日本公衆衛生雑誌
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63 巻, 8 号
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原著
  • 齋藤 尚子, 山本 武志, 北池 正
    2016 年 63 巻 8 号 p. 397-408
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/27
    ジャーナル フリー

    目的 個人の健康と組織の生産性・業績が両立する健康職場の概念を参考に,健康を精神的健康,生産性・業績を仕事意欲とし,職場環境との関連を検討することにより,保健師が健康で意欲的に仕事ができる職場環境を明らかにする。

    方法 千葉県内41市町村保健部門の保健師363人に自記式質問紙調査を行った。精神的健康は精神健康調査票12項目版(GHQ-12),仕事意欲はモチベータ・モラールの質問項目を用いた。関連要因は,個人属性,職場特性,勤務状況(業務負担),職場環境とした。職場環境は,労働者全般の状況は「一般的な職場環境」とし快適職場調査(7領域35項目)を,保健師の状況は独自に作成した「保健師に関する職場環境」(25項目)を用いた。一般的な職場環境は領域ごと,保健師に関する職場環境は因子分析を行い因子ごとに集計した。精神的健康,仕事意欲は合計得点を基に2分し,各項目との関連をt検定,χ2検定で確認後,有意な関連がみられた項目はロジスティック回帰分析を行った。

    結果 有効回答215件を分析した(有効回答率59.2%)。職場環境の得点(得点が高いほど良好)は,一般的な職場環境では【社会とのつながり】,【人間関係】が高く,【キャリア形成・人材育成】は低かった。保健師に関する職場環境は,【同僚保健師同士のサポート】が高く,【相談・指導を受けられる環境】,【保健師活動への組織的な取り組み】は低かった。精神的健康には【社会とのつながり】(OR=2.86),【労働負荷】(OR=3.00),【保健師活動への組織的な取り組み】(OR=2.08)が関連していた。仕事意欲には【社会とのつながり】(OR=6.73),【保健師の判断・意見の反映】(OR=1.59)が関連していた。

    結論 精神的健康と仕事意欲の双方に,自分の仕事は社会的に意義があると感じられる職場環境が関連していた。このため,仕事の意義を感じられるよう目標を明確にし,活動成果を発信できる環境整備が必要である。

資料
  • 中原 由美, 柳 尚夫, 相田 一郎, 城所 敏英, 本保 善樹, 中本 稔, 中里 栄介
    2016 年 63 巻 8 号 p. 409-415
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/27
    ジャーナル フリー

    目的 平成26年4月に改正精神保健福祉法が施行された。全国保健所長会においては,さまざまな方法で,保健所に対し,改正法への取り組みを促してきた。

     26年度地域保健総合推進事業全国保健所長会協力事業においては,保健所の取り組みの普及を目的としたガイドラインを作成するために,改正法施行後の保健所の取り組み状況や課題について実態把握を行った。

    方法 対象は全国の490保健所で,平成26年10月~12月に,26年度地域保健総合推進事業全国保健所長会協力事業として,全国保健所長会一斉電子メールを使って調査を実施した。調査内容は,管内に精神科病院がある保健所については,全国保健所長会が提案した保健所が取り組む具体的項目を踏まえ,退院支援委員会の参加状況や精神科病院実地指導の状況,また保健所に提出されている入退院届や入院診療計画書等を活用して,管内精神科病院の新規医療保護入院患者の状況や退院支援委員会の開催状況等についてとした。管内に精神科病院のない保健所については,退院支援委員会への参加状況等についてとした。

    結果 回答保健所数は281か所(回答率57.3%)であった。管内に精神科病院がある253保健所では,退院支援委員会の開催状況を全く把握していない保健所が38.7%あった。退院支援委員会へは,開催状況を把握している131保健所の71.0%が参加していなかった。保健所等の退院支援委員会への参加について,病院への働きかけは,63.6%が行っていなかった。

     253保健所から回答を得た855の精神科病院については,26年4月から9月末までの新規医療保護入院患者の推定入院期間で1年以上と記載があったものが1.6%あった。そのうち認知症患者でみた場合,1年以上が2.6%あった。26年4月から9月末までの新規医療保護入院患者における9月末までに医療保護入院を退院となった患者の処遇については,自宅が42.1%,その病院での入院継続が21.7%であった。

     管内に精神科病院のない28保健所では,退院支援委員会へは82.1%が参加していなかった。保健所等の退院支援委員会への参加について,病院への働きかけは,64.3%が行っていなかった。

    結論 改正法における保健所の役割として,入退院届等を活用した管内精神科病院の現状把握,退院支援委員会への参加,実地指導への積極的な関与,推定入院期間「原則1年未満」の徹底,入院継続患者の情報把握および地域移行の推進に向けた保健所の関与が必要であると考えられた。

