日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
研究ノート
独居高齢者見守りサービスの利用状況と利用意向
小池 高史深谷 太郎野中 久美子小林 江里香西 真理子村山 陽渡邊 麗子新開 省二藤原 佳典
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 60 巻 5 号 p. 285-293

詳細
抄録

目的 独居高齢者の安心・安全を目的とした見守りサービスの利用状況と利用意向およびそれらに関連する要因について検討する。
方法 2011年 9 月,東京都大田区 A 地区において,65歳以上の高齢者のうち,住民基本台帳上,単身世帯の2,569人全員を対象に質問紙を郵送し,1,743人(回収率67.8%)から質問紙を回収した。このうち分析には,実際には独居でない高齢者は除外し,実際に独居であった1,095人のデータのみ用いた。見守りサービスの利用状況や利用意向を従属変数とする,ロジスティック回帰分析を行い,見守りサービスの利用の有無や利用意向の有無に関連する要因を調べた。独立変数として,性別,年齢,既往歴(脳卒中,心臓病,肝臓病,癌)の有無,近隣に住む別居子の有無,生活機能,外出頻度,家族や友人との交流頻度,近所付き合いの程度,孤立感,孤独感,主観的経済状態,精神的自立度,将来への不安感,就学年数を取り上げた。
結果 独居高齢者の見守りサービスの利用者は,緊急通報124人(11.3%),緊急連絡先登録197人(18.0%),人的見守り113人(10.3%),センサー見守り51人(4.7%)であった。また,利用意向のあった人は,緊急通報525人(全体の47.9%,非利用者の81.4%),緊急連絡先登録396人(全体の36.2%,非利用者の75.1%),人的見守り357人(全体の32.6%,非利用者の60.0%),センサー見守り335人(全体の30.6%,非利用者の53.1%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,高齢であることや既往歴のあることが,見守りサービスの利用の有無と関連があった。サービスを利用していない人においては,将来への不安感が高いことがすべての見守りサービスへの利用意向の有無と関連していた。
結論 独居高齢者見守りサービスのうち,普段の生活や安否状況を見守るサービスよりも,病気や事故などの緊急時に対応するサービスのほうが利用率や利用意向が高くなる傾向があった。既往歴がある人には見守りサービスが利用されやすく,不安感の高い人は今後の利用を希望しやすいことが示唆された。しかしながら,各見守りサービスの利用率は,低い水準に留まっていることが明らかになった。今後,より多くの独居高齢者に対して,見守りサービスの利用を広げていくことが課題となる。

著者関連情報
© 2013 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top