日本公衆衛生雑誌
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原著
青年期男性の SOC(sense of coherence)が自衛隊入職後の抑うつ症状に及ぼす影響
小林 道
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2017 年 64 巻 3 号 p. 150-155

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抄録

目的 本研究は,青年期男性における首尾一貫感覚(Sense of Coherence:SOC)が自衛隊入職後の抑うつ症状に与える影響を明らかにすることを目的とした。

方法 2013年 4 月に陸上自衛隊にて新規採用された18~24歳男性の自衛官候補生のうち,ベースライン時で抑うつ症状が認められなかった者を研究対象者として,自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,年齢等の基本属性および生活習慣に関する項目,高校時代の所属した部活動,抑うつ症状,SOC とした。SOC は,得点が高いほどストレス対処能力が高いとされる。抑うつ症状は,うつ病自己評価尺度(center for epidemiologic studies depression scale:CES-D)を用いて,16点以上を「抑うつ症状あり」とした。SOC は日本語版13項目 7 件法を用いて,59点をカットオフ値とした。追跡調査は,2 か月後の2013年 6 月に実施した。ベースライン時の SOC と 2 か月後の抑うつ症状の関連は,多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した。

結果 最終的な解析対象者は,389人であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果,SOC 得点が59点未満を参照群とした場合のオッズ比(95%信頼区間)は,SOC 得点59点以上の群で OR:0.59(95%CI:0.35-0.98)であった。

結論 青年期男性の SOC は,自衛隊入職後の抑うつ症状の緩衝要因となることが明らかになった。職場において SOC を高める方策や処置を講じることは,新規採用者の精神的健康の向上に役立つ可能性がある。

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© 2017 日本公衆衛生学会
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