日本公衆衛生雑誌
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64 巻 , 1 号
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原著
  • 解良 武士, 河合 恒, 吉田 英世, 平野 浩彦, 小島 基永, 藤原 佳典, 井原 一成, 大渕 修一
    2017 年 64 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー

    目的 心筋梗塞や心不全などの心臓病は生存率が飛躍的に向上したが,その一方で高齢化が深刻である。そのため地域で在宅療養する心疾患を有する高齢者の心身機能を,心疾患を有さない高齢者と比較しその特徴を明らかにすることとした。

    方法 対象は本研究所で行っている“お達者健診”に2014年に調査へ参加した地域高齢者758人とした。このうち心疾患を有し治療を継続している心疾患群(男性47人,女性28人)と非心疾患群(男性263人,女性420人)の2群を抽出した。まず共存症や服薬状況,基本チェックリスト,社会的背景(生活習慣,運動習慣,介護保険,JST版新活動指標)を看護面接により聴取した。心身機能としては,体組成,握力,5 m歩行時間(通常速度,最大速度),Timed up & Go test(TUG),片足立ち時間,認知機能,うつを評価した。フレイルは基本チェックリストを用いて評価した。2群間の比較にはt検定とMann-Whitney U testを用いた。心疾患と心身機能低下との関連を検討するために,心疾患の有無(非心疾患群(0),心疾患群(1))を従属変数に,それ以外の2群間に有意差が認められた心身機能を独立変数へ投入して多重ロジステック回帰分析を行った。

    結果 男性では心疾患群で握力と片足立ち時間が低下し,JST版新活動指標も低かった。女性では5 m歩行時間(通常速度,最大速度)が延長した。男女とも服薬数が多く,心疾患治療薬,脂質代謝異常薬などの服薬が多かった。多重ロジステック回帰分析の結果,5 m歩行時間(最大速度)が心疾患の有無に関連する要因として抽出された。

    結論 地域高齢者であっても心疾患に対する治療を行っているものは何らかの心身機能の低下を有し,それらの原因としては活動量の低下や服薬が考えられた。

  • 平野 美千代, 佐伯 和子, 上田 泉, 本田 光, 水野 芳子
    2017 年 64 巻 1 号 p. 14-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー

    目的 要支援認定を受けた高齢者のニーズに適合した,効果的な生活支援・介護予防サービスを展開するため,本研究は,要支援認定を受けた高齢男性(以下,要支援高齢男性)の社会活動とその目的を明らかにすることを目的とする。

    方法 研究デザインは質的帰納的研究を用い,要支援高齢男性17人を対象に半構造化面接による個別面接を実施した。分析は質的記述的分析により行った。

    結果 要支援高齢男性の社会活動として4カテゴリ,社会活動の目的として5カテゴリを抽出した。要支援高齢男性の社会活動は,家族・親族や旧友,近所の人との【生活に安らぎを与える,気心の知れた人たちとのかかわり】や,介護予防サービスや老人クラブ,趣味の集まりといった【かかわる相手や活動内容が明確なサービスやプログラム等の参加・利用】であった。また,【全盛期の就労時代が反映される職場関係者とのかかわり】では,元同僚の集まりに積極的に参加する者がいる一方,一切行き来しない者もいた。さらに,読書やテレビ鑑賞,一家の主としての家庭内の役割など【身近な暮らしの場で行う自分の気持ちや生活を豊かにする活動】も行われていた。

     要支援高齢男性の社会活動の目的は,【人とのコミュニケーションを通じた社会とのつながり】であった。また,【同年代・年配者と過ごすことで得られる安心感】を求め,老人クラブや趣味の集まりに参加していた。要支援高齢男性は,【主体的な運動の継続による身体機能の維持・向上】や【意図的に思考を巡らせることによる学びの継続】を行うため,定期的に運動や認知機能を活性化させる機会をつくっていた。また,【自らが快くなれる有意義なひととき】を得るため,興味のある運動や趣味の場へ参加し,生活に楽しみや潤いを与えていた。

    結論 要支援高齢男性の社会活動の特徴として,1つめは,職場関係者とのつきあいが含まれること,2つめは,気心の知れた人たちとのかかわりがなされ,そのかかわりの程度にはレベルがあること,3つめは,退職した現在も,社会や時代を意識した活動が行われていることが挙げられる。また,要支援高齢男性は社会活動に対する自身の目的を明確化,具体化しており,社会活動として心身機能や生活において現実的に価値あるものに取り組んでいることが示唆された。

  • 今村 晴彦, 村上 義孝, 岡村 智教, 西脇 祐司
    2017 年 64 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー

    目的 地域住民を対象とした,健康づくりに関わる地区組織活動の経験の有無が,その後の医療費に影響を及ぼすかを明らかにするため,長野県須坂市(2016年3月の人口は51,637人)の保健補導員活動(1958年に発足し,2年任期で毎期300人近い女性が担当する地区組織活動)を対象に,その経験の有無と国民健康保険医療費(以下,医療費)との関連を検討した。

    方法 須坂市において,2014年2月に,要介護度3以下の65歳以上の全住民を対象とした質問票調査を実施し,匿名化IDを用いて回答データと各種行政データを突合した。質問票には,保健補導員経験の有無に加え,経験年代,役職経験の有無,活動満足度に関する質問を含めた。本研究の解析対象者は,上記の女性回答者5,958人のなかの国民健康保険被保険者(74歳以下)2,304人とし,2013年度の1年間の入院および外来医療費を使用,検討した。分析として医療費発生の有無をアウトカムとした修正ポアソン回帰分析を実施した。また医療費発生者を対象とし,対数変換した医療費をアウトカムとした重回帰分析もあわせて実施した。分析の調整変数は年齢,婚姻状況,教育歴,同居人数,等価所得,飲酒習慣,喫煙習慣,健康的な食生活の心がけ,歩行習慣とした。

    結果 解析対象者2,304人のうち,保健補導員を経験した者は1,274人(55.3%)であった。解析の結果,外来医療費ありの割合は,保健補導員経験者が未経験者と比較して1.04倍(多変量調整済みリスク比(95%信頼区間;1.02-1.07))と高い一方で,入院医療費ありの割合は,0.74倍(同;0.56-0.98)と低かった。また医療費ありを対象者とした重回帰分析の結果,外来と入院それぞれについて,保健補導員経験と医療費に負の関連がみられた。調整済み幾何平均医療費は,外来では経験ありで14.1万円,なしで15.1万円と経験者の方が7%低く,入院においても経験ありで41.8万円,なしでは54.0万円と経験者の方が23%低かった。以上の関連は経験年代が60歳以上,役職経験者,活動の満足度が高い者で,概して強くなる傾向がみられた。

    結論 保健補導員経験者は未経験者と比較して,外来医療費の発生者割合が高い一方で,入院医療費は発生者割合および発生した医療費ともに低い結果が示された。このことは,保健補導員としての経験が,特に入院医療費と関連している可能性を示唆しており,地区組織活動の健康への波及効果がうかがえた。

資料
  • 岡 檀, 久保田 貴文, 椿 広計, 山内 慶太, 有田 幹雄
    2017 年 64 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー

    目的 筆者らは先行研究において,日本全体における地形および気候と自殺率との関係を分析した。自殺希少地域は,海沿いの平坦な土地で,人口密度が高く,気候の温暖な地域に多いという傾向が示された。これに対し自殺多発地域は,傾斜の強い山間部で,過疎状態にあり,気温が低く,冬季には積雪のある市区町村に多いという傾向が示された。

     本研究では和歌山県市町村の地理的特性と自殺率との関係を,筆者らの先行研究により得た知見に照らし検証する。また,旧市町村と現市町村の分析結果をそれぞれ可視化することによって,地域格差を検討する際の単位設定のあり方を検討する。

    方法 解析には1973年~2002年の全国3,318市区町村自殺統計のデータを用いた。市区町村ごとに標準化自殺死亡比を算出し,30年間の平均値を求め,この値を「自殺SMR」として市区町村間の自殺率を比較する指標とした。和歌山県市町村のデータを用いて,市町村の地理的特性と自殺率との関係について確認した。地理情報システム(GIS)により自殺率高低を視覚的に検討するための作図を行った。また,GISを用いて合併前後の旧市町村と現市町村について2種類の作図を行い,比較した。

    結果 和歌山県は山林が県面積の7割を占め,南部は太平洋に面し,人口のほとんどが海岸線の平地に集中している。地形,気候,産業など,地域特性のばらつきが大きい。

     市町村別に,自殺率の高低によって色分け地図を作成したところ,山間部で自殺率がより高く,海沿いの平野で自殺率がより低いという傾向が見られた。県内で最も自殺率の高いH村は,標高が高く傾斜の強い山間に位置し,冬季には積雪する過疎化の村だった。

     合併前の旧市町村と現市町村ごとの可住地傾斜度を色分け地図により表現したところ,旧市町村地図では自殺率を高める因子である土地の傾斜の影響が明瞭に示されたが,現市町村図地では不明瞭となった。

    結論 和歌山県市町村の地理的特性と自殺率の関係は,傾斜の強い険しい山間部は平坦な海岸部に比べより自殺率が高まる傾向があるという,筆者らの先行研究とも同じ傾向が見られた。

     また,参照するデータが旧市町村か現市町村であるかによって実態の把握に違いが生じ,自殺対策に携わる人々が問題を認識することへの障壁ともなっている可能性が考えられた。

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