日本公衆衛生雑誌
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60 巻 , 5 号
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原著
  • 井戸田 一朗, 星野 慎二, 沢田 貴志, 佐野 貴子, 上田 敦久, 加藤 真吾, 今井 光信
    2013 年 60 巻 5 号 p. 253-261
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 かながわレインボーセンター SHIP が実施した,men who have sex with men(MSM)向けの human immunodeficiency virus(HIV)および sexually transmitted infections(STIs)検査相談を受検した MSM の特徴と陽性率を明らかにし,その HIV 罹患率を推定する。
    方法 2008年 1 月から2011年12月の間に,当センターで実施した夜間無料匿名即日 HIV/STIs 検査相談のべ585件(449人)に対し,585件の検査記録および受検者に対して実施した筆記アンケートのデータを分析した。HIV/STIs 検査には,ダイナスクリーン®による HIV 抗体,Treponema pallidum 抗体,HBs 抗原の迅速検査を用いた。複数回受検した82人の MSM を対象に,人年法により HIV 罹患率を算出した。
    結果 当センターにおける検査相談を新規に受検した MSM は423人で,最多年齢層は25–29歳代24.6%,神奈川県内居住者は78.5%,生涯で初めて HIV 検査を受検した者は30.5%であり,過去 6 か月のアナルセックスにおけるコンドーム常用率は44.9%であった。検査結果が陽性であったのは,HIV 13人(3.1%),梅毒 TP 抗体43人(10.2%),HBs 抗原 7 人(1.7%)であった。新規に受検した MSM の中で,その後複数回にわたり受検した MSM は,再受検しなかった MSM と比較し,年齢層,居住地,HIV 検査の受検経験有無,コンドーム常用率に有意差を認めなかった。複数回受検した MSM は82人であり,HIV 罹患率は,1.00/100人年(95%信頼区間:0.00–5.58)であった。HIV 陽性者全員がエイズ治療の拠点病院に受診したことを確認した。
    結論 神奈川県内に在住し HIV/STIs 感染リスクを有する MSM が,当センターにおける検査相談を利用した。HIV 陽性率は,従来の都市部における MSM 向けの HIV/STIs 検査イベントでの陽性率と同等で,保健所での陽性率に比べて高かった。HIV 罹患率は,MSM 向け HIV/STIs 検査イベントにおける陽性率およびエイズ発生動向年報を用いて推定した報告の値と同等であった。HIV/STIs 感染リスクの高い MSM を対象とした HIV 検査機会を保健所以外に確保し継続することは,他の都市部においても有用であると考えられた。
  • 新開 省二, 渡辺 直紀, 吉田 裕人, 藤原 佳典, 西 真理子, 深谷 太郎, 李 相侖, 金 美芝, 小川 貴志子, 村山 洋史, 谷 ...
