日本公衆衛生雑誌
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64 巻 , 5 号
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原著
  • 渡邊 久実, 田中 笑子, 呉 柏良, 小林 純子, 望月 由妃子, 金 春燕, 渡辺 多恵子, 奥村 理加, 伊藤 澄雄, 安梅 勅江
    2017 年 64 巻 5 号 p. 235-245
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    目的 孤立化,無縁化と高齢者の社会との関わりの問題が社会問題とされる現在,実際の社会との関わりの変化を比較した研究や社会との関わりへの影響要因に関する研究は乏しい。本研究は地域在住高齢者の20年間の社会関連性の変化および,コミュニティリソースに焦点を当てて,その影響要因を明らかにすることを目的とする。

    方法 対象は大都市近郊に存する農村である飛鳥村に居住する65歳以上高齢者である。分析は,1994年から2014年に行われた計8回の悉皆調査の質問紙調査においてそれぞれの調査年度ごとに社会関連性指標の領域点および総合得点を算出し,1994年時と2014年時の得点をWilcoxonの順位和検定を用いて比較した。また,社会関連性の変化の要因を明らかにするため,2014年の社会関連性を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,2011年時のコミュニティリソースの利用経験(地域包括支援センターや保健センター,健康増進施設,図書館)の利用との3年後の関連を検討した。多重ロジスティック回帰モデルには調整因子として年齢・性別・疾患・移動能力を投入した。

    結果 1994年と2014年の社会関連性指標得点を比較するとすべての年代で総合得点が有意に上昇し,男女別にみると女性の総合得点が漸増していた。領域別では,生活の主体性領域で,女性の65歳以上および75-84歳の得点が有意に上昇していた。社会への関心領域は男女ともに得点が有意に漸増しており,20年間で高齢者の社会への関心が高まっていた。社会関連性の要因分析では,健康増進施設の利用および地域包括センター,保健センターの利用が3年後の社会関連性総合得点と関連していた。

    結論 本研究では,社会関連性指標に着目し,同一コミュニティの高齢者の20年間の社会との関わりの推移を総合的,領域的に明らかにした。地縁の希薄化など高齢者の社会との関わりの低下が注目されている昨今だが,本研究の結果より,高齢者の社会への関心や生活の主体化などの社会との関わりが20年で高くなっていることが示唆された。これらは地域包括支援センターや保健センターでの予防的介入や健康増進施設での介入など介護予防事業の効果が一因として考えられる。

  • 辻 大士, 高木 大資, 近藤 尚己, 近藤 克則
    2017 年 64 巻 5 号 p. 246-257
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は,市が保有する基本チェックリストと健康診断(以下,健診),約4年間の要支援・要介護認定データを結合し,その認定を予測するための要支援・要介護リスク評価尺度を開発することを目的とした。

    方法 K市(政令指定都市)に在住し,2011年に基本チェックリストへの回答が得られた72,127人の高齢者を分析対象とする後ろ向きコホート研究を実施した。基本チェックリストのうち,第7期の介護予防・日常生活圏域ニーズ調査(以下,ニーズ調査)の必須項目12項目とオプション項目7項目に,2011年の健診データ(受診の有無,血圧・血液生化学検査5項目)と2011~15年の要支援・要介護認定情報を結合した。新規要支援・要介護認定をエンドポイントとする4つのCox比例ハザードモデル— 1) 性,年齢,必須項目12項目,2) 1)+オプション項目7項目,3) 2)+健診受診の有無,4) 3)+健診6項目をそれぞれ説明変数とし,変数増加法を用いて分析した。選択された各項目に対し,非標準化偏回帰係数(B)を基に点数を割り当て,それらを合計する「要支援・要介護リスク評価尺度」を作成した。各評価尺度の予測妥当性を比較するため,receiver operating characteristics(ROC)解析を実施し,感度・特異度を算出した。

    結果 最長4年2か月の追跡期間中に11,039人(15.3%)が新たに要支援・要介護認定を受けた。性,年齢とニーズ調査の必須項目10項目から,0~55点の幅となる評価尺度が作成された。合計点数ごとの新規認定割合は,10点:3.2%,20点:14.7%,30点:31.6%,40点:56.7%,50点:75.0%であった。ROC曲線の曲線下面積は0.783であり,カットオフを20/21点とした場合,感度0.705,特異度0.731であった。ニーズ調査のオプション項目や健診項目を含めた評価尺度であっても,それらの値はほとんど変わらなかった(曲線下面積:0.786~0.787,感度:0.721~0.730,特異度:0.710~0.717)。

    結論 健診データを含めなくとも,基本チェックリスト10項目(ニーズ調査の必須項目に含まれる)から作成した評価尺度が,要支援・要介護認定リスクの予測評価に有用であることが示唆された。各保険者が保有する基本チェックリストまたは今後収集するニーズ調査データを活用し,個人レベルや地域レベルのリスクの予測評価が可能な要支援・要介護リスク評価尺度が開発できた。

