日本公衆衛生雑誌
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原著
要支援認定を受けた高齢男性の社会活動とその目的
平野 美千代佐伯 和子上田 泉本田 光水野 芳子
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2017 年 64 巻 1 号 p. 14-24

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抄録

目的 要支援認定を受けた高齢者のニーズに適合した,効果的な生活支援・介護予防サービスを展開するため,本研究は,要支援認定を受けた高齢男性(以下,要支援高齢男性)の社会活動とその目的を明らかにすることを目的とする。

方法 研究デザインは質的帰納的研究を用い,要支援高齢男性17人を対象に半構造化面接による個別面接を実施した。分析は質的記述的分析により行った。

結果 要支援高齢男性の社会活動として4カテゴリ,社会活動の目的として5カテゴリを抽出した。要支援高齢男性の社会活動は,家族・親族や旧友,近所の人との【生活に安らぎを与える,気心の知れた人たちとのかかわり】や,介護予防サービスや老人クラブ,趣味の集まりといった【かかわる相手や活動内容が明確なサービスやプログラム等の参加・利用】であった。また,【全盛期の就労時代が反映される職場関係者とのかかわり】では,元同僚の集まりに積極的に参加する者がいる一方,一切行き来しない者もいた。さらに,読書やテレビ鑑賞,一家の主としての家庭内の役割など【身近な暮らしの場で行う自分の気持ちや生活を豊かにする活動】も行われていた。

 要支援高齢男性の社会活動の目的は,【人とのコミュニケーションを通じた社会とのつながり】であった。また,【同年代・年配者と過ごすことで得られる安心感】を求め,老人クラブや趣味の集まりに参加していた。要支援高齢男性は,【主体的な運動の継続による身体機能の維持・向上】や【意図的に思考を巡らせることによる学びの継続】を行うため,定期的に運動や認知機能を活性化させる機会をつくっていた。また,【自らが快くなれる有意義なひととき】を得るため,興味のある運動や趣味の場へ参加し,生活に楽しみや潤いを与えていた。

結論 要支援高齢男性の社会活動の特徴として,1つめは,職場関係者とのつきあいが含まれること,2つめは,気心の知れた人たちとのかかわりがなされ,そのかかわりの程度にはレベルがあること,3つめは,退職した現在も,社会や時代を意識した活動が行われていることが挙げられる。また,要支援高齢男性は社会活動に対する自身の目的を明確化,具体化しており,社会活動として心身機能や生活において現実的に価値あるものに取り組んでいることが示唆された。

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© 2017 日本公衆衛生学会
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