    2013 年 60 巻 5 号 p. 262-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 わが国の高齢者に適用できる簡便な虚弱指標はいまだ提案されていない。本研究は,要介護リスクのスクリーニング尺度として著者らが開発した『介護予防チェックリスト』を虚弱指標として用いることの妥当性を検討した。
    方法 群馬県草津町の65歳以上住民を対象に実施された高齢者健診(2007年 5 月)を受診した612人のうち,すべてのデータがそろった526人を解析対象とし,Fried らの虚弱を外的基準として介護予防チェックリスト(CL と略す)の併存的および構成概念妥当性を検討した。次に,同町の70歳以上全高齢者1,039人を対象に実施された訪問面接調査(2001年10–11月,初回調査)に応答した916人を 4 年 4 か月追跡し,追跡期間中の ADL 障害や介護保険サービス利用の有無および生死を調べ,初回調査における CL への回答状況とこれらアウトカムとの関連性について,性,年齢および comorbidity の有無を調整して分析し,CL の予測的妥当性を検討した。
    結果 CL のカットオフ・ポイントを 3 点/4 点とした場合,Fried らの虚弱に対する感度,特異度は70.0%,89.3%であった。CL 得点が高くなるほど虚弱の該当率が上昇し,その傾向性は統計学的に有意であった(P<0.001)。また,多特性・多方法による分析では,CL の 3 つの構成概念(閉じこもり,転倒,低栄養)は,Friedらの虚弱の 5 つの構成概念のうち Shrinking, Exhaustion, Low activity, Slowness の 4 つとの間に,CL の 3 つの構成概念相互の相関性を上回る相関性を示したが,Weakness との相関性はそれを下回った。CL 得点が 4 点以上群の 3 点以下群に対する 2 年後,4 年後の ADL 障害の多変量調整オッズ比は,5.25(95%信頼区間:2.79–9.89),3.42 (1.79–6.54)であった。同様に,追跡期間中の介護保険サービス利用の開始または死亡の多変量調整ハザード比は,3.50(2.41–5.07)および2.43(1.70–3.47)であった。
    結論 構成概念妥当性に課題を残すものの,『介護予防チェックリスト』を虚弱指標として用いることの併存的および予測的妥当性が示された。同チェックリストは15項目の質問から成る簡便な尺度であり,今後わが国の高齢者の虚弱に関する疫学研究や予防的介入での活用が期待される。
  • 鳩野 洋子, 鈴木 浩子, 真崎 直子
    2013 年 60 巻 5 号 p. 275-284
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 市町村において保健師の分散配置が進む中,市町村統括保健師の役割の遂行状況を測定できる尺度を開発し,その信頼性・妥当性を検証することを目的とした。
    方法 インタビューから質的帰納的に整理した尺度試案について,エキスパートに内容妥当性の検討を依頼して修正した17項目の尺度案について,東北 3 県を除いた全市町村(1,621か所)の統括保健師もしくは保健師の中で最も高い職位を有する保健師に対して自記式質問紙調査を行った。
    結果 1,036通の回収が得られ,931通を分析に用いた(有効回収率57.4%)。このうち,統括保健師ありは406件であった。項目分析の結果 1 項目を削除し,主成分分析を行った上で,主因子法,プロマックス回転による因子分析を行った。複数の因子に高い負荷量を持つ 1 項目を削除し15項目 3 因子を採用し尺度とした。累積寄与率は56.1%であった。3 因子は【自治体全体の保健活動の推進】,【職能代表としての調整の遂行】,【部下の保健師の能力開発】と命名した。
    市町村統括保健師役割遂行尺度(RMSP: Role scale of municipal supervising public health nurses)全体の信頼性係数は折半法(spearman-brown の公式)で0.84,Cronbach's α 係数で0.91であり,内的整合性が確認された。妥当性の検討として,既存の管理的能力を測定する尺度得点,統括保健師としての役割意識の強さ,統括保健師としての自信との相関をみたところ,有意な相関(P<0.01)を示した。また職位別,保健師経験年数別に統括保健師をおいていない分散配置の自治体の回答と比較したところ,ほとんどの場合において統括保健師ありの群の得点が高かった。
    結論 開発した尺度は統括保健師の役割の遂行状況を測定する尺度としての信頼性・妥当性を有すると考えられた。
研究ノート
  • 小池 高史, 深谷 太郎, 野中 久美子, 小林 江里香, 西 真理子, 村山 陽, 渡邊 麗子, 新開 省二, 藤原 佳典
