日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
公衆衛生活動報告
精神障がいの家族ピア教育プログラムの普及 「家族による家族学習会」のケーススタディ
蔭山 正子横山 恵子中村 由嘉子大嶋 巌
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 61 巻 5 号 p. 221-232

詳細
抄録

目的 家族は精神疾患について十分な学習の機会を必要とする。米国や香港に続き,本邦においても,精神障がいに関する家族ピア教育プログラム「家族による家族学習会」が開発された。本研究は,このプログラムの普及に関連する要因を明らかにし,普及戦略に役立てることを目的とする。
方法 ヘルスケア提供組織におけるイノベーション普及の理論枠組みを基盤としたケーススタディである。この枠組みは,個人と組織によるイノベーションの採用・継続プロセスについて外的環境を含めて捉える。プログラムを採用した家族会 3 か所に所属する家族15人のインタビューデータを分析した。このインタビューでは,家族の背景,プログラム採用の経緯,実施の経験が質問された。インタビューデータの逐語録から普及の理論枠組みに沿って記述部分を抜き出し,枠組みの要素ごとに分類し,3 か所の採用・継続プロセスを比較した。
結果 プログラムの採用には,精神障がい者家族会の会員減少・高齢化・方針転換の必要性といった危機感,それらの問題をプログラムが解決するだろうという予測,および,家族会を存続・変化させたいという強い意思が影響していた。プログラムに協力的な家族の存在と資金の確保がプログラムを採用するためには必要であり,関係機関職員からのサポートが採用の後押しとなっていた。参加者集めの困難といった継続の難しさがあったが,期待した効果が得られた事実を知り,参加者からの肯定的フィードバックを得ることでプログラムの継続につながっていた。
結論 精神障がい者家族会へのプログラム波及効果を説明することや,関係機関職員に助言,資金面の支援,参加者集めについて協力を求めることが今後の普及に有効であると考えられた。

著者関連情報
© 2014 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top