日本公衆衛生雑誌
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61 巻, 5 号
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公衆衛生活動報告
  • 全 有耳, 廣畑 弘, 弓削 マリ子, 渡邊 能行
    2014 年 61 巻 5 号 p. 212-220
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    目的 学校保健と地域保健が連携し,発達障害に起因する二次障害を含め思春期の児童の心の問題に対する支援体制のあり方を検討する。
    方法 平成21および22年度に実施した思春期心の健康支援方策検討事業の内容は①心と体の健康調査,②支援方策検討カンファレンス,③事後支援から成る。対象はモデル小学校の 5 年生計312人(21年度89人,22年度223人)。児童および保護者に心と体の健康調査票(子どもの強さと困難さアンケート25問および生活や心身の健康面に関する質問10問)への回答を求めた。支援方策検討カンファレンスでは,学校と保健所を含む地域の保健・福祉・教育・医療機関のスタッフが調査票への回答結果をもとに支援内容を検討し,必要に応じて個別の事後支援を実施した。
    結果 本事業への保護者同意のあった294人中,発達障害等に起因する困り感に対し個別的,専門的な事後の支援が必要とされた児童が30人(10.2%),その他友達関係がうまくいかない,不安が強い,生活習慣の乱れなど日々教師が気をつけて対応する必要のある児童が74人(25.2%)あった。一方,支援の必要度と児童の「体がだるいし元気がでない」,「理由もなくイライラする」,「好きなことでも楽しめない」,「悲しいつらいと感じる」等心身の不調面への回答には有意な関連を認めた。
    結論 支援が必要と考えられた児童のもつ問題点は軽微な問題を含め多様化しており,学校現場において発達障害児の二次障害の予防の視点のみならず,ひろくメンタルヘルス対策が必要であると考えられた。母子保健や精神保健対策を担う保健所は学校保健と連携し,児童期のメンタルヘルス対策を推進する必要があると考えられた。
  • 蔭山 正子, 横山 恵子, 中村 由嘉子, 大嶋 巌
    2014 年 61 巻 5 号 p. 221-232
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    目的 家族は精神疾患について十分な学習の機会を必要とする。米国や香港に続き,本邦においても,精神障がいに関する家族ピア教育プログラム「家族による家族学習会」が開発された。本研究は,このプログラムの普及に関連する要因を明らかにし,普及戦略に役立てることを目的とする。
    方法 ヘルスケア提供組織におけるイノベーション普及の理論枠組みを基盤としたケーススタディである。この枠組みは,個人と組織によるイノベーションの採用・継続プロセスについて外的環境を含めて捉える。プログラムを採用した家族会 3 か所に所属する家族15人のインタビューデータを分析した。このインタビューでは,家族の背景,プログラム採用の経緯,実施の経験が質問された。インタビューデータの逐語録から普及の理論枠組みに沿って記述部分を抜き出し,枠組みの要素ごとに分類し,3 か所の採用・継続プロセスを比較した。
    結果 プログラムの採用には,精神障がい者家族会の会員減少・高齢化・方針転換の必要性といった危機感,それらの問題をプログラムが解決するだろうという予測,および,家族会を存続・変化させたいという強い意思が影響していた。プログラムに協力的な家族の存在と資金の確保がプログラムを採用するためには必要であり,関係機関職員からのサポートが採用の後押しとなっていた。参加者集めの困難といった継続の難しさがあったが,期待した効果が得られた事実を知り,参加者からの肯定的フィードバックを得ることでプログラムの継続につながっていた。
    結論 精神障がい者家族会へのプログラム波及効果を説明することや,関係機関職員に助言,資金面の支援,参加者集めについて協力を求めることが今後の普及に有効であると考えられた。
研究ノート
  • 上田 由喜子, 清原 昭子
    2014 年 61 巻 5 号 p. 233-240
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    目的 食行動の変容につながる新たな教育方法を探るため,本研究ではラダリング法を用い,食物選択行動とその価値意識との関連を明らかにする。
    方法 はじめに,食物選択において重要と思う理由を階層的に捉えることができる,ラダリング法を用いたインタビューを実施した。対象は,企業等に就労の男性31人とした。次に,同じく企業等に就労の男性141人に,インタビュー調査の結果を基に作成した食物選択に関する自記式調査を実施した。併せて,年代,体重,身長,保健指導案内の有無についての項目も加え,回答が完全であった122人(有効回答率86.5%)を分析対象とした。インタビュー調査の結果は文字化し,食物選択の際に重要と考える要素を抽出し階層別に構造化した。食物選択と価値意識との関連については,テキストマイニングを用いて調査結果からキーワードを抽出し,次に各対象者が重視する理由の該当の有無を 2 値で示しコレスポンデンス分析を行った。さらに,年代の違いによる食物選択と価値意識の関連について共分散構造分析を行った。
    結果 インタビュー調査では,食物選択において重視する理由は,「味・嗜好」,「健康観」,「仕事への責任感」,「入手の容易さ」,「経済性」の 5 つに分類された。自記式調査では,40歳未満・40歳以上のどちらの年代においても,「時間がかからない」,「価格」,「健康・体に良い」・「栄養バランス」,「嗜好」・「お腹が満たされる」・「味」を重視する 4 つのグループに類型化された。
    結論 インタビュー調査結果に基づき作成した調査票を用いて,就労男性の食物選択行動に影響を及ぼす価値意識を明らかにし,また 4 つの行動パターンに類型化されることが示唆された。表層的ではないニーズや価値意識の発見は,健康に対する知識から行動意図へのアプローチの一助となると考えられる。
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