つきあい・交流」を独立変数とした重回帰分析の結果,「つきあい・交流」が「子育ての社会化」意識・行動に与えている影響が有意であることが明らかになった。
結論 「子育ての社会化」意識・行動に影響する要因として,母親や地域住民の「ソーシャル・キャピタルの認識」が関連していることが示され,その中でも「つながり・交流」が影響していることが明らかになった。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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