    2013 年 60 巻 5 号 p. 285-293
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 独居高齢者の安心・安全を目的とした見守りサービスの利用状況と利用意向およびそれらに関連する要因について検討する。
    方法 2011年 9 月,東京都大田区 A 地区において,65歳以上の高齢者のうち,住民基本台帳上,単身世帯の2,569人全員を対象に質問紙を郵送し,1,743人(回収率67.8%)から質問紙を回収した。このうち分析には,実際には独居でない高齢者は除外し,実際に独居であった1,095人のデータのみ用いた。見守りサービスの利用状況や利用意向を従属変数とする,ロジスティック回帰分析を行い,見守りサービスの利用の有無や利用意向の有無に関連する要因を調べた。独立変数として,性別,年齢,既往歴(脳卒中,心臓病,肝臓病,癌)の有無,近隣に住む別居子の有無,生活機能,外出頻度,家族や友人との交流頻度,近所付き合いの程度,孤立感,孤独感,主観的経済状態,精神的自立度,将来への不安感,就学年数を取り上げた。
    結果 独居高齢者の見守りサービスの利用者は,緊急通報124人(11.3%),緊急連絡先登録197人(18.0%),人的見守り113人(10.3%),センサー見守り51人(4.7%)であった。また,利用意向のあった人は,緊急通報525人(全体の47.9%,非利用者の81.4%),緊急連絡先登録396人(全体の36.2%,非利用者の75.1%),人的見守り357人(全体の32.6%,非利用者の60.0%),センサー見守り335人(全体の30.6%,非利用者の53.1%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,高齢であることや既往歴のあることが,見守りサービスの利用の有無と関連があった。サービスを利用していない人においては,将来への不安感が高いことがすべての見守りサービスへの利用意向の有無と関連していた。
    結論 独居高齢者見守りサービスのうち,普段の生活や安否状況を見守るサービスよりも,病気や事故などの緊急時に対応するサービスのほうが利用率や利用意向が高くなる傾向があった。既往歴がある人には見守りサービスが利用されやすく,不安感の高い人は今後の利用を希望しやすいことが示唆された。しかしながら,各見守りサービスの利用率は,低い水準に留まっていることが明らかになった。今後,より多くの独居高齢者に対して,見守りサービスの利用を広げていくことが課題となる。
  • 稲垣 宏樹, 井藤 佳恵, 佐久間 尚子, 杉山 美香, 岡村 毅, 粟田 主一
    2013 年 60 巻 5 号 p. 294-301
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 本来 6 件法である日本語版 WHO–5 精神健康状態表(以下,WHO–5–J)を,4 件法で評価する簡易版(Simplified Japanese version of WHO–Five well-being index,以下,S–WHO–5–J)を作成し,信頼性と妥当性を検討した。
    方法 対象は東京都 C 区在住の65歳以上の高齢者4,439人。平均年齢および SD は74.2±6.6歳で,女性は2,475人(55.8%)であった。全員に対し自記式質問紙調査を郵送し,3,068票が回収された(回収率69.1%),このうち,S–WHO–5–J,GDS–15,年齢,性別,同居者の有無,介護状況,主観的健康感,痛み,主観的記憶障害,老研式活動能力指標,ソーシャルサポート,閉じこもり,経済状況の項目に欠損値のなかった1,356人(平均73.2±5.8歳,女性の比率51.1%)を分析対象とした。補足的分析として他調査における対象者2,034人の WHO–5–J のデータを用いて,欠損値数の比較を行った。
    結果 S–WHO–5–J は,1 因子構造が確認され,合計得点と項目との相関(0.79∼0.87),項目間の相関(0.52∼0.82),α係数(0.889)がともに高かった。また,既存の精神的健康尺度である GDS–15 や精神的健康項目との関連,精神的健康に影響すると考えられる諸要因,すなわち,身体機能(運動器,転倒,栄養,口腔),主観的記憶障害,日常生活の自立度,社会機能(閉じこもり,対人交流,ソーシャルサポート)との間に関連が認められた。加えて,補足的分析から,S–WHO–5–J では WHO–5–J よりも欠損値が少ないことが示された。
    結論 S–WHO–5–J は,十分な信頼性と妥当性を有していることが確認された。大規模な地域高齢者サンプルを対象に精神的健康を測定する尺度としてより利便性の高い尺度であると考えられた。
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