日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
健康推進員組織の課題解決を目指した研修プログラムの効果
田口 敦子村山 洋史荒川 美穂子寺尾 敦史
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2017 年 64 巻 4 号 p. 207-216

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抄録

目的 近年の健康推進員(以下,推進員)を取り巻く課題である「①なり手が少ないこと」,「②短期間で辞める人が多いこと」,「③他の住民組織との連携ができていないこと」の3つの課題解決を目指した研修プログラムの効果を検証することを目的とした。

方法 研修プログラムの対象者は,滋賀県南部地域4市の推進員の小学校区(全36学区)のリーダーであり参加者は38人であった。研修プログラムは全4回で構成され,2012年7月~2013年1月に実施された。所要時間は2時間であった。研修プログラムでは,講義やグループワーク,ロールプレイにより推進員の課題や対策を検討した。

 研修プログラムに参加した推進員を「研修群」,研修プログラムに参加しなかった推進員を「非研修群」とした。また,研修プログラムの影響をまったく受けない南部地域以外の滋賀県A市の推進員を「対照群」とした。この3群について研修プログラム実施前後でアウトカムを比較した。主要評価指標は,研修プログラムの目標に合わせて「新しい推進員を誘う自信がある」,「推進員活動で困りごとができたり,やめたくなっても,それを乗り越えて活動を続けられる自信がある」,「推進員活動に,他の組織(自治会・婦人会等)から協力を得るために,うまく説明できる自信がある」の3項目とした。これらは自記式質問紙により6件法で尋ねた(1=まったくそう思わない,6=非常にそう思う)。

結果 アウトカム評価の分析対象者は,研修群28人,非研修群293人,対照群107人であった。主要評価指標の「新しい推進員を誘う自信がある」では,研修群の介入前後の平均値(標準偏差)は2.9(1.3)から3.3(1.0)に上昇しており,非研修群および対照群に比べて有意に向上していた(研修群 vs 非研修群P=0.008,研修群 vs 対照群P<0.001)。「推進員活動で困りごとができたり,やめたくなっても,それを乗り越えて活動を続けられる自信がある」では,介入前後の研修群の平均値(標準偏差)は3.3(1.1)から3.5(0.9)に上昇し,研修群と非研修群との群間には有意差が認められたが(P=0.033),対照群との群間には差が認められなかった(P=0.401)。「推進員活動に,他の組織(自治会・婦人会等)から協力を得るために,うまく説明できる自信がある」では,いずれの群間にも有意な差は認められなかった。

結論 いくつかの改善点は残されているものの,本研修プログラムは健康推進員組織の課題解決に有効であると考えられた。

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