日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
熊本県御船保健所における熊本地震の被災者への支援活動:感染症・食中毒,栄養・食生活支援対策を中心に
大倉 香澄福田 奏江岡田 賢太郎小宮 智劔 陽子上野 玲子緒方 珠代佐藤 彩
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2019 年 66 巻 4 号 p. 190-200

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抄録

目的 2016年に発生した熊本地震において,熊本県御船保健所管内では甚大な被害が発生し,80か所を超える避難所に2万人以上が避難する事態となり,県内外からの様々な支援を受けながら被災者支援を行った。今回は,熊本地震後に活動の検証を実施した感染症・食中毒対策および栄養・食生活支援対策の結果と課題について報告する。

方法 熊本地震発災直後から当保健所が実施した避難所を中心とした被災者支援活動のうち,現状把握や活動のマネジメント等に苦慮した感染症・食中毒対策および栄養・食生活支援対策について,それぞれ検証会議を開催し,問題点や課題の整理を行った。

活動結果 市町村や外部支援者と連携し,避難所アセスメントや生活環境の改善等を実施したが,避難所数が多かったこと,ライフラインの停止や地震発生時の気候等の影響等により様々な課題が生じた。主な課題としては,保健所や県庁の組織体制,市町村や関係機関との連携体制,支援者の受入準備,町の体制,平常時の備え等が挙げられた。また,今回の被災者支援活動の中で効果的だったものとしては,チェック表等の共通書式や共通ルールの導入,人的支援等が挙げられた。

結論 今後の災害発生に備え,県(本庁,保健所)の指揮・命令系統や各部署の役割の明確化,市町村や関係機関との連携強化,各機関の窓口の明確化等の体制強化を図るとともに,マニュアルや様式等の関係資料の準備や関係者との共有,平常時からの住民への普及啓発等に取り組んでいく必要がある。

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© 2019 日本公衆衛生学会
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