  • 藤田 淳子, 福井 小紀子, 岡本 有子
    2016 年 63 巻 8 号 p. 416-423
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/27
    ジャーナル フリー

    目的 過疎地域の住民が最期まで地域で過ごせるための医療・介護のあり方への示唆を得ることを目的として,医療・介護関係者の終末期ケアの実態,在宅支援の実態および多職種連携の状況を明らかにした。

    方法 A地域の医療・介護関係者398人(医療・介護・福祉の専門職,または,連携関連部署に所属する事務職で,かつ常勤であるものの総数)を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った。職種別,所属場所別(病院,施設,地域)に集計した。

    結果 調査票の回収は,38機関より212人であった(回収率53.3%)。終末期ケアの実態として,過去1年間に終末期ケアを実施した割合は,職種別では,介護支援専門員(71.4%),介護福祉職(66.7%),医師(66.7%)が高かった。所属場所別では,病院と施設が約70%であるのに対し,地域は40%以下であった。在宅支援の実態については,回答者全体の70%以上が,何らかの在宅支援を実施し,かつ関心をもっていた。在宅支援の実施内容の1つである自宅訪問については,医師(77.8%)と介護支援専門員(90.5%)の実施割合が高かったが,その他の職種においても20~40%が実施し,また,所属場所別において病院や施設でも20~30%が実施していた。多職種連携については,7下位尺度で構成された顔の見える関係評価尺度を用いて測定した結果,下位尺度「多職種で会ったり話し合う機会」の得点が低く,「他施設の関係者とのやりとり」,「病院と地域の連携」の得点が他の下位尺度に比べ高い傾向にあった。

    結論 終末期の医療・介護体制として,施設の介護福祉職を中心とした終末期ケア体制の構築,病院や施設からのサポートによる在宅支援の促進が可能な地域であると考える。また,多職種で会ったり話し合う場を作ることによるネットワークづくりが必要である。

  • 杉山 賢明, 遠又 靖丈, 武見 ゆかり, 津下 一代, 中村 正和, 橋本 修二, 宮地 元彦, 山縣 然太朗, 横山 徹爾, 辻 一郎
    2016 年 63 巻 8 号 p. 424-431
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/27
    ジャーナル フリー

    目的 健康日本21(第二次)の推進のため,国民全体から無作為抽出した集団を対象に,平成25~26年にかけて電話調査を実施し,健康日本21(第二次)に関する健康意識・認知度を調査した。

    方法 乱数番号法を用いて,全国の20歳代から70歳以上の10歳年齢階級別に男女各150人,計1,800人より回答を得た。調査項目は1)用語の認知度(「健康日本21」,「健康寿命」,「メタボリックシンドローム(MetS)」,「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」,「ロコモティブシンドローム」,「アクティブガイド」,「WHO たばこ規制枠組み条約」,「スマートライフプロジェクト」),2)健康意識(「最近1年間の健診受診歴」,「喫煙状況」,「健康のために望ましいと思う1日の野菜摂取量」)とし,調査回答の単純集計および性別・年齢階級別のクロス集計を行った。上記1)に対して,「意味を含めて知っている」と「聞いたことはあるがよく知らない」の回答者の割合を認知度とした。また,平成25,26年の年次比較,および男女・年齢階級間比較にはχ2検定を用いた。

    結果 平成25年で認知度が高かった上位5項目は,「MetS」(96.2%),「COPD」(51.1%),「健康寿命」(34.2%),「ロコモティブシンドローム」(30.2%),「WHOたばこ規制枠組み条約」(28.0%)であった。年次比較では「健康寿命」,「ロコモティブシンドローム」,「アクティブガイド」の認知度が平成25年より平成26年で有意に高かった。また,「1日の望ましい野菜摂取量」を350 g程度と正答できた割合は,平成25年の41.6%と比べ,平成26年で50.1%と有意に高かった。平成25年で「健康寿命」,「COPD」,「ロコモティブシンドローム」の認知度や「1日の望ましい野菜摂取量」の正答割合は,男性より女性で有意に高かった。また,同年で「MetS」,「COPD」,「健康寿命」,「ロコモティブシンドローム」の認知度や「1日の望ましい野菜摂取量」の正答割合は年齢階級間に有意差があった。

    結論 「健康寿命」と「ロコモティブシンドローム」の認知度や健康意識に関わる「1日の望ましい野菜摂取量」の正答割合は,平成25年より平成26年で有意に高かった。また,項目ごとに認知度や健康意識の低かった性や年齢階級をターゲットにした介入が必要であると考えられた。

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