日本公衆衛生雑誌
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64 巻 , 10 号
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原著
  • 北村 明彦, 新開 省二, 谷口 優, 天野 秀紀, 清野 諭, 横山 友里, 西 真理子, 藤原 佳典
    2017 年 64 巻 10 号 p. 593-606
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    目的 わが国の高齢者の健康余命への影響因子の解明に資するため,地域高齢者の追跡研究により,高齢期のフレイルおよびメタボリックシンドローム(MetS)が健康余命のエンドポイントである自立喪失(要介護発生または死亡)に及ぼす中長期的な影響を明らかにする。

    方法 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,524人のうち,ベースライン時に既に要介護認定(要支援含む)を受けていた者71人を除外した1,453人を対象とし,平均7.0年(最大12.4年)の追跡を行った。分析は使用項目の欠損値を有する者を除き,フレイルは1,335人に対し,1)6か月以内に2~3 kg以上の体重減少,2)握力が男で26 kg未満,女で18 kg未満,3)「自分が活気にあふれていると思いますか」の質問に「いいえ」と回答,4)通常歩行速度が1.0 m/s未満,5)外出が1日1回未満の5項目のうち,3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと判定した。MetS区分は1,450人に対し,日本の内科系8学会の基準に準じて判定した。フレイル,MetSを含む関連因子と自立喪失等との関連は1,217人に対してCox比例ハザードモデルを用いた回帰分析等により解析した。

    結果 追跡期間中の自立喪失発生者数は494人(要介護発生376人,要介護発生前死亡118人)であった。男女ともにフレイル群,プレフレイル群はフレイルなし群に比し自立喪失発生率は有意に高率であったが,MetS区分と自立喪失発生率との間には一定の関連は認められなかった。フレイルなし群を基準とした場合のプレフレイル群,フレイル群の性・年齢調整自立喪失ハザード比(HR)(95%信頼区間)は各々1.5(1.2-1.9),2.4(1.8-3.3)であり,さらにMetS区分,低コレステロール血症・慢性腎臓病・貧血・低アルブミン血症・認知機能低下・脳卒中既往の有無を調整した多変量調整自立喪失HRはプレフレイル群で1.5(1.2-1.9),フレイル群で2.1(1.5-2.9)であった。また,前期高齢者の方が後期高齢者に比し,プレフレイル群,フレイル群の自立喪失HRは高値を示した。

    結論 フレイルは日本人高齢者の中長期的な自立喪失の有意の危険因子であることを明らかにした。高齢期のMetSの有無はその後の自立喪失に影響を及ぼしていなかった。

  • 岡田 隆志
    2017 年 64 巻 10 号 p. 607-618
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    目的 精神保健福祉領域において都道府県による市町村への支援の必要性が高まっているなか,都道府県の精神保健福祉相談員(以下,相談員)は市町村の地域精神保健福祉活動の推進や職員の支援力の向上を目指して,技術的な支援を行ってきた。本研究ではその相談員が,市町村に行う技術支援の構造とその特性を実証的に明らかにすることを目的とする。

    方法 調査対象は,都道府県の勤務年数10年以上の精神保健福祉士とし,直近5年以内に市町村への技術支援を経験していることを条件とした。調査方法は「全国精神保健福祉相談員会」の会員から無作為抽出した7人を対象に,個別の半構造化面接を行った。内容は①個別相談と②精神保健福祉関連事業の事例を聴取し,分析はコンサルテーションの実施過程を分析枠組みとし,質的内容分析を行った。

    結果 分析の結果,37のコードから5のカテゴリー< >,15のサブカテゴリー【 】を生成した。技術支援の構造は,まず市町村との<関係づくり>では【相補的な関係】【パートナーとしての関係】となり,それから【目前の現場から分析・判断する】【蓄積された根拠から分析・判断する】といった<多面的な情報から分析・判断>を行っていた。その上で,<支援方針の策定>がなされ,【課題解決や取り組み促進のための動きをとる】【当事者主体でかかわる意識を醸成する】【住民の理解につながる気づきを促す】【職員の心理的な支えとなる】【行政責任の明確化を図る】【環境の改善や促進のための調整をする】の6つが重視されていた。<支援の手立て>には【側面的に実施する】【主体的・協働的に実施する】の方法があり,支援後の<評価>では【実施体制の維持や向上が図られる】【職員の喜びや地域の満足をもたらす】【地域に汎用できるかを吟味する】が意識されていた。技術支援の特性は,コンサルテーション機能に加え,住民サービスを提供する地域責任性をもつ都道府県機関として,相補性や協働性を活かした支援機能を併せ持っていることが示唆された。

    結論 本研究ではこれまで明らかにされていなかった技術支援の構造について具象化し,その特性を示した。今後は,地域での実践の均てん化に向けて,技術支援のノウハウの蓄積を重ね,支援方法が確立されることが望まれる。