  • 蔦谷 裕美, 舟本 美果, 杉山 大典, 桑原 和代, 宮松 直美, 渡辺 浩一, 岡村 智教
    2017 年 64 巻 5 号 p. 258-269
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    目的 特定健康診査(以下,特定健診)では22項目から成る標準的な質問票が用いられている。しかし質問項目で把握された生活習慣とメタボリックシンドロームや高血圧の発症との関連を,地域住民で縦断的にみた報告はほとんどない。本研究では大阪府羽曳野市の国民健康保険加入者の5年間の特定健診データを用いて,標準的な質問票で把握された生活習慣が将来の脳・心血管疾患の危険因子の発症を予測できるかを検証した。

    方法 平成20年度(2008年度)の国民健康保険加入者の特定健診受診者8,325人(男性3,332人,女性4,993人)をコホート集団として設定し2013年3月末まで追跡し,標準的な質問票で把握された生活習慣とメタボリックシンドロームまたは高血圧の新規発症との関連をみた。追跡対象としたのはメタボリックシンドロームの解析では4,720人,高血圧の解析では3,326人であり,これは2008年度にそれぞれの危険因子を保有している者等を除外したためである。解析はCoxの比例ハザードモデルを用いた。

    結果 メタボリックシンドロームの検討における追跡期間の中央値は男性で3.1年,女性で3.6年であり,追跡期間中に計570人がメタボリックシンドロームを発症した。年齢と腹囲を調整しても,男性では,就寝前2時間以内に夕食をとることが週3回以上,あるいは20歳の時の体重から10 kg以上増加があると,メタボリックシンドロームの発症リスクが有意に高く,それぞれのハザード比は1.43(95%信頼区間1.09-1.88),1.33(95%信頼区間1.01-1.75)であった。また,男性の時々飲酒は非飲酒と比べて有意に発症リスクが低かった。一方,女性では,この1年間で体重の増減が3 kg以上あった人,あるいは20歳の時の体重から10 kg以上増加している人はメタボリックシンドロームの発症リスクが有意に高く,それぞれのハザード比は1.83(95%信頼区間1.40-2.40),2.02(95%信頼区間1.52-2.68)であった。また,女性の毎日飲酒(日本酒換算1~2合未満)は非飲酒と比べて有意に発症リスクが高かった。高血圧の検討においては1,045人が高血圧を発症したが,男性の飲酒を除いて高血圧の発症と関連する問診項目はなかった。

    結論 標準的な質問票の大部分の項目は,少なくとも5年以内のメタボリックシンドロームや高血圧の発症との関連を認めず,脳・心血管疾患のハイリスク者のスクリーニングには適していないことが示唆された。

資料
  • 八巻 知香子, 高山 智子
    2017 年 64 巻 5 号 p. 270-279
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    目的 欧米諸国においては,障害のある人の健康状態が悪いこと,健康サービスの利用が阻害されていることを施策上の課題と捉え,実態の把握と改善に向けた検討が行われているが,日本においては実態すら把握されていない。本研究では,視覚障害者における健康診断・人間ドック(以下,健診と記載)・がん検診受診と健康医療情報の入手の実態を探索的に明らかにすることを目的とする。

    方法 大阪府堺市在住の視覚障害者のうち,市内の点字図書館に利用登録をしている人および同市の視覚障害者団体の会員計311人を対象として質問紙調査を行い,回答された150件(回収率48.2%)を対象とした。

    結果 対象者の健診の受診率は男性70.3%,女性62.2%,対策型がん検診の対象年齢における受診率は男性で34.5%~44.8%,女性では30.8%~40.0%であった。健診やがん検診の未受診の理由は,「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」,「毎年受ける必要がないから」など一般住民と同様の回答が多かったが,付き添い者の確保が困難であることや医療機関の対応への不安など,障害による困難や不安もあげられた。健康医療情報の入手にあたっては,「一般的な健康情報の入手経路」において一般マスメディアからの情報入手が多く,「自分や身近な人ががんと診断されたときの情報の入手(以下,がん情報の入手)経路」では,「専門家からの指導」に次いで,一般マスメディアや身近な人を介した情報入手経路をとる人が多かった。

    考察 本研究の対象者は,相対的にサービス利用や日常生活スキルが確保できている人たちであると考えられ,健診・がん検診の受診については,調査対象地域の一般住民と大きな差は見られなかった。しかし,未受診の理由に障害による不安や困難が挙げられ,改善の必要性が示唆された。健康医療情報の入手については,一般住民ではインターネットや専門的資料の利用の割合が増える「がん情報の入手経路」においても,一般のマスメディアからの情報や人を介した情報入手経路が多数を占めることが特徴であった。医療機関に対して視覚障害のある人への適切な対処方法を周知すること,医療者が視覚障害のある人への説明しやすい環境を整備すること,視覚障害者が利用しやすい健康医療サービスや情報について,視覚障害者サービス機関を通じた周知と一般向けの広い周知の双方が必要であると考えられた。

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