日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
公衆衛生活動報告
地域包括支援センターの機能強化に繋がる都道府県支援の在り方の考察
白井 和美杉浦 加代子津下 一代
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 64 巻 10 号 p. 630-637

詳細
抄録

目的 介護保険法は急激な高齢化や核家族化の進展に伴う課題を背景に介護を社会全体で支える仕組みである。同法は3年毎に見直され,2011年からは社会保障給付費の増加や認知症の増加等に備え,地域包括ケアシステムの実現に向けた取り組みが推進されている。その中心的役割を担う機関として位置づけられているのが地域包括支援センターであるが,制度改正に伴う不安や戸惑い,業務量の多さから疲弊する声が多く聞かれる。本研究では地域包括が抱える課題や悩み等を明らかにし,地域包括ケアシステム構築の推進のために何が必要かを考察した。

方法 東海4県の地域包括490箇所,市町村160個所を対象に,書面調査を実施した。調査内容は,地域包括諸機能の重要度・達成度,活動における悩み,地域包括業務を効果的に進めるために職場内で取り組んでいること,都道府県に期待する支援である。

結果 有効回答は地域包括299箇所(61.0%),市町村111箇所(69.4%)であった。地域包括諸機能の重要度・達成度共に低い項目は,「住民ボランティアの育成」,「住民が活躍できる場を作る」,「住民が主体的に取り組む活動の支援」,「地域包括ケアシステムについての啓発」であった。活動の悩みは,「住民の意識を高めることが難しい」,「業務内容が多く優先順位が整理できない」,「ボランティアの育成が難しい」の順で高く,地域包括と市町村の方針共有については双方の認識のズレが大きい傾向にあった。これらに対し,都道府県には制度に関する情報提供や人材育成に関する研修を期待する傾向にあった。

結論 地域包括は,住民の自助・互助の醸成,業務量の多さ,市町村との方針共有等の課題や悩みを抱えていることがわかった。しかし,住民の自助・互助の醸成については,重要度・達成度が低いにも関わらず,悩みとしては大きい傾向にあり,地域づくりの必要性は理解しているものの具体的な取り組みには至っていないことが推察された。都道府県は各市町村の高齢者対策の進捗状況を評価しながら,①職員の資質向上に繋がる広域的な研修会の開催,②各地域包括・市町村の実情に合わせた相談・技術支援,③地域包括が動きやすくなる体制整備を軸にした支援を行い,地域包括の機能強化に努めていく必要があることが示唆された。

著者関連情報
© 2017 日本公衆衛生学会
前の記事
feedback
Top