  • 久保 慎一郎, 野田 龍也, 川戸 美由紀, 山田 宏哉, 三重野 牧子, 谷原 真一, 村上 義孝, 橋本 修二, 今村 知明
    2017 年 64 巻 10 号 p. 619-629
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    目的 患者調査は日本における基幹的な傷病統計として利用されており,入院患者数,初診外来患者数,推計再来外来患者数の和で傷病別の総患者数が算出される。このうち推計再来外来患者数は平均診療間隔と週間診療日数を基にした推計式により算出されているが,平均診療間隔は前回診療日より30日以内に受診した患者のみが推計に利用されており,31日以上の患者は除外されている。しかし,近年の診療間隔延長を通じて,推計患者数に影響が及ぶことが予想される。本研究では,平均診療間隔の分布が診療間隔31日以上の患者を組み入れることで,どう変化するかについて全傷病および傷病別で比較した。また,前回診療間隔の変化と推計方法によって各疾患の再来外来患者数がどの程度変化するかについても検証を行った。

    方法 1996年から2014年までの患者調査の調査票情報(病院票・一般診療所票)に基づき再来外来患者数を,「診療間隔別」,「傷病分類別」に集計した。また,平均診療間隔を基準とする前回診療区分が10日増加するごとにどの程度変化するかを「診療間隔別」,「傷病分類別」に集計した。傷病分類は厚生労働省が作成している傷病分類表(大分類,小分類)を使用した。

    結果 ほとんどの傷病で再来患者の診療間隔は延長していた。全再来外来患者のうち,前回診療から30日以内(現行の推計方法)に受診した患者の割合(全傷病)は,1996年では91.2%であったが,2014年の調査では74.4%まで低下していた。また,前回診療間隔の算入上限を30日から90日に変えて平均診療間隔を推計すると,再来外来患者数の推計値は2014年の全傷病において1.69倍となるなど,各傷病で大幅に増加した。調査日の再来外来患者数は,前回診療間隔1日目(翌日)に最初のピークがあり,その後は,7の倍数(週単位)でピークが生じており,他の調査年次や傷病分類ごとの集計でも同様の傾向が見られた。

    結論 患者調査において外来診療間隔は年とともに延長していることが明らかとなった。また,前回診療間隔の基準を変えることで,これまでより大幅な患者数の上昇を認めることがわかった。今後,総患者数の推計において算入対象とする診療間隔を再検討する必要がある。

公衆衛生活動報告
  • 白井 和美, 杉浦 加代子, 津下 一代
    2017 年 64 巻 10 号 p. 630-637
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    目的 介護保険法は急激な高齢化や核家族化の進展に伴う課題を背景に介護を社会全体で支える仕組みである。同法は3年毎に見直され,2011年からは社会保障給付費の増加や認知症の増加等に備え,地域包括ケアシステムの実現に向けた取り組みが推進されている。その中心的役割を担う機関として位置づけられているのが地域包括支援センターであるが,制度改正に伴う不安や戸惑い,業務量の多さから疲弊する声が多く聞かれる。本研究では地域包括が抱える課題や悩み等を明らかにし,地域包括ケアシステム構築の推進のために何が必要かを考察した。

    方法 東海4県の地域包括490箇所,市町村160個所を対象に,書面調査を実施した。調査内容は,地域包括諸機能の重要度・達成度,活動における悩み,地域包括業務を効果的に進めるために職場内で取り組んでいること,都道府県に期待する支援である。

    結果 有効回答は地域包括299箇所(61.0%),市町村111箇所(69.4%)であった。地域包括諸機能の重要度・達成度共に低い項目は,「住民ボランティアの育成」,「住民が活躍できる場を作る」,「住民が主体的に取り組む活動の支援」,「地域包括ケアシステムについての啓発」であった。活動の悩みは,「住民の意識を高めることが難しい」,「業務内容が多く優先順位が整理できない」,「ボランティアの育成が難しい」の順で高く,地域包括と市町村の方針共有については双方の認識のズレが大きい傾向にあった。これらに対し,都道府県には制度に関する情報提供や人材育成に関する研修を期待する傾向にあった。

    結論 地域包括は,住民の自助・互助の醸成,業務量の多さ,市町村との方針共有等の課題や悩みを抱えていることがわかった。しかし,住民の自助・互助の醸成については,重要度・達成度が低いにも関わらず,悩みとしては大きい傾向にあり,地域づくりの必要性は理解しているものの具体的な取り組みには至っていないことが推察された。都道府県は各市町村の高齢者対策の進捗状況を評価しながら,①職員の資質向上に繋がる広域的な研修会の開催,②各地域包括・市町村の実情に合わせた相談・技術支援,③地域包括が動きやすくなる体制整備を軸にした支援を行い,地域包括の機能強化に努めていく必要があることが示唆された。

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