日本公衆衛生雑誌
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過疎地域における医療・介護関係者の終末期ケアの実態と連携に関する調査
藤田 淳子福井 小紀子岡本 有子
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2016 年 63 巻 8 号 p. 416-423

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抄録

目的 過疎地域の住民が最期まで地域で過ごせるための医療・介護のあり方への示唆を得ることを目的として,医療・介護関係者の終末期ケアの実態,在宅支援の実態および多職種連携の状況を明らかにした。

方法 A地域の医療・介護関係者398人(医療・介護・福祉の専門職,または,連携関連部署に所属する事務職で,かつ常勤であるものの総数)を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った。職種別,所属場所別(病院,施設,地域)に集計した。

結果 調査票の回収は,38機関より212人であった(回収率53.3%)。終末期ケアの実態として,過去1年間に終末期ケアを実施した割合は,職種別では,介護支援専門員(71.4%),介護福祉職(66.7%),医師(66.7%)が高かった。所属場所別では,病院と施設が約70%であるのに対し,地域は40%以下であった。在宅支援の実態については,回答者全体の70%以上が,何らかの在宅支援を実施し,かつ関心をもっていた。在宅支援の実施内容の1つである自宅訪問については,医師(77.8%)と介護支援専門員(90.5%)の実施割合が高かったが,その他の職種においても20~40%が実施し,また,所属場所別において病院や施設でも20~30%が実施していた。多職種連携については,7下位尺度で構成された顔の見える関係評価尺度を用いて測定した結果,下位尺度「多職種で会ったり話し合う機会」の得点が低く,「他施設の関係者とのやりとり」,「病院と地域の連携」の得点が他の下位尺度に比べ高い傾向にあった。

結論 終末期の医療・介護体制として,施設の介護福祉職を中心とした終末期ケア体制の構築,病院や施設からのサポートによる在宅支援の促進が可能な地域であると考える。また,多職種で会ったり話し合う場を作ることによるネットワークづくりが必要である。

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© 2016 日本公衆衛生学会
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