日本公衆衛生雑誌
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視覚障害者における健康診断・がん検診の受診と健康医療情報入手の現状:点字図書館・視覚障害者団体登録者への調査結果
八巻 知香子高山 智子
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2017 年 64 巻 5 号 p. 270-279

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抄録

目的 欧米諸国においては,障害のある人の健康状態が悪いこと,健康サービスの利用が阻害されていることを施策上の課題と捉え,実態の把握と改善に向けた検討が行われているが,日本においては実態すら把握されていない。本研究では,視覚障害者における健康診断・人間ドック(以下,健診と記載)・がん検診受診と健康医療情報の入手の実態を探索的に明らかにすることを目的とする。

方法 大阪府堺市在住の視覚障害者のうち,市内の点字図書館に利用登録をしている人および同市の視覚障害者団体の会員計311人を対象として質問紙調査を行い,回答された150件(回収率48.2%)を対象とした。

結果 対象者の健診の受診率は男性70.3%,女性62.2%,対策型がん検診の対象年齢における受診率は男性で34.5%~44.8%,女性では30.8%~40.0%であった。健診やがん検診の未受診の理由は,「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」,「毎年受ける必要がないから」など一般住民と同様の回答が多かったが,付き添い者の確保が困難であることや医療機関の対応への不安など,障害による困難や不安もあげられた。健康医療情報の入手にあたっては,「一般的な健康情報の入手経路」において一般マスメディアからの情報入手が多く,「自分や身近な人ががんと診断されたときの情報の入手(以下,がん情報の入手)経路」では,「専門家からの指導」に次いで,一般マスメディアや身近な人を介した情報入手経路をとる人が多かった。

考察 本研究の対象者は,相対的にサービス利用や日常生活スキルが確保できている人たちであると考えられ,健診・がん検診の受診については,調査対象地域の一般住民と大きな差は見られなかった。しかし,未受診の理由に障害による不安や困難が挙げられ,改善の必要性が示唆された。健康医療情報の入手については,一般住民ではインターネットや専門的資料の利用の割合が増える「がん情報の入手経路」においても,一般のマスメディアからの情報や人を介した情報入手経路が多数を占めることが特徴であった。医療機関に対して視覚障害のある人への適切な対処方法を周知すること,医療者が視覚障害のある人への説明しやすい環境を整備すること,視覚障害者が利用しやすい健康医療サービスや情報について,視覚障害者サービス機関を通じた周知と一般向けの広い周知の双方が必要であると考えられた。

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